スコットランドの都市・グラスゴー出身の実業家ウィリアム・バレル (1861~1958)。
船舶の売買で成功を収め、海賊王・・・もとい、海運王と称された人物です。
ウィリアム・バレル卿(45歳頃) © CSG CIC Glasgow Museums Collection
15歳にして美術作品を収集し始める筋金入りの美術コレクターでもあったバレル。
生涯をかけて収集した美術コレクションは、なんと9000点以上にものぼります。
そのうちの数千点を、バレルは生まれ育ったグラスゴーに寄贈。
それらをもとに、1983年にグラスゴーの郊外にバレル・コレクションという美術館が誕生しました。
そんなバレル・コレクションから、選りすぐりの名品の数々が初来日!
現在、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の展覧会、
“印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション” にて公開されています。
この手の 「○○コレクション、初来日!」 は、わりとよく目にするフレーズなので、
“へぇー。また、何かのコレクションが日本に来てるんだァ”
くらいにしか思わない方も、いらっしゃるでしょうが。
実は、バレル・コレクションが来日するのは、かなり奇跡的なこと!
クリムトや当時の仏像曼荼羅が東京で観られるよりも、奇跡的なことなのです。
というのも、バレルがコレクションを寄贈する際に、
『英国外に作品を貸し出さない』 という条件を提示したのだそう。
つまり、普通に考えたら、来日するわけがないコレクションなのです。
しかし、現在、バレル・コレクションが改修工事により閉館していること、
文化財に関する法律が改正されたことから、奇跡的に貸出しが可能になったのだとか。
・・・・・・・・・・・。
今ひとつ、理由はしっくりきませんが (笑)
何はともあれ、貴重なコレクションが日本で観られるのは、本当にありがたい限り!
この特例中の特例が、どうぞバレルさんにバレませんように。
さてさて、そんなバレル・コレクションには、中世のステンドグラスやタペストリー、
さらには、東洋の陶磁や絨毯など、さまざまなジャンルの作品が含まれているそうですが。
今回初来日した73点は、すべて絵画作品です。
地元スコットランドの画家やオランダの画家の作品に加えて、
バレルが特に好んだというフランスの画家の作品を中心に取り揃えられています。
カミーユ・コロー 《フォンテーヌブローの農家》 1865-73年頃、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection
エドゥアール・マネ 《シャンパングラスのバラ》 1882年、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection
中でも目玉作品は、何といってもドガの 《リハーサル》。
エドガー・ドガ 《リハーサル》 1874年頃、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection
バレリーナを多く描いたドガ。
その貴重な初期の油彩画の一つです。
リハーサルというタイトルではあるものの、画面全体にはそこまで緊張感は漂っていません。
むしろ、なんともリラックスしたムード。
屋外から差し込む日射しのおかげで、ぽかぽかと心地よい陽気すら感じられる作品でした。
「バレリーナは、がに股になりがち」 というバレリーナあるあるを耳にしたことがありますが。
画面中央の青緑色の服のバレリーナが、まさにそれ。
左右の足の向きが、180度反対となっています。
また、足と言えば、螺旋階段を降りる人物の足元も気になりました。
両方ともに、つま先立ち。
バレリーナを見続けたドガだからこそ描けた小ネタ満載の1枚です。
また、バレル・コレクションの初来日を記念して、同じグラスゴーにある美術館、
ケルヴィングローヴ美術博物館からも、ルノワールやセザンヌなどの絵画が特別出展されています。
計7点ある絵画のうち、特に見逃せないのが、ゴッホ 《アレクサンダー・リードの肖像》 です。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《アレクサンダー・リードの肖像》
1887年、油彩・板、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵 © CSG CIC Glasgow Museums Collection
描かれているアレクサンダー・リードは、グラスゴー出身の画商。
バレルに良質のフランス絵画作品を勧めた人物です。
ゴッホの弟で、同じく画商をしていたテオと深い交流があり、
パリでは、同じアパルトマンに住んでいたこともあるのだとか。
どことなく菅官房長官に似ているような。
今にも 『令和』 の額を掲げるような気がしてなりません。
ちなみに、今回の展覧会では、
『外洋』 をテーマとした最後の章の一部が写真撮影可能となっています。
『外洋』 がテーマであるはずなのに、なぜか1点だけクールベによる人物画が。
「女は海ってこと?」 と思いきや、よく見たら背景に海辺が描かれていました。
まぁ、外洋を描いた絵と言えば、そうなのでしょうが。
なお、描かれた場所はフランスの港町トゥルーヴィルとのこと。
当時、保養地としてパリっ子の間で人気があり、『浜辺の女王』 と称されていた場所なのだとか。
そんなトゥルーヴィルを描いた作品が、すぐ隣にもう1点展示されていました。
モネの師でもある画家ウジェーヌ・ブーダンによる、
《トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー》 です。
ブーダンといえば、『空の王者』 の異名を持つ画家。
王者が女王にいる皇后を描いた絵画。
やんごとなき絵画です (←?)。
余談ですが、『外洋』 をテーマとしたこちらのコーナーで、
個人的に一番印象に残っているのは、ウィリアム・マクタガートによる 《満潮》 という一枚。
これ以上ないくらいに、地味な絵なのに、
これでもかというくらいに、立派な金の額縁。
これぞ、ギャップ萌え。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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船舶の売買で成功を収め、海賊王・・・もとい、海運王と称された人物です。
ウィリアム・バレル卿(45歳頃) © CSG CIC Glasgow Museums Collection
15歳にして美術作品を収集し始める筋金入りの美術コレクターでもあったバレル。
生涯をかけて収集した美術コレクションは、なんと9000点以上にものぼります。
そのうちの数千点を、バレルは生まれ育ったグラスゴーに寄贈。
それらをもとに、1983年にグラスゴーの郊外にバレル・コレクションという美術館が誕生しました。
そんなバレル・コレクションから、選りすぐりの名品の数々が初来日!
現在、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の展覧会、
“印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション” にて公開されています。
この手の 「○○コレクション、初来日!」 は、わりとよく目にするフレーズなので、
“へぇー。また、何かのコレクションが日本に来てるんだァ”
くらいにしか思わない方も、いらっしゃるでしょうが。
実は、バレル・コレクションが来日するのは、かなり奇跡的なこと!
クリムトや当時の仏像曼荼羅が東京で観られるよりも、奇跡的なことなのです。
というのも、バレルがコレクションを寄贈する際に、
『英国外に作品を貸し出さない』 という条件を提示したのだそう。
つまり、普通に考えたら、来日するわけがないコレクションなのです。
しかし、現在、バレル・コレクションが改修工事により閉館していること、
文化財に関する法律が改正されたことから、奇跡的に貸出しが可能になったのだとか。
・・・・・・・・・・・。
今ひとつ、理由はしっくりきませんが (笑)
何はともあれ、貴重なコレクションが日本で観られるのは、本当にありがたい限り!
この特例中の特例が、どうぞバレルさんにバレませんように。
さてさて、そんなバレル・コレクションには、中世のステンドグラスやタペストリー、
さらには、東洋の陶磁や絨毯など、さまざまなジャンルの作品が含まれているそうですが。
今回初来日した73点は、すべて絵画作品です。
地元スコットランドの画家やオランダの画家の作品に加えて、
バレルが特に好んだというフランスの画家の作品を中心に取り揃えられています。
カミーユ・コロー 《フォンテーヌブローの農家》 1865-73年頃、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection
エドゥアール・マネ 《シャンパングラスのバラ》 1882年、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection
中でも目玉作品は、何といってもドガの 《リハーサル》。
エドガー・ドガ 《リハーサル》 1874年頃、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection
バレリーナを多く描いたドガ。
その貴重な初期の油彩画の一つです。
リハーサルというタイトルではあるものの、画面全体にはそこまで緊張感は漂っていません。
むしろ、なんともリラックスしたムード。
屋外から差し込む日射しのおかげで、ぽかぽかと心地よい陽気すら感じられる作品でした。
「バレリーナは、がに股になりがち」 というバレリーナあるあるを耳にしたことがありますが。
画面中央の青緑色の服のバレリーナが、まさにそれ。
左右の足の向きが、180度反対となっています。
また、足と言えば、螺旋階段を降りる人物の足元も気になりました。
両方ともに、つま先立ち。
バレリーナを見続けたドガだからこそ描けた小ネタ満載の1枚です。
また、バレル・コレクションの初来日を記念して、同じグラスゴーにある美術館、
ケルヴィングローヴ美術博物館からも、ルノワールやセザンヌなどの絵画が特別出展されています。
計7点ある絵画のうち、特に見逃せないのが、ゴッホ 《アレクサンダー・リードの肖像》 です。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《アレクサンダー・リードの肖像》
1887年、油彩・板、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵 © CSG CIC Glasgow Museums Collection
描かれているアレクサンダー・リードは、グラスゴー出身の画商。
バレルに良質のフランス絵画作品を勧めた人物です。
ゴッホの弟で、同じく画商をしていたテオと深い交流があり、
パリでは、同じアパルトマンに住んでいたこともあるのだとか。
どことなく菅官房長官に似ているような。
今にも 『令和』 の額を掲げるような気がしてなりません。
ちなみに、今回の展覧会では、
『外洋』 をテーマとした最後の章の一部が写真撮影可能となっています。
『外洋』 がテーマであるはずなのに、なぜか1点だけクールベによる人物画が。
「女は海ってこと?」 と思いきや、よく見たら背景に海辺が描かれていました。
まぁ、外洋を描いた絵と言えば、そうなのでしょうが。
なお、描かれた場所はフランスの港町トゥルーヴィルとのこと。
当時、保養地としてパリっ子の間で人気があり、『浜辺の女王』 と称されていた場所なのだとか。
そんなトゥルーヴィルを描いた作品が、すぐ隣にもう1点展示されていました。
モネの師でもある画家ウジェーヌ・ブーダンによる、
《トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー》 です。
ブーダンといえば、『空の王者』 の異名を持つ画家。
王者が女王にいる皇后を描いた絵画。
やんごとなき絵画です (←?)。
余談ですが、『外洋』 をテーマとしたこちらのコーナーで、
個人的に一番印象に残っているのは、ウィリアム・マクタガートによる 《満潮》 という一枚。
これ以上ないくらいに、地味な絵なのに、
これでもかというくらいに、立派な金の額縁。
これぞ、ギャップ萌え。
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