本日ご紹介するのは、 “大野麥風展 「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち” 。
東京ステーションギャラリーにて、9月23日まで開催されている美術展です。
こちらの美術展の主役である大野麥風 (1888~1976) は、
無類の魚類好きで、その生涯で多くの魚の絵を描いたことから、 「魚の画家」 と呼ばれた日本画家。
ちなみに、名前は、 “ばくふう” と読みます。
そんな大野麥風の代表作に位置付けられているのが、
「魚の画家」 の本領を発揮した版画集 『大日本魚類画集』 。
1937年から7年にわたって、
500部限定の会員制度で頒布された “近代日本最高の魚類図鑑” とまで称賛される版画集です。
原画を担当した大野麥風は、この仕事に並々ならぬ情熱を注いでいたそうで。
魚の生き生きとした様子を描写すべく、
水族館に足を運び、ときには、潜水艦に乗って、魚の姿をつぶさに観察し続けたのだとか。
そうして創作された魚の版画の一枚が、こちら↓
《メバル》 (『大日本魚類画集』より) 1938年2年 姫路市立美術館蔵
背景を描かず、魚そのもののみを写実的に描く。
そんな従来の博物画とは違って、実に生き生きとした魚の姿が表現されていました。
版画を観賞しているというよりも、水族館で泳いでいる魚の姿を眺めているのに近い感覚を覚えます。
また、 『大日本魚類画集』 に関して、特筆すべきなのが、
「原色木版二百度摺」 という作業工程を経て、ようやく1点の版画が完成しているということ。
つまり、1点の版画に対して、
彫師は200版分の版木を彫り、摺師は、版木を200回分重ねて摺ったということ。
気が遠くなりそうな手間と暇と技術が込められています。
《飛魚》 (『大日本魚類画集』より) 1938年1月 姫路市立美術館蔵
それだけの労力がかけられた完成作品の色鮮やかさは、言葉を失うレベルでした。
自分の中では、 「原画>>>版画」 という公式がありましたが。
『大日本魚類画集』 に関して言えば、 「原画<<版画」 でした。
原画よりも、それを基に完成させた版画作品の方が圧倒的に美しかったです。
テレビに例えるならば (←?) 、4Kテレビ並みの美しさがありました。
今回の美術展では、そんな美しすぎる版画 『大日本魚類画集』 全72点が・・・
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
なんとなんと、1点も欠けることなく紹介されています!!
72点もあれば、1点くらい手を抜いたものがありそうなものですが (?)
そんな作品は1点も無く、すべてにおいて高いクオリティーを保っていました。
恐るべし、大野麥風。恐るべし、彫師&摺師。
全72点どれも素晴らしかったのですが。
個人的にお気に入りの作品は、妙に愛くるしいテナガエビと、
魚の泳ぐ姿を観察し続けた大野麥風だからこそ、この姿を描けたであろうヒラメです。
皆様も、是非、 『大日本魚類画集』 水族館にて、
お気に入りの魚を探してみてはいかがでしょうか。
『大日本魚類画集』 全72点だけでも十分にお腹いっぱいになりますが。
今回の美術展では、大野麥風の初期の作品や、
大野麥風による魚をモチーフにした日本画の数々も紹介されていました。
さらに、 『大日本魚類画集』 に関連して、
大野麥風以外の学者や画家による博物画も併せて紹介されています。
江戸や明治、大正の博物画に混じって、杉浦千里さんの博物画も展示されていました。
葛西臨海水族園での展覧会で衝撃を受けて以来、1年以上ぶりの再会。
彼の描くエビやカニの絵は、やはり何度観ても新鮮な驚きがあります。
美術展として楽しめるのは、もちろんのこと。
純粋に魚たちの姿をボーッと眺めるだけでも楽しめる目にも涼やかな美術展。
例年よりも暑い今年の夏にピッタリの美術展です。
最後に、読者の皆様へのプレゼント。
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大野麥風展 「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち
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