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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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富田 菜摘展 真夏の夜の夢

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2013年の佐藤美術館での個展以来、
アートイベント等で、すっかりお世話になっている現代芸術家・富田菜摘さん。
そんな彼女の最新個展が、現在、新宿高島屋の美術画廊で開催中です。




タイトルは、“富田 菜摘展 真夏の夜の夢”
フクロウやコウモリなど、「夜行性の動物」 をモチーフにした新作が発表されています。




夜行性の動物たちのため、いつもの展覧会よりも、会場はやや暗めに。
作品本体はもちろん、白い壁に映る動物たちの影にも要注目です。




トビウサギをモチーフにした 「飛吉」 たちや、




フェネックをモチーフにした 「ニック」 も、キュートでしたが。




それ以上にキュートだったのが、コアラの 「ゆかり」。
(富田さん曰く、コアラはユーカリを食べるので、「ゆかり」 と命名したとのことw)




顔は実物のコアラと同様に、そこまでキュートではありません (笑)
が、背後に回ってみると、




おしりが実にキュートでした!!
ぷりぷり♪
・・・・・・・ハッ!よく見たら、ただのボウルじゃないか。
ただのボウルに、胸をときめかせしまっただなんて (汗)
完全にヤバい奴です。
富田さん、どう責任を取ってくれるんですか?!(←言いがかり)

こちらが、その富田さんご本人↓




一緒に映っているのは、今回の展覧会の目玉作品の一つ、ライオンの 「ライアン」 です。
フライパンや車輪、工事現場のバリケードなどで作られています。
圧巻だったのは、たてがみの表現。




フライ返しやメジャー、熊手などを巧く用いて、
ライオンのたてがみのフサフサ感を再現していました。
どう考えても、硬い素材であるはずなのに、
ふわふわッとした印象を受けるから不思議なものです。
富田さん曰く、長年制作を続けてきたので、
ようやくこのたてがみにチャレンジすることができたとのことでした。
作品の持つキュートさは、初期の頃からずっと変わっていませんが。
富田さんの制作スキルは、初期と比べて格段にパワーアップしていました。

そのことを、さらに実感させられたのが、マレーバクの 「広夢」 です。




マレーバクの胴体の黒と白の境目の部分にご注目。
一体、何で作られていると思いますか?




正解は、羽釜だそうです。
でも、羽釜のアイデンティティともいうべき (?) 羽が見当たりません。
その理由を富田さんに尋ねたところ、
丸一日かけて、ニッパー的なもので切り取ったという回答が。

・・・・・・・・・。

ワイルドです。
ワイルドにもほどがあります。
「羽釜の羽をひきちぎってやったぜ~。ワイルドだろ~」
いや、スギちゃんでも、そこまではやりません。


ちなみに、羽繋がりで。
会場のあちこちにいるコウモリの羽の部分には、お菓子の缶が多く使われていました。
例えば、ゆかり。




また例えば、ヨックモック。




それらの中に、実家にあった箱の一部を発見!
おもちゃ入れに使っていたなァ。




「可愛い!」 だけじゃなく、
「懐かしい!」 という感情も、時に押し寄せてくる展覧会です。
星星
会期は、8月13日まで。
最終日は16時で閉場してしまうそうなのでご注意を。




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横山操展~アトリエより~

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今年めでたく開館25周年を迎えた三鷹市美術ギャラリー。
それを記念して、現在、“横山操展~アトリエより~” が開催されています。




戦後日本画の異才とも称された横山操は、
自宅とアトリエを三鷹市大沢に構えていたこともあり、三鷹市とは縁の深い画家。
三鷹市美術ギャラリーが開館した1993年、トップバッターを飾ったのも横山操展だったそうです。
展覧会の入り口には、そんな開館記念展の様子がパネルで紹介されていました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


横山操らしい大型のダイナミックな作品が会場を埋め尽くしています。
ということは、きっと開館25周年記念の今回も、大型のダイナミックな作品が多く出展されているはず!




・・・・・・・・と思ったら。





そうでもなかったです。
一瞬、展示室を間違えたかなと本気で思ってしまったほど。
・・・・・横山操展ですよね??

大きな作品もなくはなかったですが。




展覧会で紹介されているのは、小品ばかり。
さらに、普通の展覧会では、箸休め的 (?) に紹介されがちな、
筆や絵の具などの愛用品も、むしろメインな感じで展示されていました。




昨年、横山操夫人の基子氏が亡くなったことをきっかけに、
三鷹市美術ギャラリーが、アトリエの調査に入ったのだそうです。
その調査により見つかった未完の作品や愛用品を初公開し、
これまで知られていなかった横山操の一面を見せようというのが、今展のコンセプトとのこと。
なるほど。どうりで全体的に、横山操の記念館のような印象を受けたわけです。
横山操のファン、ないしは、横山操のことをある程度知っている人にとっては、興味深い展覧会。
そうでもない人にとっては、あまり心に響かない展覧会かもしれません。
星


正直なところ、絵画が観たかったので、
愛用品の展示には、そこまで心が動かされなかったのですが。
唯一、心を動かされたのが、自作の画歴です。





自分が掲載された記事を、丁寧にスクラップ。
しかも、自分が言及されているところには、しっかり赤線が引いてありました。
よく見ると、ストラップ的なものも付いています。
ということは、部屋にいつも飾ってあったのでしょうか?
僕もどちらかと言えば、自分が好きなタイプですが。
横山操には勝てる気がしません (笑)

そんな横山操の自分好きっぷりは、こんなところにも。




こちらは、永井龍男の新聞小説 『石版東京図絵』 の挿絵原画も一挙展示 (一部紛失あり) です。
連載が始まった当初は、絵の大きさも控えめで、
文章に合わせて、レイアウトを真剣に考えている節があるのですが。




連載が進むにつれ、レイアウトを気にせず、どんどん大胆に。




最終回近くになると、ほとんどの挿絵に 「山に〇」 のサインを添えていました。




自分をアピールする気持ちが抑えられなかった様子。
その変遷が見られて、大変興味深かったです (笑)


今回出展されていた絵画作品の中で、
強く印象に残ったのは、晩年に描かれた 《茜》 という一枚。




往年のようなダイナミックさはなく、落ち着きのある静謐な印象の作品です。
実は、横山操は51歳の時に、脳卒中で倒れ、
右半身不随となり、利き腕の右手が使えなくなってしまったのだそう。
しかし、制作意欲がやむことはなく、リハビリに徹し、
その半年後には、絵筆を左手に持ち替えて再び制作を始めたのだそうです。
ところが、53歳の時に再び脳卒中に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
この絵は、その最後の時代に、気力を振り絞って描かれた絵画のうちの一点なのだとか。
それを知った上で見てみると、静謐な画面ながら、
気迫や画家としての業のようなものが感じられました。


ちなみに、今回の展覧会のラストを飾っていたのは、あまり展覧会では見かけない意外なもの。




まさかの横山操の表札でした。
これに関しては、さすがに横山操ファンでも、
「えっ、何でこれがラスト??」 となるはず (笑)
そもそも、そこまで表札を展覧会で観たいとも思いませんし。
仮に展示するとしても、表札なら入り口に展示した方が良かったのでは?




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目からアレが落ちるという奇跡。

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美術の世界には、奇跡を起こしたヒーローが数多く存在する。
もしも、そんな彼らにヒーローインタビューを行ったなら・・・?



インタビュアー (以下:イ) 「放送席、放送席。
               こちらには、パウロさんにお越し頂いております」

パウロ (以下:パ) 「よろしくお願いいたします」

  バルトロメオ・モンターニャ 《聖パウロ》


イ「パウロさんといえば、『キリスト教最大の伝道者』 と言われているほど、
  キリスト教の布教に熱心なわけですが、やはり昔から熱心だったのでしょうか?」

パ「いえいえ。実は、昔は、むしろ逆でして。
  キリスト教を徹底的に弾圧する立場にいました」

イ 「えっ?そうなんですか!一体何があったのか、お話を聞かせてもらってもよろしいですか?」

パ「はい。これは、僕がまだサウロと名乗っていた時の話なのですが・・・」

イ「ちょっと、すいません!昔は、サウロさんだったんですか?」

パ「そうですよ。回心したときに、サウロからパウロへと改名したのです」

イ「何か微妙な改名ですね。
  磯野貴理子が磯野貴理に改名したくらいに微妙な感じだなぁ・・・あっ、独り言です。
  え~っと、お話の続きを聞かせてください。」

パ「その日、私はキリスト教徒を弾圧するために、馬に乗ってシリアへと向かっていました」

イ「はい」

パ「首都であるダマスカスに近づいたあたりで、不思議な現象が起こったのです」
  

イ「何が起きたのですか?」


アルベルト・カイプ 《パウロの回心》


パ「上空に、まばゆい光を放つ物体が現れたのです。
  そして、その強烈な光は、私だけを包み込みました」

イ「・・・・・本当ですか?それ?」

パ「本当です。いきなりのことだったので、驚きのあまり馬から落ちてしまいました」


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ 《パウロの回心》


イ「あのー、これってUFOの目撃談か何かですか?アブダクション的な?」




パ「違います違います!その光の正体は、キリストさんだったのです」


ハンス・スペックアールト 《ダマスカスへの道で回心する聖パウロ》


イ「なんと!」

パ「光の中から現れたキリストさんは、私にこう言いました。
  『何でいつも君は僕を迫害するんだよ!もっと他にやるべきことあるだろ!』と」

イ「なるほど。地球人であるパウロさんにクレームを付けに来たと」

パ「いやいや、キリストさんも地球人ですから!
  で、キリストさんは、フッと消えてしまったのです。
 『今の何だったんだろう?』 と起き上がろうとしたときに、私は異変に気が付きました」

イ「何があったんですか?」

パ「目が見えなくなっていたのです」

イ「・・・・・人体実験?」

パ「違いますって!
  なぜか目が見えなくなった私は、
  皆に手を引かれ、なんとかダマスカスに連れて行ってもらいました」

イ「良かったですね」

パ「そうはいっても、やはり目が見えなくなったというショックは大きく、
  すっかり落ち込んでしまい、3日間くらい、何も喉に通りませんでした」

イ「それは辛かったですね」

パ「はい。でも、そこに熱心なキリスト教徒のアナニヤさんが現れまして。
  私を治療してくれたのです」


ピエトロ・ダ・コルトーナ 《聖パウロに視力と取り戻すアナニヤ》


イ「そうだったのですね!目は治ったのですか?」

パ「はい。おかげさまで。
  アナニヤさんが祈ってくれた途端、私の目からポロッと何かが落ちたのです」

【本日のハイライトシーン】


ジャン・レストゥー2世 《聖パウロに視力と取り戻すアナニヤ》


イ「・・・・・マイクロチップですか?」

パ「いい加減、UFOから離れてください!
  私もよくわからないのですが、強いて言えば、ウロコのようなものでした」




イ「・・・ウロコですか」

パ「この目からウロコが落ちるような奇跡的な体験をきっかけに、
  私は回心し、熱心なキリスト教徒へと生まれ変わることとなったのです」

イ「もしかして、『目から鱗が落ちる』 ということわざの語源って・・・」

パ「どうやら私のこの不思議な体験が由来のようですね」

イ「本当に目からウロコが落ちることなんてあるんですね!
  知りませんでした!まさに目からウロコです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

パ「ありがとうございました」

イ「それでは、放送席へお返しします」




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─ 明治150年記念 ─ 明治からの贈り物

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今年2018年は、明治維新から数えて150年目という節目の年。
それを記念して、現在、静嘉堂文庫美術館では、
“─ 明治150年記念 ─ 明治からの贈り物” という展覧会が開催されています。




静嘉堂文庫といえば、創始者である岩﨑彌之助 (三菱第2代社長) と、
その息子・岩﨑小彌太 (第4代社長) の二人が蒐集した古典籍・美術コレクションに定評がありますが。
実は、同時代の芸術文化も支援しており、
明治時代の絵画や工芸品の隠れた名品も、多く所蔵しています。
今回の展覧会では、それら明治の名品を一挙蔵出し!
展示会場こそあまり広くはないですが、内容は濃いめの展覧会です。
星


展覧会の目玉は何と言っても、近代絵画で初めて、
重要文化財の指定を受けたといわれる橋本雅邦の 《龍虎図屏風》



重要文化財 橋本雅邦 《龍虎図屏風》(6曲1双) 明治28年(1895) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


雷鳴が響き、波は荒れ狂う。
そして、向かい合う一組の龍と虎。
これ以上ないくらいに迫力満点の作品でしたが、
あまりに斬新な構図過ぎて、当時は、「腰抜けの虎」 などという酷評もあったのだとか。
いつの時代にも、いわゆる “荒らし” はいるのですね。
おそらく背後の虎のことを、腰抜け呼ばわりしているのでしょうが。
むしろ、こっちのほうが飛び掛かってきそうで怖いです。


炎上した (?) 作品といえば、こちらも。


黒田清輝 《裸体婦人像》 明治34年(1901) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


明治を代表する洋画家・黒田清輝の 《裸体婦人像》 です。
炎上度合いは、橋本雅邦の 《龍虎図屏風》 の比ではありません!
いわゆる “裸体画論争” で社会問題にまで発展した一枚。
今でこそ芸術ということで、なんとなくい認められていますが。
まだ明治時代は、女性の下半身まで描かれているのは、
公序良俗的に、「ケシカラン!」 絵画だったのだそうです。
当然、《裸体婦人像》 を、このまま展示することは許されず、
大事なところを隠すべく、下半身を布で覆った状態で展示されることになったのだとか。
(う~ん。そっちのが、逆に、エロい気がしますが・・・)
ちなみに、当時、その布の下をどうしても見たくなり、
何とかステッキで布を持ち上げようとした男性もいたのだそうです。
いや、我慢しろよ (笑)。
さてさて、この作品は、ジョサイア・コンドルが設計した、
岩崎家高輪本邸 (現・関東閣) のビリヤードルームに飾られていたのだそう。
たまに、ビリヤード場に、
アメリカンなヌードポスターが飾ってありますが、あんな感じだったのかもしれません。


今回紹介されていた絵画作品の中で、
一番インパクトがあったのは、菊池容斎の 《呂后斬戚夫人図》 です。


菊池容斎 《呂后斬戚夫人図》 江戸時代 天保14年(1843) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


描かれているのは、古代中国の故事。
画面中央で高みの見物を決めているのは、
『項羽と劉邦』 で有名な漢王朝の初代皇帝・劉邦の妻である呂后です。
その劉邦が逝去し、息子が二代皇帝として即位した際に、
まず呂后が行ったのは、劉邦の寵愛を受けていた側室・戚夫人への復讐でした。
戚夫人を投獄して奴隷にすると、戚夫人の手足を切り落とし、両目をえぐり、
耳と喉をつぶし、最終的には、便所へと放り込み 「人豚」 と称して見世物にしたのだそうです。
画面の左側には、それぞれのシーンが描かれていました。
中国版 “怖い絵”。
かつて、こんなにもドン引きする絵があったでしょうか。。。


ちなみに、明治の工芸品も、目玉作品だらけ。
かつて高輪本邸の貴賓室に飾られていたという絵画にしか見えない刺繍額や、


菅原直之助 《羽衣刺繍額》 明治40年(1907)頃 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


渡邉省亭が下絵を描き、濤川惣助が七宝を担当したコラボ作など、


濤川惣助 (渡邊省亭 下絵) 《七宝四季花卉図花瓶》 一対 明治時代(19~20世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


超絶技巧の工芸品が数多く展示されていました。
その中で、個人的に印象に残ったのは、
明治の彫金家・海野勝珉の 《天燈(燈台)鬼 ・鉄鉢鬼・龍燈鬼》 です。




元ネタは、言わずと知れた、興福寺に伝わる鎌倉時代の彫刻。
いかし、天燈鬼と龍燈鬼立像は観たことがありますが、
センターでしゃがんでいる鉄鉢鬼は目にした記憶がありません。




・・・・・と思ったら、海野勝珉によるオリジナルキャラクターとのこと。
鉄鉢の持ち方がソフトでした。
もっとグッと持って頂きたいものです。




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内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える

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水戸芸術館で開催中の展覧会、
“内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える” に行ってきました。




こちらは、国内外で活躍する現代美術家・内藤礼さんの、
国内においては2014年以来の個展にして、過去最大規模となる展覧会です。
今回の展覧会の一番の特徴は何と言っても、展覧会史上初となる自然光のみでの展示。
会場内に照明やスポットライトが無いのはもちろん、
特別な許可を取ったそうで、展覧会期間中は非常灯の光もオフになっています。


最初の展示室1に入ると、まず現れたのは、無数の小さな光の粒。
それらが空中に浮いています。
よく見ると、浮いているのは、天井から垂れ下がる糸に結びつけられたガラスのビーズ。
ただのビーズではなく、吹きガラスの手法で作られたビーズだそうで、
「息を吹き込む=魂を吹き込む」 ということを象徴しているのだそうです。
触れたら壊れてしまいそうな・・・いや、実際に触れたら壊れてしまう。
なんとも繊細な印象の作品でした。
思わず、息を止めて鑑賞してしまいました。

そんな繊細な作品の次に展示されていたのは、
《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 という作品です。


《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 2005年 アサヒビール大山崎山荘美術館、京都 撮影:森川昇


こちらは、むしろ息を吹きかけるべき作品。
白い水路のようなオブジェクトに、薄く水が張ってあります。
そこに息を吹きかけると、水が波打ち、息が可視化されるという作品です。
せっかくなので、チャレンジしてみることに。
フッと息を吹きかけてみましたが、さざ波程度のチョロチョロとした波しか発生しません。
もっと息を強く吹きかけるように指示されました。
そこで、バースデーケーキのろうそくを全部吹き消すくらいの力で、息を吹きかけてみることに。
が、それでも波は水路の途中で消えてしまいました。
端から端まで波打たせるには、もっと強い力で息を吹きかけなくてはならないようです。
内藤礼さんと言えば、“生” の内と外をテーマに制作を続けているアーティスト。
あのあと、さらに強く息を吹きかけ続けていたら、間違いなく “生” の外に行ってしまうところでした。


展示室1に関しては、天窓から光が射しこんでいたので、明るさは申し分なし。
自然光だけでも、なんとかイケるものですね。
しかし、続く展示室2には、天窓はありません。
当然、薄暗いのだろうと思いきや、先ほどの展示室1と、
その先に続く展示室3 (天窓あり) から洩れてくる光のおかげで、そこまで暗く感じませんでした。
光に満ちた部屋が 「“生” の内」 であり、
こちらの暗い部屋は 「“生” の外」 を表しているとのこと。
その住人である 《ひと》 が、あちこちにいます。


《ひと》 2012年 ギャラリー小柳、東京 撮影:木奥惠三


暗いとは言っても、決して不気味な暗さではなく、
《ひと》 の放つ雰囲気とあいまって、柔らかい暗さ、優しい暗さといった印象でした。
とは言え、僕が訪れたのは、晴れた日のお昼頃。
これが曇りの日や雨の日、夕方くらいだったら、また違った印象だったのかもしれません。
(ちなみに、自然光のみの展示であるため、9月1日より開館時間が通常の18時から17時閉場に変更となるそうです)


さてさて、《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》《ひと》 のように、
内藤礼さんが言わんとすることが、それなりに伝わってくる、理解できる作品もあるのですが。
天井から絹糸が1本垂れ下がっているだけだったり、
風船や鈴が紐でぶら下げられていたり、水の入ったガラス瓶が床に直置きされていたり。


《無題》 2009年(2008年-) 神奈川県立近代美術館 鎌倉、神奈川 撮影:畠山直哉


一体全体、何を表しているのか。
もはや禅問答に近い作品も多々ありました。
考えても考えても答えが出なかったので、
ギブアップして担当学芸員さんに回答を求めたところ・・・

「本当のところは内藤礼さんにしかわからない」

とのことでした。
ただ、内藤礼さんはフィーリングで適当に作っているわけでは決してなく。
絹糸をどこに設置するのか、風船や鈴を床からどれくらいの高さにするのか、
ガラス瓶の水の量をどれくらいにするのか、すべてミリ単位で悩みながら決めているそうです。
なので、間違いなくすべての作品に、ちゃんと意味があるのでしょう。

全体的には、とてもシンプルな展示空間なので、
引き算の美学のように感じられましたが、むしろ逆。
10からいろいろ引いた結果、1になったのではなく、
0.1や0.01といった繊細な作品を積み重ねた結果、1になった感じでした。
・・・・・・・う~ん。我ながら、上手く伝えられた気がしません (汗)
この展覧会ばかりは、もう実際に観に行って、内藤礼ワールドを感じて頂くしかないです。
Don't Think. Feel!
星星


ちなみに、個人的にオススメなのは、
内藤礼さんがここ近年手掛けている 《color beginning》 シリーズの展示コーナー。

color beginning
(↑こちらは、資生堂ギャラリーでの “椿会展 2015- 初心 -” の展示風景です)


《color beginning》 は、パッと見は、ただの真っ白なキャンバスなのですが、
じ~っと見つめ続けていると、淡いピンクや淡いオレンジ、淡い黄色が見えてくる絵画作品です。
これまで何度も美術館やギャラリーで発表されていますが、今回は初となる自然光での展示。
いつもよりも色を感じられました。
こんなにもカラフルな作品だったのですね。


最後に、この展覧会を訪れる際の注意ポイントを。
展覧会を観終わった直後には、他の展覧会を訪れないほうがベターです。
内藤礼さんの作品の薄味に身体がチューニングされてしまっているので、
その足で、普通のアーティストの作品を観ると、「味、濃っ!」 となってしまいますよ (体験談)。




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太陽の塔への道

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《太陽の塔》 の内部公開がスタートしてから、早5か月。
いまだに、なかなか予約は取れないそうです。
そんな誕生から今なお絶大な人気を誇る 《太陽の塔》 にちなんで、
現在、岡本太郎記念館で開催されているのは、“太陽の塔への道” という展覧会。
岡本太郎が 《太陽の塔》 を制作に挑む前夜、
1960年代の岡本太郎の仕事に焦点を当てた展覧会で、油彩や彫刻など約20点が紹介されています。
星


まず何と言っても、目を惹くのが、こちらのタワー的なもの。




1962年に制作された 《メリーポール》 です。
見た目やカラーリングからは全く想像がつきませんでしたが。
実はこの作品は岡本太郎流のクリスマスツリー。
「池袋を明るい街、新しい都心に」 というスローガンのもと、
池袋の百貨店・商店街の依頼により制作されたアルミニウム製のクリスマスツリーで、
高さは16m、両腕の長さは10mあったそうです。
クリスマスツリーという季節ものであるため、
実際に池袋東口に設置されていたのは、わずか1か月半だけだったのだとか。
ちなみに、照明用の電気代は、月約100万円だったとのこと。
当時の会社員の平均月収は、2万2千円程度。
電気代がべらぼうだったことも話題になったそうです。




そんな 《メリーポール》 の派手さに隠れて (?) 、
ひっそりめに展示されていたのが、《太陽の鐘》 の模型でした。




こちらは、かつて静岡県内にあったレジャー施設、
「日通伊豆富士見ランド」 のために、1966年に制作された作品です。
日通がレジャー施設を運営していたことにまずビックリしましたが、残念ながら1995年に施設は閉園。
その後、しばらく人目に触れられることはありませんでしたが、
いろいろな縁があって、今年の3月31日から群馬県前橋市にて第二の人生を歩み始めたそうです。
鐘の部分をよく見ると・・・




まんま 《太陽の塔》 のあの顔がありました。
その後の 《太陽の塔》 へと繋がる重要な作品です。


また、絵画作品では、幻の壁画作品といわれる 《豊穣の神話》 の下絵が紹介されていました。




こちらは、あの 《明日の神話》 の姉妹作に当たる作品で、
《明日の神話》 と同じくメキシコシティに建設を予定されたホテルから依頼されたもの。
バンケットルームを飾る予定だったそうですが、ホテル建設が頓挫したため、制作は白紙に。
もし完成していたら、《明日の神話》 の倍の大きさに当たる60mの巨大作品となっていたそうです。
つくづく未完であるのが悔やまれます。
ただ、下絵とは言っても、写真に納まらないくらいの大きさ。
下絵とは思えないほどのパワーがあります。
何のキャラかよくわからないですが、何かを訴えかけてくるものはありました。




左端には落書きのようなものも。
これはこれで、味があって癒されます。




さてさて、岡本太郎記念館の館長曰く、「太郎の作風は60年代で大きく変わった」 とのこと。
「繊細な筆致でぎっしりと多くのモチーフを描いていたそれまでとは打って変わって、
梵字にも似た抽象的で呪術性を感じる黒のモチーフが中心的な役割を果たすようになる」
のだとか。
確かに、紹介されていた絵画作品はどれも黒が象徴的で、まるで黒がうごめいているようでした。





その中で特に印象的だったのが、こちらの作品。




画面の半分ほどが、黒い何かで占められています。
タイトルは、《休日》 とのこと。
この黒いのは、「明日も会社休みてー!」 という思いを表しているのかもしれません。


ちなみに。
今年に入ってから、岡本太郎記念館の庭に出現した全身グレーの岡本太郎フィギュアは・・・




今回は展覧会の会場に。
その分、庭が少し寂しくなったからでしょうか、
久しぶりにアイツが2階のベランダから、ひょっこり顔を覗かせていました。
ナイスひょっこり。







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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!)
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度お送り頂けますと幸いです。


8/18(土) “藤田嗣治展” へ行こう!

美術は、いろんな人と感想を共有することで、より楽しいものとなります。
一人で美術展を訪れても、もちろん楽しめますが、
みんなで同じ美術展を鑑賞すれば、もっともっと楽しくなるものです。

さて、今回みんなで訪れるのは、
東京都美術館で開催される “没後50年 藤田嗣治展”
日本中だけでなく、フランスや欧米の主要な美術館から、
代表作が集結する質・量ともに史上最大級の藤田嗣治展です。
特にシカゴ美術館から初来日する 《エミリー・クレイン=シャドボーンの肖像》 は必見!

展覧会を鑑賞したあとは、近くのカフェでまったりと。
図録をお持ちしますので、展覧会の感想などを中心に楽しくワイワイ話せたらと思っております。
もちろん美術の知識は不要!
美術マニアの集いではないので、どなたでも気軽な気持ちで遊びにいらしてくださいませ。

時間:13時~16時半
定員:10名
参加費:1600円 (展覧会の鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


8/19(日) 30周年記念イベント クイズ!版画キングダム

今年開館30周年を迎える町田市国際版画美術館。
それを記念して開催中の “版画キングダム” の関連イベントとして、
来たる7月28日に、「30周年記念イベント クイズ!版画キングダム」 を行います!

“美術館での講演イベントは、参加型だったら、もっとみんなが楽しめるんじゃないか?
・・・・・いっそ、『オールスター感謝祭』 のように、
参加者全員でさまざまなクイズにチャレンジするのは、どうだろう!?”

と、長年密かに温めていた企画を、ついに実現させます (笑)
クイズは、美術の知識がなくても解けるものばかり。
しかも、それらのクイズが、展覧会の鑑賞の手助けにもなるという新感覚のバラエティ企画です。
さらに、クイズの成績優秀者には、豪華なプレゼントも!
皆さま、ふるってご参加くださいませ。

時間:14時~15時半
定員:先着120名(申込不要)
参加費:無料 (ただし、高校生以上は本展観覧券 (半券可) が必要です)


8/22(水) 笑いdeアートナイト~今こそ広重の魅力を掘り下げナイト~

銀座にあるアートカフェ・ART FOR THOUGHTを舞台に、
「週末にアートに触れたくなる!」 をコンセプトにお送りするアートバラエティーショー。
それが、『笑いdeアートナイト』 です。
週末に美術館に足を運びたくなるようなバラエティショーやトークライブを毎回お届けいたします。
また、お客さん同士もワイワイ盛り上がれるのが、このイベントの醍醐味です!

さて、今回お届けするのは、実に2年ぶりとなる太田記念美術館の渡邉晃学芸員とのトークライブ。
9月1日よりスタートする展覧会 “没後160年記念 歌川広重” にちなんで、
「今こそ広重の魅力を掘り下げナイト」 を開催いたします。
代表作である 《東海道五拾三次之内》《名所江戸百景》 の話題はもちろん、
名品から珍品まで、時間の許す限り、広重の意外な一面をどんどん掘り下げてまいります!
どうぞお楽しみに♪

時間:19時半~21時半 (開場は、19時20分)
料金:2500円(ファーストドリンク付)+ワンオーダー制
定員:20名

ご参加希望の方は、イベント名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


8/26(日) 一村だ!若冲だ!岡田美術館へ行こう!

現在、箱根小涌谷にある美の殿堂・岡田美術館では、
「昭和の若冲」「日本のゴーギャン」 と称された田中一村の特別展が開催中です。
現時点ですでに本邦初公開の作品が5点公開されていますが、
8月24日より、なんと田中一村の最高傑作と名高い 《アダンの海辺》(個人像) が公開されます!
これは行かねば!
是非、この機会にみんなで観に行きましょう!

当日は12時半に、箱根湯本駅に集合。
そこから、みんなで岡田美術館を目指します。
見どころは、田中一村展だけにあらず。
岡田美術館のコレクションには、若冲や北斎など他にもまだまだ名品がいっぱい。
それらの見どころも徹底的に解説させて頂きます。
途中疲れたら、足湯カフェでまったりいたしましょうおんせん

基本は、現地解散となっていますが。
希望者がいらっしゃいましたら、帰りは東京方面までご一緒いたします。
都心から箱根はちょっと遠いですが、夏休み最後の小旅行気分を味わえるアートツアーです。

時間:12時半~17時
定員:12名
参加費:2500円 (展覧会の鑑賞料を含む。普通に観るよりも300円お得です)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/2(日) 白金台ミステリーアートツアー

どこを訪れるかは当日までのお楽しみ。
毎回好評のミステリーアートツアーの最新作!
今回は、白金台近辺のアートスポットを巡ります。

さてさて、全くのミステリーですと、
参加するのを躊躇してしまうと思うので、当日訪れる場所を一か所だけご案内。
今回のゴール地点は、今年完全リニューアルオープンを果たした東京都庭園美術館です。
こちらでは、現在、“ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力” が開催中。
日本初公開となるブラジル先住民の椅子コレクションをテーマにした展覧会です。
ゆるカワな椅子は必見!
世界的建築家・伊東豊雄氏による会場構成も必見です!

当日は、東京都庭園美術館以外に、2つのアートスポットを巡ります。
学芸員さん、館長さんによる特別ガイド付きですので、どうぞお楽しみに!
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

時間:13時~18時
定員:10名
参加費:2000円 (展覧会の鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/8(土) (土) 史上最強の銀座ギャラリーツアー!

「銀座のギャラリーを巡ってみたーい!」


・・・・・でも。

“たくさんありすぎて、どこに行けばいいのかな?”
“敷居が高そうだし・・・(´・ω・`)”
“無理やり買わされたら、どうしよう・・・(´□`。)”

そう躊躇している皆様、お待たせいたしました!
こちらは、アートテラーとして自信を持って、
「これぞ、銀座のギャラリー巡りの決定版!」 とお届けするツアーです。

これまでにも同コンセプトのツアーを何度か開催していますが、今回はそのパワーアップ版!
さらに厳選を重ねたギャラリーの数々をご紹介させて頂きます。
いつもお世話になっているギャラリーから、
銀座に行ったら絶対に訪れておきたい老舗ギャラリーに、
有名ブランドのギャラリー、そして、隠し玉のギャラリーまで、時間の許す限りご案内いたします。

一級品のアートに出逢えるのは、もちろん。
キャラの濃ゆいギャラリストさんにも出逢えますので、楽しい話や裏話にもご期待ください!
楽しい上に、ギャラリーでのhow toも身に付いてしまう一石三鳥なアートツアーです。

時間:13時~17時半
定員:10名
参加費:1000円

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
http://arc-tour.org/mail.html


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

Film:43 『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』

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■ゴーギャン タヒチ、楽園への旅

  監督:エドゥアルド・デルック
  出演:ヴァンサン・カッセル、マリック・ジディ
  2017年/フランス/102分/R15+

19世紀フランスを代表する画家ゴーギャンの知られざる創作の秘密や、
タヒチでの愛と苦悩の日々を、ヴァンサン・カッセル主演で描いた伝記ドラマ。
パリで株式仲買人として働きながら、趣味で絵を描きはじめたゴーギャン。
しかし、1882年にパリの株式市場が大暴落すると、それまでの裕福な生活は一変。
ゴーギャンは絵画を本業にしようと考えるが、
生活は困窮し、妻や子どもたちと別れることになってしまう。
わずかな資金を手にタヒチへ渡ったゴーギャンは、
すっかりその地に魅了され、現地の美女テフラと結婚する。
ところが、資金が底をつくと再び極貧生活に陥り、テフラの愛情も離れていってしまう。
(「映画.com」より)


「最初から最後まで、ほぼずーっと面白味のない映画でした。
 見始めて30分くらい経ったあたりから、
 「早くこの映画から解放されたいなぁ」 と思っていた次第です。
 こっちがタヒチに行きたいくらいだわ!

 
 5人も子どもがいるにもかかわらず、
 パリは文明に毒されているから、タヒチに行きたいと言い出すゴーギャン。
 当然、妻も子どもも付いてきません。
 で、単身、タヒチに渡るも、そこはもちろんフランス領。
 パリほどではないものの西洋文明が流入していました。
 そのことに腹を立てたゴーギャンは、
 周囲の忠告を無視して、もっと自然豊かな奥地へと移り住むことを決意。
 そこから映画は、『ゴーギャンの無人島0円生活』 へと突入します。
 葉っぱを集めて寝床を作ったり、よくわからない果物を食べたり、
 本家の無人島生活でもよく見かけるようなシーンを経て、いよいよ魚採りに挑むゴーギャン。
 銛でトライするもなかなか巧くいかず、全然、「採ったどー!」 とはいきません。
 と、次の瞬間、予想の斜め上を行く展開が待っていました。
 銛で捕まえるのは無理と判断したゴーギャンが、
 おもむろにライフルを取り出し、水面にいる魚に向かって撃ち始めたのです。

 思いっきり、西洋文明じゃねーか!

 いや、西洋文明でも、そんな使い方はしないでしょう。
 ともあれ、このシーンに限らず、
 言ってることとやってることがチグハグなゴーギャン。
 ヴァンサン・カッセルの演技が巧いだけに、
 ゴーギャンの自分勝手ぶりに、どんどんと怒りが湧いていきました。

 


 また、この映画のメインテーマは、現地で出逢った少女テフラとの恋なのですが。
 2人が出逢うシチュエーションも特殊なら、
 2人がすれ違っていくシチュエーションも特殊。
 こんな感情移入もできない2人の特殊な恋愛模様を見て、一体誰が一喜一憂するのであろうか。
 ちなみに、映画に登場するテフラは、どう見ても20歳前後でしたが、
 実際に、当時43歳だったゴーギャンと出逢った時のテフラの年齢は、14歳。
 それを忠実に再現したら、もろもろ問題があるから、おそらく映画ではぼやかしたのでしょう。
 14歳と知った上で観ると、ゴーギャンの行動はいろいろアウトです。
 男の自分ですらそう感じたのですから、女性がこの映画を観ても何が楽しいのだろうか。
 この映画を観て共感できるのは、

 ”俺も他の国で生活したら、若い女の子と結婚できるのかァ”
 
 と、アホな妄想をしているオッサンくらいなものでしょう。


 この映画を観て、ゴーギャンを好きになる人がどれくらいいるのでしょう?
 もしくは、ゴーギャンの絵が好きになる人がどれくらいいるのでしょう?
 むしろ、ゴーギャンのイメージが悪くなるだけの映画。
 一体、誰が得する映画なのか。
 なぜ、そもそも映画化しようとしたのか。

 我々はどこを楽しめばよかったのか。
 我々は何を思えばよかったのか。
 我々はどこにこの怒りの矛先を向けたらいいのか。
 スター ほし ほし ほし ほし (星1つ)」


~映画に登場する名作~

《マナオ・トゥパパウ(死霊は見守る)》


FINAL FANTASYと天野喜孝の世界展

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池袋のサンシャインシティ文化会館ビルで開催中の展覧会、
“FINAL FANTASYと天野喜孝の世界展” に行ってまいりました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、日本はもとより海外にもその名が知られる、
画家、キャラクターデザイナー、イラストレーターの天野喜孝さんの創作に焦点を当てた展覧会です。
天野喜孝さんといえば、やはり 『FINAL FANTASY』 シリーズ。
1987年にシリーズ1作目が発売され、
それから30年以上たった現在もなお、世界中に根強いファンを持つRPGです。
もちろん 『FINAL FANTASY』 シリーズの原画は、今回の展覧会の大きな目玉。
1作目の 『FINAL FANTASY』 から、


FINAL FANTASY パッケージイラスト 1987年 363×442mm アクリル、紙
©1987 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. IMAGE ILLUSTRATION: ©1987 YOSHITAKA AMANO



最新作である 『ファイナルファンタジーXV』まで、
『FINAL FANTASY』 シリーズ関連の原画などが、約160点 (!) も出展されています。
それも、ゲームのパッケージやフィギュアとともに。




『FF』 ファンだけでなく、『FF』 を一度でもプレイしたことがある人には、胸アツな展覧会です。
個人的には、小学生時代に 『ファイナルファンタジー5』 をやりこんだ口なので、
バハムートやリヴァイアサンといった召喚獣の原画が観られただけで、バーサク状態でした。




さてさて、今この記事を読まれている方の中には、
『FF』 をプレイしたことがない、そもそもゲームに興味がない方もいらっしゃることでしょう。
そんな方でも、きっとこの展覧会は楽しめるはず。
ぜひ、“単なるゲームの原画” という色眼鏡を外して、
純粋に、天野喜孝さんのアート作品として鑑賞してみてくださいませ。




繊細な色彩やタッチ、オリジナリティあふれる世界観。
幻想画、あるいは神話画としてのクオリティに驚かされるはずです。
現在の日本で、天野喜孝さんの右に出る幻想画家はいないのではないでしょうか。
モチーフにはそこまで共通点はないのですが、
作品の持つ雰囲気は、ルドンと通ずるものを感じました (※個人の感想です)。


また、展覧会の後半では、現代芸術家としての天野喜孝さんにスポットが当てられています。
浮世絵をイメージソースにしたという 《CandyGirl》 シリーズをはじめ、



《CandyGirl》 2014年 500×500×100mm オートモーティブペイント アクリル、アルミパネル
©YOSHITAKA AMANO



『FF』 シリーズとは世界観がガラッと違う、
キッチュでポップなアート作品が多数紹介されていました。




記事の画像では上手く伝わらなくて恐縮ですが、
実際のこれらの作品は、表面がもっとキラキララメラメと輝いています。
その秘密は、車やオートバイのコーティングと同じ技術が使われていることにあるのだとか。
『FF』 の原画の淡い印象とは対照的に、オリジナル作品は物質感を強く主張していました。
2つの天野喜孝さんの世界を対比して観るのも一興です。
星


ちなみに、会場の中間には、ファンタジーコリドーなる空間がありました。




こちらは、通路を利用した映像空間で、
床面と左右の壁に、天野さんが生み出したキャラクターの映像が次々と映し出されます。
映像は前からビュンビュンと流れる速さでやってきて、勢いよく後ろの方へ。




映像の進行方向と鑑賞者の進行方向が真逆なので、
前に向かって歩いているはずなのに、あまり進んでいないような幻想的な感覚に。
ある意味、これもファンタジーでした。


 ┃会期:2018年8月10日(金)~9月2日(日)
 ┃会場:サンシャインシティ文化会館ビル3F展示ホールC
 ┃
http://amano-exhibition.jp/

~読者の皆様へのプレゼント~
こちらの “天野喜孝の世界展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、8月20日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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標本の世界 鳥

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文京区・湯島にある文京区教育センターに行ってきました。




こちらの2階で、現在開催されているのが、“標本の世界 鳥” という展覧会。
東京大学総合研究博物館が企画・監督したもので、
東京大学が古くから集め続けてきた鳥類標本を紹介する展覧会です。




会場にひとたび足を踏み入れると、たくさんの鳥類標本が目に飛び込んできました。
と、同時に獣臭 (鳥臭?) が鼻に飛び込んできました。




もっと換気のいい場所で鑑賞していたからなのか、はたまた、単純に密集度のせいなのか。
鳥類標本の臭いを感じたことは、これまで一度もなかったのですが。
今回、鳥類標本の臭いを初体験しました。
貴重なデビューです (←?)。


会場内に1台だけあるモニターに、時々、鳥の標本に関する解説映像が再生されますが。
それ以外は、特に解説はなし。
キャプションも、鳥の和名と学名だけのシンプルなもの。




全体的にざっくりした展覧会でした。
さすがに序文のパネルはありましたが、その内容もまたざっくり。




「古今東西を問わず、鳥は人々の敬意を集める存在である。」 と、
冒頭にありましたが、鳥って、そんなに敬意を集めてましたっけ??
『鳥頭』 とか 『チキン野郎』 とか、悪口に使われることが多いような・・・。
と、展覧会がざっくりしている以上、
開き直って、僕もざっくりと楽しむことにしました。
まぁ、無料ですし。
星


鳥類標本とは、鳥が地面を歩いている、
もしくは、木や岩肌に止まっている時の姿を復元したものとばかり思っていましたが。





完全に死体にしか見えない鳥類標本も多々ありました。




逆に、香港映画のワイヤーアクションばりに躍動感溢れる鳥類標本も。




鳥類標本も、掘り下げると奥が深そうです。
また、純粋に造形として面白い鳥も多く発見しました。
個人的にイチオシは、オオフウチョウです。
溢れるタカラジェンヌ感。




それと、ヤクシャインコです。




どのあたりが、“ヤクシャ” なのか、
例によってキャプションがないので、不明でしたが。
カラーリングは、アベンジャーズの何かしらのヒーローっぽいです。
ハリウッド方面の役者なのでしょう。


他にも、ネーミングで気になった鳥は、こちらのカワリクマタカ。




どこがどう変わっているのか?
さすがに気になって、鳥博士の髙橋君にLINEしてみました。
すると、

「日本のクマタカと違うってことで、変わりクマタカって意味だったはず」

との回答が返ってきました。
日本のクマタカが基準で、それと違ったら、変わり者。
何て偏見に満ちたネーミングなんだ!
カワリクマタカから見たら、日本のクマタカが “変わりクマタカ” だろうに。

もう一つネーミングで気になったのが、チャイロカッコウハヤブサ。




カッコウみたいな模様をしているハヤブサだから、カッコウハヤブサなのでしょうが。
「鳥を鳥で例えるなよ!」 と言いたい。
糸井重里くらいのネーミングセンスを持った鳥類学者はいないのでしょうか?


ちなみに、展覧会を観終わった後、
会場入り口付近をふと見ると、そこには感想ノートがありました。




そこにあった一文に激しく同意。
確かに、僕も全く同じことを思いました (笑)






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文豪・泉鏡花×球体関節人形 ~迷宮、神隠し、魔界の女~

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この夏、弥生美術館で開催されているのは、
”文豪・泉鏡花×球体関節人形 ~迷宮、神隠し、魔界の女~” というちょっと妖しげな展覧会。




独特な文体と幻想的な世界観で近代小説史に異彩を放つ小説家・泉鏡花、
その作品に登場するヒロインたちを球体関節人形で表現するという斬新な展覧会です。
制作したのは、球体関節人形の草分け的な存在である吉田良さんと、彼の指導を受けた作家たち。
すべて、この展覧会のために制作されたオリジナルの人形です。


例えば、こちらは、泉鏡花の代表作の一つ 『高野聖』 の世界観を、吉田良さんが人形化した作品。


「高野聖」泉鏡花/作 吉田良/人形、写真


主人公の若い僧を誘惑する美女がモデルです。
小説を読んだ方はご存知でしょうが、
この美女の正体は、旅人たちを動物に変えてしまう魔性のもの。
吉田さんの球体関節人形は、それを見事に表現していました。
見目麗しくて、官能的。
少しだけはだけた肩に、思わずドキッとさせられます。
しかし、目を覗き込むと、その奥に不気味な光が宿っていました。
「この世のものでない!」 と本能的に直観。
“蛇に睨まれた蛙” 状態となりました。
(↑あ、蛙に変えられてしまいましたね)

冷静に考えれば、人形なわけですから、この世のものではないのですが。
「この世のものでない!」 と感じたということは、
逆説的に言えば、それだけ血が通った人間のように感じられるということ。
特にそう感じたのは、愛美さんが 『琵琶伝』 をモチーフに制作した人形です。


「琵琶伝」泉鏡花/作 愛実/人形 吉田良/写真


『琵琶伝』 は読んだことがないのですが、なかなかに衝撃的な物語。
主人公のお通は、陸軍尉官の近藤と結婚する。
しかし、お通には、謙三郎という相思相愛の男がいた。
ある日、徴兵されることとなった謙三郎は、一目会いたいとお通のもとへ。
ところが、近藤に幽閉されていたお通には会えず、
さらに、脱営などの罪により近藤に捕らえられてしまう。
謙三郎との仲を知っていた近藤は、お通の目の前で謙三郎を銃殺刑に。
お通は生きる気力を失ってしまう。
その一か月後、お通が謙三郎の墓を訪れると、そこに近藤が現れる。
そして、謙三郎の墓を蹴り飛ばし、唾を吐きかけたのであった。
それを見たお通は、ついに怒りが爆発し、近藤の喉笛を食いちぎったのだそうな。
人形で表現されているのは、まさに、その後のお通。
生きているのに死んでいるような表情。
一線を超え、人間ではなくなってしまったかのような表情が、絶妙に表現されていました。


ちなみに、お恥ずかしながら、人形に疎いため、
球体関節人形=リアルな人形とばかり思っていたのですが。
展覧会に出展されていた球体関節人形の数々を見て、認識を新たにしました。
SFチックなタイプの球体関節人形であったり、


「夜叉ヶ池」泉鏡花/作 橘明/人形 吉田良/写真


ファンシーなタイプの球体関節人形であったり、


「茸の舞姫」泉鏡花/作 ホシノリコ/人形 吉田良/写真

 
いろんなタイプの球体関節人形がいるのですね。
今日の今日まで僕の中で、球体関節人形とラブドールが、ごっちゃになっていました (恥)。

作風として、個人的に一番惹かれたのは、三浦悦子さん。


「化鳥」泉鏡花/作 三浦悦子/人形 吉田良/写真


どこかヤン・シュヴァンクマイエルに通ずるようなところもあり。
どこかムットーニさんに通ずるようなところもあり。
けれど、どの作品も、他のアーティストとは決定的に違う唯一無二の世界観を確立していました。
彼女の作品そのものが、1篇の小説のよう。
物語が紡がれているかのようです。
観る、というよりは、読む人形作品でした。


さてさて、弥生美術館と言えば、挿絵をテーマにした展覧会を多く開催してきた美術館。
今回の展覧会にも、鏑木清方や小村雪岱らによる、泉鏡花の小説の挿絵ももちろん紹介されています。
同じ小説でも、挿絵と球体関節人形とで、
これほどまでに表現が違うものなのかというのを見比べてみるのも、また一興。
チャレンジングながらも、決して単なるイロモノではない展覧会でした。
星星




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落合芳幾

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現在、練馬区立美術館にて、月岡芳年の大々的な回顧展が開催されていますが。
その兄弟子にに当たる落合芳幾にスポットを当てた展覧会が、現在、太田記念美術館で開催中です。




弟弟子の月岡芳年や、師匠の歌川国芳は、
ちょくちょくスポットを浴びているというのに。
これまでスポットを浴びる機会がほとんどなかった落合芳幾。
浴びたとしても、月岡芳年や歌川国芳のバーターで紹介される機会の多かった落合芳幾。
そんな落合芳幾の画業に迫る日本初の・・・いや、世界初の展覧会です。
星


落合芳幾といえば、やはり代表作は、月岡芳年と競作した 《英名二十八衆句》
“血みどろ絵” “無惨絵” の代表作としても知られるシリーズです。


落合芳幾 《英名二十八衆句 佐野治郎左エ門》(個人蔵)


今回の展覧会では、シリーズ全28点のうち、
落合芳幾が手掛けた14点すべてがそろい踏み。
スプラッター映画ばりの血液ブシャーな作品が多いので、心臓の弱い方はどうぞご注意くださいませ。
かくいう僕も血が苦手なので、顔を両手で覆い隠しつつ、指と指の間からチラチラ鑑賞しました。
その中で特にまぶたの裏に焼き付いているのが、《英名二十八衆句 西門屋啓十郎》 です。


落合芳幾 《英名二十八衆句 西門屋啓十郎》(個人蔵)


西門屋啓十郎は、曲亭馬琴作の 『新編金瓶梅』 の主人公。
尼の陸水の所持金が欲しかった啓十郎は、マサカリで彼女の首をスパーン!
切断面から、血がピューピュードバドバ。
残酷この上ないシーンです。
しかし、実は、このシーンは、陸水が啓十郎に見せた幻術なのだとか。
なんだ!現実じゃないんだε-(´∀`*)ホッ
夢オチのようなもの。


さらに、今回の展覧会では、落合芳幾のライフワークとして知られる、
東京日日新聞 (現在の毎日新聞の前身) という錦絵新聞も数点まとめて紹介されています。
錦絵新聞とは、話題性の高い記事をビジュアル化 (=錦絵化) したもの。
当然、基本的には、世間を騒がすような事件や事故などが取り上げられていますが。
中には、「・・・それ、取り上げるほど??」 と思わず首を傾げたくなるような記事もありました。
例えば、《東京日日新聞 四百四十五号》


落合芳幾 《東京日日新聞 四百四十五号》(千葉市美術館蔵)


明治6年8月4日のこと。
梅村豊太郎なる男性が地震で目を覚ましたところ、そばで寝ていた子供が泣き始めたそうな。
枕元に目をやると、そこには、なんと三つ目の妖僧が!
しかも、その頭がみるみると伸び、天井を突き抜けました。
しかし、豊太郎は特に驚くことなく、冷静に妖僧を打ち倒します。
すると、歳を取った狸が現れたのだとか。
三つ目の妖僧の正体は、古狸だったのですね・・・・・・・って、どんなニュースだよ!

さらに、もう一発。


落合芳幾 《東京日日新聞 六百九十七号》(太田記念美術館蔵)


志摩国 (今の三重県) の甲賀の浦で起きた事件が紹介されています。
とある船が火事に見舞われてしまい、乗組員たちは海中に逃げ込んだそうです。
そこに現れたのが、大ザメ。
なんと乗組員全員を呑みこんでしまったのだとか。
まさか、日本にそんなUMAがいたとは。
新聞というよりも、ムーの記事。


また、今回の世界初の落合芳幾展では、
これまであまりフィーチャーされなかった落合芳幾の一面も紹介されています。
血みどろ絵のイメージが強いですが、実は、師匠の国芳譲りのユーモアセンスの持ち主。
思わずクスッとなるような作品も、意外と多く発表していました。
個人的にお気に入りなのは、《善悪思の案内》 という作品。


落合芳幾 《善悪思の案内》(太田記念美術館蔵)


遊郭の甘い誘惑に心を迷わせる男性。
“行っちゃおうかなぁ?いや、ダメだダメだ!今日は行かないゾ”
心の中の天使と悪魔ならぬ、善と悪が戦っています。
しかし、悲しいかな。
善に比べて、悪のほうが圧倒的に数が多い!





悪の数的優位。
善に勝ち目はありません。
誘惑に負けるのは確実でした。


それと、インパクトが強かったのは、《時世粧年中行事之内 競細腰雪柳風呂》 という作品です。




銭湯の様子を描いた作品。
裸の女性がいっぱい登場しているので、ムフフな絵なのかと思いきや、お色気要素はゼロでした。
何が理由なのかは不明なのですが、素っ裸で大暴れしている女性が描かれています。
それに驚く女性。必死になだめようとする女性。巻き込まれて転ぶ女性。
その様子を覗きに来た男性・・・・・って、えっ?男性?!
このあと、もっと大きな騒動となることでしょう。


最後に、個人的にもっとも気になった一枚をご紹介。
《今様疑源氏 二十一 乙女 浦島太郎》 です。




玉手箱を開いた浦島太郎。
すると、箱の中から煙が立ちあがり、その煙に触れた部分だけがお祖父さんに!
何そのシステム (笑)!
もうこうなったら、全身に煙を浴びるしかないです。
今のままだと、頭頂部だけお祖父さんという何とも気持ち悪い姿になってしまいます。
乙姫様も何でこんなものをお土産にくれたというのか。
罪な女です。




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何も言えなくて…夏

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声が出なくなって、1週間以上が経ちました。


異変が始まったのは、先週の木曜日。
数年ぶりに体調が悪くなり、大事を取って早めに横になることにしました。
で、その翌日。
体調はなんとか回復したものの、声がカスッカスに!
とは言え、喉を使う仕事ゆえ、声が掠れることは、ごくたまにあります。

“まぁ、龍角散のど飴を舐めてれば、元に戻るだろう”

と軽く考えて、様子を見ながらも、いつもと変わらない日々を過ごしていました。

が、しかし!

全然、治る気配がありません。
それどころか、どんどんと声が掠れていきます。
声というよりは、もはやノイズ。
若い人にしか聞こえない音みたいな感じになってしまいました。
そんな絶望的にもかかわらず、日曜には大仕事が控えています。
それは、TBSラジオ 『笹川友里 プレシャスサンデー』 の生出演。
この夏、おすすめのアートスポットを紹介するという大役です。
しかも、出番は約30分。
日曜の朝から、リスナーの皆さまにノイズを聞かせるわけにはいきません。

それまでには、なんとしてでも治さねば!

プロポリスを舐めたり、はちみつ大根を作ったり、
ネギをいっぱい食べたり、オリーブオイルを飲んだり。
喉に良いとされるありとあらゆることを試し、土曜は就寝。
翌朝目覚めると、ギリギリ声が出せるまでには回復していました。

『プレシャスサンデー』 には、3回目の出演とあって、
ディレクターさんも放送作家さんも、そして、笹川友里さんも僕の喉を心配してくれたのですが。
ラジオに出してもらう以上、僕の中の監督 (?) が、「(喉を) 潰してこい」 と指示。
約30分間、全力でプレーしてきました。
その死闘の模様 (?) を聴きたい方は、こちらから↓
http://radiko.jp/#!/ts/TBS/20180812090150


放送は気合でなんとか乗り切りましたが、
ラフプレーがたたったのでしょう、放送終了後、声が全く出なくなってしまいました。
さらに、飲み物を飲み込めないほどの痛みも発症。
とに~の喉史上、かつてない大惨事です。
さすがにマズいと思い、翌日、病院へ。

結論から言うと、声帯白板症と診断されました。
声帯が硬くなり、白い膜が出来てしまっているそう。
まれに癌化することもあるので、
くれぐれも数日間、絶対に声を出さないように、と念押しされました。


ということで、今週は声を極力出していません。
アートテラーから喋ることを取ったら、ただの人です。
ただの人として、一週間を過ごしています。
声を出せない生活が、こんなにも辛いとは。。。
お茶漬け生活や “絵画に描かれた食べ物だけで1週間過ごす生活” のが、全然マシです。


ただ、昨日くらいから、ようやく回復の兆しが!
少しずつ声が出るようになってきました。
今日は7割程度まで回復。
この調子でいけば、明日の 『クイズ!版画キングダム』 までには、ある程度元に戻りそうです♪
もともと楽しみにしていた企画ですが、
久しぶりに声が出せるとあって、いつになくワクワクしていますし、気合が入っています。
今週は他の仕事ができなかったので、ほとんどこのクイズ作りに費やしていました。
景品も豪華なので、是非、皆様のご来場をお待ちしております!


皆様も体調にはご自愛くださいませ。




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にじいろのさかな原画展~マーカス・フィスターの世界~

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展覧会あるあるを一つ。

夏休み期間は、絵本の原画展が開催されがち

今年も、日本各地で絵本の原画展が開催されています。
ただ、そろそろネタ切れになってきたのでしょうか。
ピーターラビットエリック・カールと比べてしまうと、
そこまでメジャーではない絵本 (作家) にまで、手を出しているように思えます。
現在、川越市立美術館で開催中の展覧会も、その一つ (←?)。
9月9日まで、“にじいろのさかな原画展~マーカス・フィスターの世界~” が開催されています。




こちらは、世界中で3000万部以上も読まれる大ベストセラー絵本、
マーカス・フィスターによる 「にじいろのさかな」 シリーズの原画展。
それほどの大ベストセラーにもかかわらず、
お恥ずかしながら、絵本も作家も存じ上げませんでした。
ただ、第一作が発表されたのは、1992年とのこと。




その時、僕は9歳。
絵本はとっくに卒業していました。
(『ズッコケ三人組』 シリーズにハマっていた頃です)
知らないのも当然です。
おそらく30歳以下の人ならば、懐かしむことができるのでは?
星


というわけで、僕は全くの初見だったのですが。
水族館が好きなこともあって、わりと純粋に楽しめました。
「にじいろのさかな」 の絵本の最大の特徴は・・・




特殊な印刷技術によってウロコやヒレがキラキラしていることです。
キラキラしたウロコを持つこのシリーズの主人公の名前は、その名もズバリ “にじうお”。
記念すべき第一作をかいつまんで説明すると、こんなお話です。

ある日、キラキラしたウロコが自慢の “にじうお” のもとに、
小さな青い魚がやってきて、その綺麗なウロコをくれないか、と言いました。
しかし、ウロコをあげたくない “にじうお” は、その魚を追い払ってしまいます。
この話はすぐに海中に広まり、誰も “にじうお” に近寄らなくなってしまいました。
独りぼっちになった “にじうお” は、賢いタコにアドバイスを求めます。
タコは “にじうお” に、こう言いました。

「ウロコをみんなに分けてあげなさい。きっと幸せになれるでしょう」

と、そこに先日の青い魚がまた現れました。
“にじうお” は、タコの助言に従って、青い魚に小さなウロコをあげることにしました。
すると、青い魚はとても喜んでくれました。
その様子を見た “にじうお” は、集まってきた他の魚たちにも、自分のウロコを分け与えるように。




そして、ついには、“にじうお” のウロコは1枚だけになってしまいます。
それでも、幸せな “にじうお” は、他の魚たちと一緒に仲良く遊びましたとさ。
めでたしめでたし。


・・・・・・・・・・・・。

いろいろとツッコミどころの多いお話でした。
まず、“にじうお” の “にじうお” たるキラキラしたウロコ、
“にじうお” のアイデンティティともいうべきウロコを、そんなに簡単に取り外していいものなのか。
結局キラキラしたウロコが1枚しか残ってない “にじうお” は、もはやただの “うお” なのではないか。
1枚でも “にじうお” というなら、ウロコをもらった魚もまた “にじうお” なのではないか。
そもそもキラキラしたウロコに釣られて、つるんでいる魚たちは、本当の友だちなのだろうか。
可愛らしい絵柄ながら、いろいろと考えさせられます。
そういう意味では、確かにイイ絵本なのかもしれません。


ちなみに、展覧会では、そんな第一作から、
最新作である 「まけるのも だいじだよ にじいろの さかな」 まで。





シリーズ全作の原画が紹介されています。
「にじいろのさかな」 ファンならば見逃せません。
さらに、4面の壁と床を使った体験型の映像コーナーも用意されていました。




まるで海の中にいるよう!
そう思って、ふと見上げてみると・・・




たくさんのプロジェクター。
そして、複雑に絡み合った無数の配線。
まさにタコ足。
海だけに。




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タヌキとキツネ展~タヌキ山にようこそ!~

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つい先日、池袋パルコに立ち寄ったところ、
パルコミュージアムで、“タヌキとキツネ展~タヌキ山にようこそ!~” なる展覧会が開催されていました。




タヌキとキツネと聞いても、マルちゃんのうどんくらいしか思い浮かびませんが。
絵柄の可愛さに惹かれて、とりあえず何もわからぬまま、
まさに、キツネにつままれたような気持ちで、会場に入ってみることにしました。

会場でわかったのは、『タヌキとキツネ』 は、
どうやら漫画家のアタモトさんによるコメディ漫画のようです。
タヌキ山で暮らすちょっと抜けてるタヌキと、
そんなタヌキにちょっかいを出すいたずら好きのキツネのやり取りが中心に描かれているそう。
もともとは、Twitter上で発表された漫画だそうで、
2万RT越えもするほどの人気を博し、今では書籍化&グッズ化もされているほどなのだとか。





さらには、公式YouTubeチャンネルでショートアニメ化もされているとのこと。
展覧会場の特設コーナーでは、その第1話から第12話までがループ再生されていました。




SNS上で発表された漫画という性質からか、
いわゆる漫画の展覧会のように、原画は展示されていませんでした。
今どきの漫画展は、こういう感じなんだと新鮮に感じる一方で、
“展覧会まで来て、わざわざプリントされたパネルを観るのはなァ” とモヤモヤする気持ちもありました。
まるで、タヌキに化かされたような気分です。


ただ、肝心の 『タヌキとキツネ』 の漫画自体は、面白かったです。
タヌキとキツネのゆるいやり取りに、ほっこり癒されました。
基本的には、キツネはタヌキにいじわるをするのですが、たまに優しさを見せます。
その時に、思わず胸キュン。
このツンデレめ!
会場を出るころには、すっかり 『タヌキとキツネ』 のファンに。
早速、LINEスタンプをダウンロードしてしまいました (笑)
星


個人的には、漫画の展覧会としては、やや物足りなさは感じましたが。
フォトスポットが充実していたので、
ファンの皆さまは、それなりに楽しんでいるようでした。





木の穴にスッポリとハマったタヌキとキツネが、特に人気の様子。
皆さま、前に回ったり、後ろに回ったり、ベスポジを探しながら、写真に収めていました。
まぁ、かくいう自分も必死にベスポジを探しましたが。





ちなみに、余談も余談ですが。
高校生の時、友人や先輩から、
「とに~って、なんかタヌキに似てるよね」 と、よく言われたものです。
そのたびに、全力で否定しました。
自分はタヌキではない。
そう何度も全力で否定したのは、きっと僕がドラえもんくらいなことでしょう。
イジられ役のタヌキを見て、ふとその時のことを思い出しました。
そんな夏の一日。




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そっくり展

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“タヌキとキツネ展” の会場を抜けると・・・




そこは、“そっくり展” の入り口でした。

入り口からして、怪しいニオイがプンプンしています。
入場料は800円。
決して、安い金額ではありません。
入るべきか。それとも、引き返すべきか。
さんざん悩んだ末に、入ることに決めました。
「何もしないで後悔するよりも、やって後悔するほうがいい」 というヤツです。

で、こちらが会場の入り口。




しかし、待てど暮らせど、ドアが開きません。
“なんで??”
そう思って、よくよくドアを見てみると・・・




手動でした。

“なぁんだ。自動と見せかけて、手動だったのか!こいつは一本取られたわい。”

となるのが、正しい反応なのでしょうが。
僕は、ただただイラっとしただけでした。
そんな手動ドアを開けると、まず展示されていたのは、
本物そっくりの食べ物を作る木彫り作家・川崎誠二の作品群。
板から作った板チョコや、




流木から彫り出したポッキーなどが紹介されています。




さらには、本物そっくりのポテトチップスも。
ちなみに、左は本物のポテトチップスです。




巧く作られていますし、ユーモアもあるのですが。
本物そっくりの木彫といえば、前原冬樹さんの超絶的な一木造りの作品で、
すでに何度も驚かされ、免疫ができているため、そこまでのサプライズは感じられませんでした。
決して、川崎さんが悪いわけではないのですが・・・。


今回の参加アーティストの中で、個人的にヒットだったのは、
メカニカルミュータント (機械昆蟲) を制作する宇田川誉仁さん。




全男子が少年の頃に心をときめかせた (?) ゾイドを彷彿とさせる世界観がありました。
ただ、“そっくり” といえば、モデルとなる虫に “そっくり” ではありますが、
機械昆蟲自体は、完全なるオリジナル作品なので、“そっくり” という定義でよいのでしょうか。
ちなみに、食虫植物のウツボカズラをモチーフにした作品もありました。




こちらに関しては、もはやウツボカズラの原型がほとんどありません。
一体、何と “そっくり” なのでしょうか。

それから、もう一つ個人的にヒットだったのが、
日本におけるアンビグラム作家の第一人者、野村一晟さんの作品です。
アンビグラムとは、逆さまにしても読める文字のこと。




例えば、『ほんもの』 という文字を、逆さまにしてみると・・・




『にせもの』 となりました。
言葉の意味も、逆さまになっています。

また例えば、




『努力』 という文字を、逆さまにしてみると・・・




『才能』 となりました。
どんな努力をして、才能を磨いたら、
このような摩訶不思議なアンビグラム作品が作れるのでしょうか。
想像だにできません。

個人的にお気に入りなのは、『もりかけ』。




ひっくり返すと・・・




『かごいけ』 となりました。
若干旬は過ぎていますが、社会派な作品です。

作品としては、大変楽しめたのですが、
冷静になって頭をよぎったことが一つありました。
これって、何が “そっくり” なのでしょう・・・。
“そっくり” って何かね??


展覧会では、アート以外の “そっくり” も紹介されていました。
例えば、メキシコ歌曲 『エル・カスカペル』 をはじめ、




あの有名曲と “そっくり” な (元ネタ?) な曲を紹介するコーナーがあったり、




ブランドものの “そっくり” を本物と併せて紹介するコーナーがあったり、




クオリティが低すぎる 「そっくりさん写真コンテスト」 コーナーがあります。




全体的に漂うB級感。
正直、「僕は何を見させられてるんだろう・・・」 という気持ちは拭えませんでした。
極めつけは、ダメ人間の部屋を “そっくり” に再現したコーナーと、





意識高い系の部屋を “そっくり” に再現したコーナー。




声を大にして言いたいです。
「何じゃそりゃ!」 と。


これは展覧会だったのでしょうか。
いや、展覧会に “そっくり” な何かだった気がします。
ほし (星なし)




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新・無料で観れる 美術百選 《ジュエリーブリッジ(東京都台東区)》

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昨年、上野の東京都美術館に、ブリューゲルの 《バベルの塔》 が来日して話題となりましたが。
実は、上野駅のほど近くに、
かねてより、「バベルの塔」 をモチーフにした美術作品が存在しているそうです。

“えっ?どこに?!”

その真偽を確かめるべく、上野駅へと急行しました。
なんでも上野駅から延びるペデストリアンデッキに、その作品はあるようです。




ひときわ目立つこのオブジェは・・・どう見ても、「バベルの塔」 と関係はなさそうですね。




関係ないとはいえ、これほど大きな作品です。
作者の名前やタイトルが記載されたキャプションはないかと、
念のため探してみましたが、周囲にはそれらしきものはありませんでした。
名もなきアーティストの名もなき作品のようです。
その代わりに、作品の足元にこんなプレートが設置されていました。




・・・・・・・・ジュエリーロード??

すぐにスマホでググってみたところ、
どうやら、このペデストリアンデッキの名前が、ジュエリーロードというそうです。
10年以上、上野に通っていますが、初めて知る事実でした。

そんなジュエリーロードを散策していると、ようやくそれっぽい作品を発見!




確かに、「バベルの塔」 です。




ケースの隅に目をやると、そこに作品のキャプションがありました。




新・無料で観れる 美術百選 082  飯野一朗 《アリ・アリング》


作者は、飯野一朗さん。
東京藝術大学の工芸科で、40年にわたって彫金を指導し、昨年退任された彫金家です。
ということは、「バベルの塔」 を登る金色の蟻は、彫金で制作されているということですね。





数匹程度いるだけかと思いきや、結構な数の蟻がいます。
ちょっと気持ち悪くなるくらいに、ワラワラといます。





これを1つ1つ彫金で制作したとは!
よほど働きアリのように打ち込んで制作されたのでしょう。
飯野さんの苦労が偲ばれます。

ちなみに、作品の世界観が完璧だっただけに・・・




ケース内に設置されたドライペットが邪魔で仕方なかったです。
湿気を取りたいにしても、他のものがあるでしょうに。
ドライペットは、アリかナシかで言えば、ナシ。
ナシ・ナシングです。


<無料で観れる美術 データ>

ジュエリーブリッジ

住所:東京都台東区上野7-1
アクセス:○JR 「上野駅」 直結




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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!)
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度お送り頂けますと幸いです。


8/26(日) 一村だ!若冲だ!岡田美術館へ行こう!

現在、箱根小涌谷にある美の殿堂・岡田美術館では、
「昭和の若冲」「日本のゴーギャン」 と称された田中一村の特別展が開催中です。
現時点ですでに本邦初公開の作品が5点公開されていますが、
8月24日より、なんと田中一村の最高傑作と名高い 《アダンの海辺》(個人像) が公開されます!
これは行かねば!
是非、この機会にみんなで観に行きましょう!

当日は12時半に、箱根湯本駅に集合。
そこから、みんなで岡田美術館を目指します。
見どころは、田中一村展だけにあらず。
岡田美術館のコレクションには、若冲や北斎など他にもまだまだ名品がいっぱい。
それらの見どころも徹底的に解説させて頂きます。
途中疲れたら、足湯カフェでまったりいたしましょうおんせん

基本は、現地解散となっていますが。
希望者がいらっしゃいましたら、帰りは東京方面までご一緒いたします。
都心から箱根はちょっと遠いですが、夏休み最後の小旅行気分を味わえるアートツアーです。

時間:12時半~17時
定員:12名
参加費:2500円 (展覧会の鑑賞料を含む。普通に観るよりも300円お得です)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/2(日) 白金台ミステリーアートツアー

どこを訪れるかは当日までのお楽しみ。
毎回好評のミステリーアートツアーの最新作!
今回は、白金台近辺のアートスポットを巡ります。

さてさて、全くのミステリーですと、
参加するのを躊躇してしまうと思うので、当日訪れる場所を一か所だけご案内。
今回のゴール地点は、今年完全リニューアルオープンを果たした東京都庭園美術館です。
こちらでは、現在、“ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力” が開催中。
日本初公開となるブラジル先住民の椅子コレクションをテーマにした展覧会です。
ゆるカワな椅子は必見!
世界的建築家・伊東豊雄氏による会場構成も必見です!

当日は、東京都庭園美術館以外に、2つのアートスポットを巡ります。
学芸員さん、館長さんによる特別ガイド付きですので、どうぞお楽しみに!
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

時間:13時~18時
定員:10名
参加費:2000円 (展覧会の鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/8(土) 史上最強の銀座ギャラリーツアー!

「銀座のギャラリーを巡ってみたーい!」


・・・・・でも。

“たくさんありすぎて、どこに行けばいいのかな?”
“敷居が高そうだし・・・(´・ω・`)”
“無理やり買わされたら、どうしよう・・・(´□`。)”

そう躊躇している皆様、お待たせいたしました!
こちらは、アートテラーとして自信を持って、
「これぞ、銀座のギャラリー巡りの決定版!」 とお届けするツアーです。

これまでにも同コンセプトのツアーを何度か開催していますが、今回はそのパワーアップ版!
さらに厳選を重ねたギャラリーの数々をご紹介させて頂きます。
いつもお世話になっているギャラリーから、
銀座に行ったら絶対に訪れておきたい老舗ギャラリーに、
有名ブランドのギャラリー、そして、隠し玉のギャラリーまで、時間の許す限りご案内いたします。

一級品のアートに出逢えるのは、もちろん。
キャラの濃ゆいギャラリストさんにも出逢えますので、楽しい話や裏話にもご期待ください!
楽しい上に、ギャラリーでのhow toも身に付いてしまう一石三鳥なアートツアーです。

時間:13時~17時半
定員:10名
参加費:1000円

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
http://arc-tour.org/mail.html


9/22(土) そうだ 江戸、行こう。【江の島編】

“浮世絵に描かれた街並みは、今、どのような姿になっているのでしょうか?”

浮世絵を手掛かりに、街をぶらぶら歩きながら、
江戸時代にタイムスリップする・・・気持ちになれるツアーです。
講師の太田記念美術館の渡邉晃学芸員とともに、
浮世絵に描かれた場所に実際に赴き、現在の光景と見比べてみましょう!


さて、今回の舞台は、江の島。
年間に1300万人が訪れるという日本屈指の観光地です。
実は、江戸時代も江の島は観光地として大人気!
江の島詣でブームが起こり、多くの江戸の庶民がに訪れたのだとか。
そんな人気スポットだけに、江の島を描いた浮世絵も数多く出版されたそうです。

今回は、それらの浮世絵を手掛かりに、江の島を散策いたします!
江ノ島の中心となる江島神社をもちろん、
江戸時代から続く老舗や洞窟など、浮世絵や古地図に登場するスポットを徹底的に巡ります。
歴史散策あり、観光あり、絶景ありのツアーです。
僕と渡邉学芸員の漫才の掛け合いのようなガイドも合わせて、どうぞお楽しみに(笑)♪

時間:12時半~17時半
定員:12名
参加費:2000円
(“そうだ 江戸、行こう。” は、おかげさまで特に人気が集中しております。
“そうだ 江戸、行こう。” に初参加の方、
もしくは今年4月以降に、“そうだ 江戸、行こう。” 以外のアートツアーへご参加頂いた方のみの受付となります)



ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
http://arc-tour.org/mail.html


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

田中偉一郎の芸術放題

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学芸大学駅から徒歩5分。
五本木の交差点のほど近くに、ちょっと目立つビルが建っています。




そのビルの1階にあるのが、ちょっと変わった名前のギャラリー。
その名も、にほん文化センターです。




とは言っても、「♪ニィニィニィニィ 日本文化センター」 の日本文化センターとは関係ない模様。
こちらは、ひらがなで 『“にほん” 文化センター』 です。

ギャラリーに近寄ってみると、こんな幟が風にはためいていました




何やら面白そうな予感がします!
これは入ってみるしかありません。




開催されていたのは、“田中偉一郎の芸術放題” という展覧会。
くだらないアート作品 (←誉め言葉です!) を作らせたら、
おそらく右に出るものはいないであろうアーティスト田中偉一郎さんの最新個展です。
会場に入ると、まずは代表作の一つ 《ストリート・デストロイヤー》 シリーズがお出迎え。




この写真だけ見ると、田中偉一郎さんはかなりの暴れん坊のように思われたでしょうが。
そうではありません。
街中で見かけた道路のヒビ等に対して、
殴る掻きむしるといったポーズを取り、あたかも街を破壊しているように見せているのです。
ちなみに、《ストリート・デストロイヤー》 シリーズは、インスタグラムが流行る前から発表されています。
インスタ映えを先取りしていた作品といったら言い過ぎでしょうか (←言い過ぎ!)
ちなみに、僕のお気に入りは、こちらの1ショット。




もはや清々しく感じるほどのバカバカしさがあります。
どことなく、『浦安鉄筋家族』 に通ずるような笑いのセンスを感じました。

この他にも、将来、子どもが出来たら付けようと考えている名前を先に表札にした 《子づくり表札》 や、




《民芸ロボシリーズ》 の 「だるまロボ1号」 と 「こけしロボ1号」、




auの三太郎のCMよりも前に発表されていた 《板Phone》 など、




田中偉一郎さんの代表作の数々が紹介されていました。
もちろん新作も発表されています。




白い壁にキャプションだけが設置されていました。

“あれっ?どこに作品が・・・??”

と思ったら、このキャプション自体が作品なのでした。




タイトルはずばり 《Caption Painting》
この斬新な発想は、どこから来るのか。
田中さんの発想力に、ただただ嫉妬してしまいます。


ちなみに、床に散らばっている紙も、それぞれ作品とのこと。
しかも、1枚あたり1000円で販売されていました。




一番気になったのは、『地名の動詞化』。




バカリズムさんのネタと通ずるものがありました。
なんとなくですが。


他にもいろいろと作品がありましたが、
個人的にイチオシなのは、やはり 《Signboard Painting ドッキリ大成功》 という作品でしょうか。




こんなプラカードを出されたら、
さすがに、「♪テッテレー」 とは、いきません (笑)
なんて壮大なドッキリなんだ。


とにかく、全力でくだらない展覧会でした。
もちろん、いい意味で。
たまには、こんなアートがあってもいいじゃないか。
そう心から思える展覧会です。
星
会期は、9月9日まで。




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ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ

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現在、世田谷文学館で開催されているのは、
“ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ” という展覧会。




松任谷由実、ピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギター、サザンオールスターズ…etc
名だたるミュージシャンのレコードやCDジャケットを、
数多く手がけてきたアートディレクター信藤三雄さんの大々的な回顧展です。
会場に入ると、そこかしこに 『ビーマイベイビー』 の文字が。





ビーマイベイビー、ビーマイベイビー、ビーマイベイビー・・・
COMPLEX状態です。




そのエリアを抜けると、そこには信藤三雄さんが、
これまでにアートディレクションを手掛けたポスターや、




レコードのジャケット、




さらには、CDのジャケットがびっしりと展示されています。





実は、この展覧会を通じて初めて、信藤三雄さんの存在を知ったのですが。
会場では、

“へ~。このCDジャケットを手掛けたのが、信藤三雄さんなんだ。えっ、このCDも?!”

を連発。




青春時代、信藤三雄さんがデザインを手がけたCDにだいぶお世話になりました。
この場を借りて、お礼申し上げます。

おそらく僕のように、信藤三雄さんを知らないという人はいらっしゃると思うのですが。
展覧会場には、一切、信藤三雄さんについての解説や紹介はありませんでした。
さらには、作品についての解説も全くありません。
どういう意図でデザインされたのか。
どういう時代背景の作品なのか。
なぜ、多くのアーティストが、信藤三雄さんにデザインを依頼するのか。
展覧会は何も教えてくれません。
信藤三雄さんの基本情報すら教えてくれません。
この展覧会で分かった唯一のことは、




信藤三雄さんは、あまり字がお上手ではない、ということでした。
きっと信藤三雄さんを知ってて当然という前提の展覧会なのでしょうね。

というか、そもそもなのですが。
信藤三雄さんの作品は素晴らしいのですが、
それはあくまでデザインのお仕事であって、「文学」 ではない気がします。
なぜ、世田谷 ‟文学” 館で、信藤三雄展なのでしょうか?
そのあたりの説明も、当然のようにありませんでした。
いろいろと疑問符が浮かぶ展覧会です。


ちなみに、個人的に印象に残ったのは・・・




今は無き8センチCDを紹介したコーナー。
そうそう。マキシシングルが発売される前は、この形でしたよね。
ケースを折ると、コンパクトになるんですよね。
もったいないから、ケースを折ったことはないですけれども。
あぁ、懐かしい!

そんな8センチCDを眺めていたところ、その中に、ICE BOXを発見。




そうそう。森永のICE BOXのCMのために生まれたユニットがいましたよね。
「♪キスが冷たいよ~ いつもと違うよ~」 って歌ってましたよね。
超懐かしい!


・・・・・なるほど。
この展覧会は、レトロスペクティブ、つまり過去を懐かしむ展覧会。
展示されている作品を、どれだけ懐かしめるのかがポイントです。
そういう意味では、1980~90年代に青春を過ごした人にオススメ。
星




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