活動期間は2年半とちょっと、歌川広重の弟子であったということ以外何一つわかっていない、
謎の浮世絵師・歌川広景 (ひろかげ) にスポットを当てた展覧会が、太田記念美術館で開催中です。
その名も、“お笑い江戸名所 ~歌川広景の全貌” 。
展覧会のメインとなるのは、歌川広景唯一の代表作 《江戸名所道戯尽》 シリーズ。
今回の展覧会では、シリーズ全50点が一挙に公開されています。
《江戸名所道戯尽》 で描かれているのは、江戸の名所。
そして、そこに登場する人々が、何かしらのドタバタコメディを繰り広げています。
言うなれば、広重の 《名所江戸百景》 のパロディ版です。
さて、浮世絵と笑いと聞いて、
歌川国芳のようなウィットに富んだものを、連想したかもしれませんが。
広景の笑いは、そういう笑いではありません。
笑いの質は低め。
ウィットのウの字もありません。
しかし、小学生男子ウケは確実。
『コロコロコミック』、もしくは 『浦安鉄筋家族』 の笑いに近い気がします。
例えば、《江戸名所道外尽 廿八 妻恋こみ坂の景》。
公衆便所で用を足すお侍さん。
そこから発せられる臭いがあまりに強烈で、
道行く人々が思わず鼻を押さえているシーンが描かれています。
この浮世絵を目にした江戸の少年たちは、きっとバカウケしていたことでしょう。
さて、そんな臭そうな浮世絵を、よーく見てみると、公衆便所の中を落書きを発見!
江戸時代から、トイレに落書きは付き物だったのですね。
しかも、人の顔に相合傘におちん●んに・・・。
落書きの内容も現代と変わりなかったのですね (苦笑)。
また例えば、《江戸名所道戯尽 十五 霞が関の眺望》。
馬がいきなり暴れたのでしょうか。
背中の荷がぶちまけられてしまっています。
荷の中身はなんでしょね??
とりあえず、周りの人のリアクションから、臭いものであることは確かです。
基本的には、「臭い」 か 「ズッコける」 か、そのどちらかに頼る。
それが、《江戸名所道戯尽》 クオリティです。
ちなみに、こちらの作品の元ネタとなっているのは、
師匠である広重の 《名所江戸百景 霞かせき》 です。
と、このように、会場では広景作品の元ネタ作品も数点ほど合わせて展示されています。
ちゃんとした浮世絵 (←?) もありますので、おバカなノリが苦手という方もどうぞご安心を。
さて、ここからは特に紹介したい作品を。
まずは、《江戸名所道戯尽 四十五 赤坂の景》 から。
舞台は、床屋。
気がついたら変な髪形にされてしまっていた、という床屋あるあるが描かれています。
江戸時代から、床屋の罠は存在していたのですね。
「えっ、これも江戸時代にあったの?」 といえば、
《江戸名所道戯尽 三十八 小石川にしとみ坂の図》 にも、現代ではおなじみの情景が描かれています。
坂の上からオレンジが転がってくる。
少女漫画かオシャレなフランス映画でしか見たことが無いようなシーンです。
ただ、《江戸名所道戯尽》 ver.は、ロマンスの欠片もありません。
続いては、《江戸名所道戯尽 二十九 筋違御門うち》 。
手鏡のせいで女性の顔の一部が大きくなってしまった、という光景が描かれています。
その姿を見て、周りの人はギョッとしていますね。
元祖ケント・デリカット。
また、本筋の笑いとはズレてしまいますが、
《江戸名所道戯尽 二十一 上野中堂二ツ堂の花見》 も気になって仕方が無かった作品です。
画面右の女性の走り方が変。
かなり変です。
実は、この絵以外にも、「ん?」 と気になってしまう作品が多々ありました。
絵心にやや難ありの広景。
そのあたりに浮世絵人生が短命だった理由のヒントがありそうです。
最後に、《江戸名所道戯尽 二十八 妻恋こみ坂の景》 をご紹介いたしましょう。
雪で作っただるま。
これが本当の雪だるま。
なるほど。
だるまにも見えますが、たけしくん (@平成教育委員会) にも見えます。
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お笑い江戸名所 ~歌川広景の全貌
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