~前回までのあらすじ~
日本全国にある国宝を全て目にする。
そんな前代未聞のプロジェクトに、ただ一人挑む国宝ハンターこととに~。
皆は、 「無茶だ」 と言った。
しかし、とに~は、言った。
「男なら、人生のうちに一度は無茶なことに挑むべきだ」
これは、国宝探しに、人生を賭けた男の物語である。 (『プロジェクトⅩ』 風)
埼玉県行田市。
ここに、 “100年に一度の大発見” と言われた国宝があるらしい。
そんな浪漫溢れる国宝を求めて、
行田駅から市内巡回バスに乗って、さきたま古墳群へ。
「せ・・・世界遺産??」
埼玉県民とは犬猿の仲である (?) 元・千葉県民としては、動揺を隠さざるを得ません。
いやいやいや、どうせ、そんなに大した古墳群じゃないんでしょ (笑)
・・・・・・・。
前言撤回。
スゴい古墳群でした。
この一角に、大型の古墳が9基も!
古墳って、こんなにも密集するものなのですね。
埴輪&将軍山古墳に感動。
夕陽@二子山古墳に感動。
僕on稲荷山古墳に感動。
…って、古墳に感動しっぱなしですが。
今回の真の目的は、この稲荷山古墳にまつわる国宝。
この稲荷山古墳の頂上には、こんなモノが。
こちらは、稲荷山古墳の埋葬施設。
1968年の発掘調査で発見されたモノなのだとか。
その時、この中から出土した多くの副葬品は、
一括して、 《武蔵埼玉稲荷山古墳出土品》 (ジャンル:考古資料) として、国宝に指定されています。
その 《武蔵埼玉稲荷山古墳出土品》 は、
同じさきたま古墳群の中にある埼玉県立さきたま史跡の博物館に所蔵されています。
入館料の200円を払って、早速、展示室へ・・・と、その前に。
写真撮影希望の方は、専用の紙に必要事項を記入し、撮影許可の腕章を借りましょう。
で、装着。
腕章に書かれていたのは、 『埼玉県』 の3文字。
写真撮影、関係ない (笑)
東京都民ですが、埼玉県民の腕章を付けて、いざ、国宝の元へ!
“国宝展示室” 。
いい響きです。
稲荷山古墳から出土した副葬品が、一括して国宝指定されたとあって。
勾玉も国宝。
馬具だって国宝。
砥石だって国宝。
しかし、 《武蔵埼玉稲荷山古墳出土品》 の不動のセンター、絶対エースは、こちら↓
通称、 “金錯銘鉄剣” 。
刀身は、完全に錆きってしまっているのに、
象嵌された金の文字は、今なお、くっきりと鮮やかに浮かび上がっているという神秘的な国宝。
他の国宝とは、明らかにオーラが違いました。
ちなみに、この金錯銘鉄剣が収められているケースは、窒素ガスを封入した特殊なもの。
これ以上、刀身が錆びないように、細心の注意が払われています。
さてさて、この金錯銘鉄剣。
日本の考古学を語る上で超重要な一品なのだとか。
その理由は、金の象嵌で刀身に刻まれた115の文字にあります。
何が書かれているのでしょうか?
[表]
辛亥年七月中記、乎獲居臣、上祖名意富比垝、其児多加利足尼、
其児名弖已加利獲居、其児名多加披次獲居、其児名多沙鬼獲居、其児名半弖比
[裏]
其児名加差披余、其児名乎獲居臣、世々為杖刀人首、
奉事来至今、獲加多支鹵大王寺在斯鬼宮時、吾左治天下、令作此百練利刀、記吾奉事根原也
の115文字。
・・・漢字だらけで、何が書いてあるかわからないと思うので、勝手に訳してみました。
[表]
辛亥の年の七月中に書いちゃうね。 (俺の名前は) ヲワケの臣 (って言うんだ、よろしく!)
遠い祖先の名前は、オホヒコ!で、その子供は、タカリのスクネ。
その子供の名前は、テヨカリワケ。で、その子の名前は、タカヒシワケ。
(しつこいけどw)その子の名前は、タサキワケ。 (飽きたかな?) その子の名前はハテヒ。
[裏]
(まだ続くよw)その子の名前は、カサヒヨ。 (これで、ラストw) で、その子の名前が、ヲワケの臣 (俺ね)
先祖代々、杖刀人首 (=親衛隊の隊長のような存在?) として、今日まで仕えてきたってわけ。
ワカタケル大王の住まいが、シキの宮に置かれてる時に、
俺は大王が天下を治めるのをサポートしたんだよ。(エッヘン)
(そういうわけで、) 何回も叩いて切れ味抜群にした刀を作らせて、
俺と俺のじっちゃんたちが、大王に仕えてきたって事実を残しておこうと思ったわけよ。
で、この自慢げな文章の何が大発見なのか、
よくわからないので、解説のボランティアさんに聞いてみたところ。
以前、#2でゲットした、こちらの国宝…
《肥後江田船山古墳出土品》 の銀象嵌銘大刀にも、
同じ獲加多支鹵大王なる人物のことが彫り込まれているのだとか。
これは、つまりどういうことかと言えば、
「熊本の古墳で発見された刀でも、埼玉の古墳で発見された刀でも、同じ大王が登場している」
→「少なくとも、この時代 (=5世紀) には、熊本から埼玉をカバーする範囲の大国があったらしい」
ということ。
2つの国宝を合わせることで、1つの歴史的事実が浮かび上がる。
浪漫ですねぇ。
ちなみに、この歴史的な115文字。
意外と、可愛い字なのには、ビックリです (笑)
さてさて、国宝をゲットした後のこと。
埼玉県立さきたま史跡の博物館では、勾玉づくり体験が出来るとのことで、チャレンジしてみることに。
200円 (安い!) で買った、こちらのキットで勾玉を作ります。
勾玉なんて、人生で一度も作ったことはないですが。
優しいボランティアさんに教わりながら、勾玉の完成を目指します。
石をやすりで磨く。ひたすらに。
そして、1時間の苦闘の末、完成したのが、こちら↓
師匠 (=勾玉作り名人なボランティアさん。勝手に師と仰いだ)には、
「いびつなところがあるなぁ…」 と苦笑されてしまいましたが。
僕にとっては、国宝です。
今現在の国宝ハンティング数 135/1082
国宝ハンターは、ランキングにも挑戦中
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第十八話 国宝ハンター、磨く!
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