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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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下村観山展

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岡倉天心生誕150年・没後100年記念として開催された “横山大観展 良き師、良き友” に引き続いて、
“生誕140年記念 下村観山展” が、本日12月7日より横浜美術館にて開催されています。

下村観山 (1873~1930) は、横山大観と同じく東京美術学校の第一期生。
校長である岡倉天心に、早くから才能を認められており、
筆技に関しては近代日本画界屈指と評されているほどの画家です。

今回の下村観山展には、彼の代表作の数々が出展されていますが。
特に筆技の冴えを感じるのが、重要文化財の 《弱法師》 と、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-弱法師
(注:展示は12/20まで)


『美の巨人たち』 でも紹介された 《小倉山》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-小椋山


遠くから俯瞰して全体を観てみても、もちろん素晴らしい作品なのですが。
近づいて観てみれば、その線の美しさに、思わず息を呑むこと必至です。
4Kテレビを初めて見た時と同じような感動がありました。

ただ、あまりに視覚で受け取るビジョンが鮮烈すぎて、
観山の作品には、音や匂い、湿度などは感じられない気がします。
良くも悪くも、映像美に特化した印象でした。
ちなみに、そんな観山と比べると、同期の大観の作品は、視覚だけでなく五感で楽しむ作品という印象。
「動」 の大観に 「静」 の観山と、同期ながらも対照的な2人です。


基本的に、観山は、真面目でそつなく巧いので、
心にグッと来るというよりは、心にスッと染み入る作品が多いのですが。
今回の下村観山展には、グッでもスッでもなく、 「んッ?」 という作品も混じっていました。
本人は、いたって真面目に描いているのでしょうが、
真面目がゆえに、そのズレが助長されてしまっていると言いましょうか (笑)
個人的には、観山の意外な一面が垣間見えて、面白かったです。
星星


例えば、 《獅子図屏風》 という作品。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-獅子図屏風  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-獅子図屏風


きっと、観山は真面目に獅子を描いているのでしょう。
でも、何か変です。
獅子は想像上の生物なので、 「これが正解!」 という姿はありませんが、
それでもやっぱり、この獅子は何か変です。
ミュータント (突然変異) 感が、尋常ではありません。


また、観山の描く富士山にも、 「んッ?」 とさせられました。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-冨士  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《冨士》


観山が描く富士は、どれもみな、頂上が広い。
富士山というよりは、冨士台地。もしくは、エアーズロック。
上の2点以外にも、富士山を描いた絵がありましたが、そちらの富士山も、このスタイル。
なぜ、観山は頑なに富士山を、このスタイルで描くのでしょうか。
富士山に恨みがあるのかしら。


それから、今回の下村観山展で最も衝撃的だったのが、 《魚籃観音》 という作品。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-魚籃観音


魚籃観音とは、33の姿に変身する観音菩薩の三十三観音のうちの一つ。
普通は、手に魚籃 (魚の入ったかご) を持つ姿か、大魚に乗る姿で描かれるそうです。
下村観山は、どっちのスタイルで描いたのかなぁ・・・・・って、そんなことよりも顔!!

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-顔


まんまモナリザ!!

留学中に模写した 《モナ・リザ》 をモデルにしたのだそうです。
ちなみに、キャプションには、発表当時に、この作品は賛否両論を巻き起こしたとありました。
おそらく、1:9で否が多かったことでしょう。


この 《魚籃観音》 の隣にも、もう1点 《魚籃観音》 がありました。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-魚籃観音


こちらは、きっと山村紅葉がモデル。




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