出光美術館で、現在開催されているのが、
“古筆手鑑―国宝『見努世友』と『藻塩草』” という展覧会。
「古筆」 をテーマにした、かなり渋めの展覧会です。
さて、 「古筆」 について、簡単に説明しますと。
古筆とは、平安から鎌倉時代に書写された写本類の総称のこと。
『古今和歌集』 などの歌集をはじめ、経典や文書、手紙…などのバリエーションがあります。
鎌倉以降、そんな古筆を欲しがる人が続出。
しかし、古筆には、数の限りがある。
そこで、近世の古筆ファンたちが取った㊙方法は・・・
「一部を切っちゃえ♪」
とばかりに、古筆をチョキチョキ。
この (無残にも?) 切られた古筆は、古筆切と呼ばれます。
そうやって、古筆切を手に入れた古筆ファン。
手に入れた古筆切を、
あるファンは、掛け軸にペタリ、
あるファンは、巻物にペタペタ、
そして、またあるファンは、アルバム状の折帖にペタペタ。
この古筆を貼り付けたアルバム状の折帖を、手鑑 (てかがみ) と呼ぶのです。
古筆の名品から、自分の気に入った一部をカットし、
それらを集めて、自分のセンスを最大限に用いて、手鑑にペーストする。
僕も、高校生の頃は、
いろんなアルバム曲から、お気に入りの曲を選んで、
それらだけを集めたマイベストMDを作成したものです。
手鑑とMDという違いこそあれ、やっていることは、たぶん同じです (←本当か?)
何はともあれ、これで、
展覧会のタイトルの “古筆” と “手鑑” が、なんとなくおわかり頂けたでしょうか。
今回の展覧会では、そんな古筆手鑑&古筆切の中でも、傑作ばかりが大集合。
国宝2件に、重要文化財5件。
古筆ファンには、まさに垂涎の美術展と言えましょう!
古筆ファンでなければ・・・
根本的な話をすれば、
古筆の文字が流暢過ぎて、何が書いているか、サッパリなので (笑)
ただ、そんな古筆に疎い僕でさえも。
国宝の 《見努世友》 と、
《藻塩草》 には、
王者の風格のようなものを感じました。
“これが、綺麗なかな文字の傑作選だ!” というオーラが出まくっていました。
(↑どんなオーラ?)
この2つの国宝を制作したのは、古筆の鑑定を専門職とした古筆家。
古筆の鑑定を専門職としたため、名字が、 “古筆” さんなのです。
なんと、安易な名字。。。
そんな古筆家が、鑑定の基本として制作したのが、
《見努世友》 と 《藻塩草》 の2つの手鑑。
当然、貼られている古筆切は、すべて最高峰のものばかり。
ちなみに。
この2つの国宝の手鑑が、同時に展示されるのは、史上初なのだそうです。
また、こんな超貴重な手鑑も展示されています。
作者は、千利休以来の大茶人と称され、
世界初の総合商社・三井物産の設立に関わった男爵・益田孝 (1848~1938) 。
そんな男爵が、 (金にモノを言わせて?) 蒐集した古筆切をまとめたのが、
この 《谷水帖》 という手鑑です。
古筆切は、すべて平安時代のものというところに、
どうも益田孝のこだわりが現れているようです。
古筆だけで、人によっては、多少飽きかねませんが。
飽きたら、じっくり観るのではなく、
バッサバサと切りながら、観るくらいがちょうどいい展覧会です。
古筆切だけに (←上手いこと言った?)
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古筆手鑑 ―国宝『見努世友』と『藻塩草』
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