~前回までのあらすじ~
『貴くなければ国宝じゃない』 をスローガンに掲げ (?) 、
日本全国に散らばる国宝を、実際に尊いものなのか、
自身の目で見る (=ハンティングする) 旅を続ける国宝ハンター・とに~。
前回は、福島県にある国宝をハンティングし、国宝を完全制覇した都道府県の数は12に!
しかし、彼の旅はまだまだ終わらない。
暑さ厳しい7月のある日。
東京から高速バスに乗り、京都へとやってきました。
そして、すぐさま電車に乗り、近鉄京都線の新田辺駅へ。
この駅の近くに、国宝があるわけではないのですが。
事前に調べたところ、駅の近くにある駐輪場で、レンタサイクルのサービスがあることが判明。
しかも、電動アシスト車が一日500円で借りれるというのです。
今回の国宝ハンティングの旅は、過酷なこと必至。
電動アシスト車は大きな武器になってくれるはずです。
さて、電動アシスト車にまたがって、まず向かったのは蟹満寺。
「蟹満寺」 と書いて、「かにまんじ」 と読みます。
何とも不思議な名前のお寺です。
さらには、境内のあちこちに、蟹の姿が。
まさに、蟹づくし。
実は、このお寺には、こんな言い伝えがあるそうです。
その昔、信心深い夫婦と一人娘が仲良く住んでおったそうな。
ある日のこと、村人がたくさんの蟹を捕えているのを目にした娘は、
蟹を不憫に思い、持っていたお金を村人に渡し、蟹を譲り受け、草むらへ逃がしてあげました。
また、ある日のこと、娘の父が田を耕していると、蛇が蛙を呑もうとしているでないですか。
何とか蛙を助けてやろうと思った父は、蛇に向かって、こう言いました。
「もし、その蛙を放してやってくれたら、お前を娘の婿にしてやるぞ」
すると、蛇は蛙を放し、どこへともなく姿を消したのです。
この後、大変なことを言ってしまったと後悔した父は、家へ帰り、娘にこの話を打ち明けました。
父親が心配した通り、その夜、あの蛇が姿を変えた男が現れ、約束を守ってくれるよう迫ってきたのです。
困った父親は、嫁入りの支度を理由に、三日後に来るよう男に言って帰しました。
しかし、何もできぬまま三日が過ぎます。
雨戸を堅く閉ざし、約束を守ろうとしない父親に腹を立てた男は、ついに本性を現し、蛇となって荒れ狂います。
恐ろしさの余り身を縮める夫婦と、ひたすらお経を唱える娘。
すると、そこに光り輝く観音様が現れ、自分を信じれば、この危難は乗り越えられると告げました。
まもなく、辺りは静まります。
夜が明け、戸外に出てみると、鋏で寸断されたかのような姿の大蛇と無数の蟹の死骸が残されていました。
親子は観音様に感謝し、娘の身代わりとなったたくさんの蟹と哀れな蛇の霊を弔うためにお堂を建てたのです。
蟹が満る寺。
つまり、蟹満寺というわけです。
しかし、この言い伝え (蟹満寺縁起) で一つだけ納得のいかないことが。
蛙はどうした!?
お前が、恩返ししろやい。
そんな蟹満寺の御本尊は、観音様ではなく、釈迦如来像。
それも白鳳時代に作られたとされる巨大な金銅仏です。
こちらの 《銅造釈迦如来坐像(本堂安置)》(ジャンル:彫刻) の像高は2.4メートル、重さは2.2トンだとか。
その大きさと重さのため、創建以来ずっと不動だったことは、ほぼ確実なのだそうです。
指の間の縵網相 (=水かき) が立派だったのが、印象的でした。
蟹満寺をあとにします。
ここから自転車で40分ほどでしょうか。
次なる目的地である観音寺が見えてきました。
さてさて、これまでにも、数多くの辺鄙な場所にある国宝を巡ってきましたが。
観音寺もなかなかどうしてな辺鄙な場所にありました (←失礼!) 。
そんな観音寺にいらっしゃるのが、《木心乾漆十一面観音立像(本堂安置)》(ジャンル:彫刻) です。
拝観は事前予約制。
予定より早めに着いたためか、電話対応してくださった住職さんのお父さん (?) が本堂を開けてくれました。
いろいろと話してくださったのですが、おじいちゃんなので、正直何を言っているのか聞き取れません。
唯一聞き取れたのは、同じ国宝の十一面観音像でも、
S林寺 (注:差しさわりがあるため、イニシャルにしております) のは顔が田舎っぽいとディスっていたくだりだけでした。
まぁ、確かに。
僕もS林寺のよりも、観音寺の十一面観音像のほうが美しく感じました。
ちなみに、充電が途中で切れてしまうのが怖いため、ここまで電動アシスト車の電源は入れていません。
すでにヘロヘロですが、体力よりもバッテリーを温存する作戦 (?) に出ました。
その決断が吉と出るか凶と出るか。
続きは、次回!
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第百三話 国宝ハンター、武器を手に入れる!
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