Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

青山杉雨の眼と書

$
0
0

国立西洋美術館では、 “ベルリン国立美術館展”
東京都美術館では、 “マウリッツハイス美術館展”
そして、上野の森美術館では、 “ツタンカーメン展”

一体、どの美術展が、この夏一番の入場者数となるのか。
今、上野の美術館同士で、熱き熾烈なバトルが繰り広げられているのです!!



・・・・・と、そんな中。
上野を代表する東京国立博物館は、今、何をしているのでしょう??
もちろん、この熱き熾烈なバトルに挑んでくるはずですよね・・・・・って、あれ?!

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-トーハク


「ガラガラやないか~い (笑) !」

先に断わっておきますが。
これは、ブログの記事を面白くしようと、
あえて、人が少ない時を狙って撮影した写真ではありません。
本当に、終始こんな感じだったのです。

その原因は、間違いなく、現在開催中の美術展にあります。
現在開催されているのは、 “青山杉雨の眼と書” という美術展。
昭和から平成にかけて書壇に一時代を画した書家・青山杉雨 (1912~1993) の大々的な回顧展です。

“・・・・・・・・・・・誰??”

いや、青山杉雨さんには、何の非もありませんが。
こんなにも上野が、やれフェルメールだ、やれツタンカーメンだ、で盛り上がっている時に、
一般的に、お客さんが集まらない 『書』 の美術展、
それも、国民的・・・というほどではない書家の美術展を開催する、トーハクの真意がわかりません (笑)
むしろ、こういうタイミングでこそ、 “ボストン美術館 日本美術の至宝” や、
“北京故宮博物院200選” のような人気が集まる美術展を開催して欲しいものです。
無気力試合のような気がしてしまったので、1ツ星。
星


書が好きな人には、たまらない美術展なのでしょうが。
(実際、会場にいたお客さんは、書に携わっているっぽい方ばかりでした)
そこまで書に興味がない人間にとっては、
これほど足早になってしまう美術展はないのではないでしょうか (笑)


さてさて、こちらの美術展は、大きく2つの柱に分かれています。
1つの柱は、青山杉雨の書に関するコレクション。

楊維楨の 《張氏通波阡表巻》 をはじめ、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-張氏通波阡表巻


彼が熱心に蒐集した中国の書画の貴重なコレクションの数々が、一挙に展示されています。
さらに、


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-蘭亭洮河緑石抄手硯


《蘭亭洮河緑石抄手硯》 のような文房四宝のコレクションも
紹介されています。

正直なところ、中国の書画に関しては、どの作品もよくわからなかったのですが (笑)
文房具好きな身としては、文房四宝のコレクションは、
今の文房具にも通ずるものがあって、思った以上に楽しく眺めてしまいました。
ちなみに、一番インパクトに残っている文具は、 《鶏血石印材》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-鶏血石印材


凶器のようにも見えますが、ご心配なく (←?)
これは、もともとこういう色の石なのです。
ちなみに、この石は、 “鶏血石” と呼ばれるのだそうですが、
あまりに貴重なことから、 『幻の石』 とも言われているのだとか。
貴重かもしれないですが、プレゼントの包装紙を開けて、
もし、この石が入っていたら、嫌がらせ以外の何物でもないと思うことでしょう (笑)


そして、美術展のもう一つの柱は、もちろん青山杉雨の書。
作品によって、それぞれ表情がガラッと変わるため、
“一作一面貌” と評される青山杉雨の書。

《白楽天・間夕》 も、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-白楽天・間夕


《萬方鮮》 も、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-萬方鮮


《黒白相変》 も、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-黒白相変


どれも青山杉雨の書です。
その変幻自在ぶりは、まるでカメレオン。
カメレオン俳優ならぬ、カメレオン書家です。

くどいようですが、書に関しては、あまり明るくない僕ですが。
青山杉雨の書は、作風が変幻自在のため、
「次はどんなのが来るのかな??」 と、意外と楽しく観賞できました。
普段は、書を観ても、 “ふ~ん・・・” くらいしか思わないのですが、
青山杉雨の書には、 “リズミカルだな♪” とか、 “ぬめぬめしてるな” とか、
いろいろな感想が湧いて出ました。
書を観ているというよりは、絵を観ているのに近い印象です。


というか、 《殷文鳥獣戯画》 なんて、もはや絵です (笑)

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-殷文鳥獣戯画


思ったよりは、楽しめましたが、
僕が、これまで訪れたトーハクの美術展の中では、断トツにお客さんの少ない美術展であったことは確か。
どうして、こんな冒険をしたのでしょうか。
夏は、人だけでなく、博物館も大胆になるみたいです。




美術ブログのランキングにご協力をお願いします。
Blogランキングへ   にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles