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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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Authentic Aesthetic-岩田俊彦 作品展-

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現在、紅ミュージアムで開催されているのは、

“Authentic Aesthetic-岩田俊彦 作品展-” という展覧会。

Authentic (正統な技術) を用いつつも、Aesthetic (稀な感性) による新たな表現で、

漆工芸作品を制作する次世代の漆芸家・岩田俊彦さんをフィーチャーする展覧会です。

 

 

 

漆芸作品というと、箱や椀を支持体にしているものが多いですが、

岩田さんは、木製のパネルを下地にした作品を多く発表しています。

 

 

 

手に取ることができるサイズの作品でさえ、

その表面を均一な厚みで漆を塗るのは、至難の業。

その作業を大型のパネルに施すだなんて!

至難を通り越して、軽く狂気に近いものがあります。

 

 

 

しかも。

ただ超絶技巧なだけではなく、

そのデザインは、実にモダンでスタイリッシュ。

 

 「漆芸=伝統的=前時代的」

 

そんなイメージを一新する作品ばかりです。

例えば、こちらの 《ウメニドクロ》

 

 

 

パット見は、赤一色のパネルですが。

(いや、赤い漆がフラットに塗られているだけでも、ものスゴいことなのですが)

画面の左端にご注目くださいませ!

 

 

 

さりげなく、梅に髑髏、さらに、鈴が蒔絵で描かれています。

しかも、横から見ると、ご覧の通り。

 

 

 

実は、パネルのサイドにも緑の色漆が施されています。

シンプルに思わせて、見どころの多い作品でした。

 

 

ちなみに、個人的にもっとも惹かれたのは、

丸に梅鉢の家紋をモチーフにした、その名も 《ウメバチ》 という作品です。

 

 

 

単なる家紋 (?) が、これほどまでにクールな印象になるだなんて。

岩田さん本人は、おそらく意識していないと思われますが。

僕の好きなアニメの一つ 『カウボーイビバップ』 のOP映像を思わず連想してしまいました。

 

 

 

なお、こちらの 《ウメバチ》 という作品も、サイドにも見どころが。

さりげなく螺鈿が施されています。

このさりげない感じが、なんともクールですね。

 

 

 

さてさて、会場では、岩田さんの作品だけでなく、

岩田さんが実際に制作に使っている道具も展示されていました。

(ということは、展覧会期間中、岩田さんは制作に支障がないのでしょうか??)

 

 

 

まず気になったのは、手前の刀。

塗師屋刀 (ぬしやとう) です。

こちらは、ヘラをカスタマイズするのに使う刀なのだとか。

サイズはどうするのか。角度はどうするのか。しなり具合はどうするのか。

自分に合うヘラを作るのも、漆芸作家の大事な作業の一つなのだそうです。

さらに、塗師屋刀は、刷毛の先を削るのにも使用するとのこと。

 

 

 

この刷毛を目にした時に、

「持ち手に対して、毛の部分短っ!」 と思ったのですが。

実は、持ち手の中間くらいまで、毛が植えこまれているとのだそう。

毛が固まっては削り、毛が固まっては削り。

カッターナイフのように、どんどん持ち手を短く削って使うものなのだとか。

ちなみに、会場では、岩田さんの制作風景を撮影した映像も紹介されています。

知っているようで知らない漆芸の世界に触れられる貴重な機会。

しかも、嬉しいことに、展覧会は無料です!

星

 

 

ところで。

一見すると、こちらの展覧会は、

まったく紅と関係ないような気がします。

実は、会場中央の展示ケース内で飾られているこれらの作品は・・・・・・

 

 

 

今展のために岩田さんが制作した紅を入れるための化粧道具・紅板で、

中にはすべて、紅ミュージアムで販売されている小町紅が入っています。

オール新作!

本来は、岩田さんに2、3点ほどデザインしてもらい、

それを受注制作してもらう予定だったそうなのですが。

岩田さんが、「こういうのはどうですか?」 と、

想定以上に、アイディアをたくさん出してくれたとのこと。

しかも、そのどれもが素晴らしかったとのこと。

 

 

 

それならば、いっそ全部作ってもらおうという運びになり、

なんだなんだで、全27点もの新作が制作されることになったそうです。

なお、これらの新作はすべて購入することができます。

どの作品も素敵すぎるので、眺めていたら、どうしようもなく欲しくなってしまいました。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「すいません。買います!」

 

 

 

決して、安い買い物ではないのですが。

先日、富山県美術館での大役を務めたこともあり、

そのギャランティーを購入費用に充てることにしました。

美術で得たお金は、美術に還元せねば。

 

 

というわけで、上の画像にある紅板のうちの1点は、すでに 「とに~所蔵」 です。

これから訪れる方は、どれが僕の所蔵品なのか、

それを推理しつつ、展覧会を楽しんでくださいませ (←?)

 

 

 


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