現在、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、
“沈潜と蒸留 浜口陽三 濱田祐史 二人展” が開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
20世紀を代表する銅版画家・浜口陽三と、
国内外で作品発表をしている気鋭の写真家・濱田祐史さん。
美術界の新旧2人のハマちゃん (?) が競演する展覧会です。
もちろん2人の共通点は、“ハマ” だけではありません。
新たな技法の可能性を探求する2人の姿勢は、
版画と写真、分野こそ違えど、どこか通ずるものがあります。
さて、1階の展示スペースで紹介されていたのは、
浜口陽三が編み出した技法カラーメゾチントで制作された作品の数々。
今展では特に、同じ版を使用した、
色違いバージョンにスポットを中心に紹介しています。
図版が一緒でも、色が違うと、
ニュアンスも絶妙に変化するのですね。
見比べてみることで、新鮮な発見がありました。
ちなみに。
今回出展されていた作品の中で、
個人的に一番お気に入りなのは、《二色のぶどう》 です。
美味しそうとは特に思いませんでしたが。
ファンたグレープの色合いとは真逆の、
そのぶどうの繊細な色合いに、目が吸い寄せられました。
思わず守ってあげたくなるような (←?)。
そんな繊細な色でした。
続いては、地下の展示スペースへ。
螺旋階段を降り切るやいなや、
浜口陽三の黒の世界から一転、
明るくカラフルな光景が目に飛び込んできました。
まず紹介されていたのは、《C/M/Y_cube》 という作品シリーズです。
被写体となっているのは、懐かしのルービックキューブ。
しかし、よく見ると、なんだか像がブレていますね。
右のなんかは、まるで幽体離脱しているようですし。
一体何が起こっているのでしょうか。
それがわかりやすいのが、この一点↓
これらの作品は、ポラロイドカメラで撮影されています。
実は、ポラロイド写真を水に漬けておくと、
シアン、マゼンタ、イエローの3層に分解することができるのだとか。
それをズラして再構成することで、
さまざまな表情を作り出したのが、このシリーズ。
ズラし方次第では、当然、色を変化させることも可能です。
「この写真の中のルービックキューブの色を変えてみよ」
もし、将軍にそんな無理難題を出されたとしても、濱田さんの方法で解決できますね。
続いて紹介されていたのは、《R G B》 というシリーズ。
こちらは、影を映した作品シリーズなのだそうです。
白の背景にモチーフの影を投影する際に、
R (=赤)・G (=緑)・B (=青) の3色のフィルターを使用。
その一連を多重露光で撮影しているのだそうです。
モチーフ自体が違うので、作品によって見た目が違うのは当然ですが。
それ以前に、ニュアンスの違いのようなものが感じられました。
実は、こちらのシリーズ、撮影の条件は同じものの、
すべて違う種類のフィルムで撮影されているのだとか。
(作品タイトルに、フィルムの種類名が使われています)
へー、コダックと富士フィルムで、仕上がりがこんな風に違うのか。
そんな楽しみ方もできました。
濱田さんが面白いのは、カメラで何を撮影するかではなく、
カメラや写真を使って、どんなことが出来るか、そこから考えているところにあります。
漫才師に例えるなら (?)、漫才のネタを考えるのではなく、
そもそも漫才とは何か、そのフォーマットから考えているようなもの。
絵画や版画に比べると、写真はそれほど多くの技法は無いと思っていましたが。
まだまだ写真の可能性は無限大だったようです!
ちなみに。
こちらは、今回初めて発表される 《Color Collection》 というシリーズです。
このシリーズの作り方 (レシピ?) は、こんな感じ↓
1.白い紙を用意し、自然の中で撮影する
2.撮影したネガを現像する
3.その写真の上部に漂白液をかける
4.漂白剤が写真の色素と混ざり合い、いい感じで垂れてくるのを待つ
5.ここぞというタイミングで撮影する
(白い紙を撮影した部分にかかった時が撮り頃)
つまり。
写真を撮影した写真というわけです。
そんな作品を撮影した上の写真は、
さらに、入れ子構造になっているわけですね。
頭がこんがらがってきました。