今回ご紹介するのは、練馬区立美術館で開催中の “没後五〇年 松林桂月展-水墨を極め、画中に詠う” です。
こちらは、山口県立美術館、田原市博物館と巡回してきた美術展で、
昨年2013年で没後50年を迎えた日本画家・松林桂月 (1876~1963) の大回顧展です。
ちなみに、松林桂月をフィーチャーした大規模な展覧会が開催されるのは、約30年ぶり。
しかも、その30年前の展覧会が開催されたのは、山口県立美術館のみ。
都内で開催されるのは、実に半世紀以上ぶりなのだそうです。
さて、それだけに。
多くの方が、
「松林桂月って誰?!とりあえず、木偏が多いけど!」
と思っていることでしょう。
僕も、そうでした。
美術展の告知文には・・・
明治・大正・昭和の3つの時代を生き、数々の名作を残した近代を代表する日本画家です。
山口・萩に生まれた桂月は、幼い頃から絵を好み、
東京に出て文人画家・渡辺崋山の孫弟子にあたる野口幽谷に師事し、精緻で格調高い表現を学びました。
また、親しんでいた漢詩の教養を活かして、詩・書・画の三絶の境地を目指す文人画―南画を描いたことも特筆されます。
桂月は、南画の真髄ともいうべき水墨画においては他の画家の追随を許さず、
その独特の叙情的な作風は高く評価され、1958年には文化勲章を受章しています。
とあります。
おそらくスゴい人なのでしょうが、そこまでガツンと来るものがありません。
他にも行かないと行けない美術展があるので、
「今回はパスしようかなぁ・・・」 (←練馬区立美術館の皆様、ゴメンナサイ!) と一瞬考えてしまったのですが。
ポスターに使われている 《春宵花影》 を目にした瞬間、
(注:展示は5月11日までです)
「行かねば。」
と、思わされました。
画像で見るだけでも、十分にスゴい絵であることが伝わってきます。
その実物を目にした時の感動は、いかほどのものなのでしょうか。
そして、こちらが、その実物。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
思わず立ち尽くしてしまうほどスゴい絵でした。
モノクロの画面ではありますが、ところどころに胡粉が使われており、月明かりを見事に表現しています。
「スゴい」 というあいまいな印象ではなく、正確には、スゴ味のある絵という印象。
静謐な世界ながらも、
「上手い絵というのは、こういう絵だ!」 と有無を言わせないスゴ味を感じました。
ちなみに、こちらの絵は、ニューヨーク万博に出品された作品だそうで、アメリカ人に絶賛されたのだとか。
リアルに “全米が泣いた” 作品です。
さてさて、お目当ての 《春宵花影》 以外にも、スゴ味が感じられる松林桂月作品が多数ありました。
あまりにスゴ味がありすぎて、息が抜けないほど。
「もう少し手を抜いてもいいですよ(^^;)」 と言ってあげたいくらいです (笑)
どの作品も、とにかく細部まで神経が行き届いている印象を受けました。
なので、
作品のどの部分をテキトーに切り取っても、絵になってしまいます。
そんな描き込みがハンパない作品たちの中でも、特に記憶に残っているのが、 《愛吾盧》 です。
葉っぱの一枚一枚に至るまで、手を抜くことなく描かれています。
こんなにも密度が濃く感じられる絵には、初めて出合ったかもしれません。
よく見ると、画中の池には、睡蓮が。
それが、どうにもモネっぽかったです。
絵の一部で、モネの 《睡蓮》 を感じられるって、どんだけだ。
また、晩年の作品 《香橙》 でも、スゴ味は衰えていません。
たらし込みを活用して、少しはユルい味付けになっているとは言え、
それでも、細部にまで徹底的に神経が行き届けられているのは健在です。
いやはや、こんなスゴい日本画家がいたなんて。
まだまだ美術の世界には知らないことがいっぱいです。
そういった驚きも込めて2ツ星。
ちなみに。
松林桂月の妻・松林雪貞も日本画家。
奥様の絵も、スゴい。。。
何、この夫婦。
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没後五〇年 松林桂月展
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