サントリー美術館で開催中の “悠久の光彩 東洋陶磁の美” に行ってまいりました。
こちらは、大阪市立東洋陶磁美術館が所蔵する4000件以上のコレクションの中から選りすぐられた、
国宝2件&重要文化財13件のすべてを含む東洋陶磁の名品約140件が紹介されている美術展です。
「陶磁器って、あまり興味ないんだよね・・・(ボソッ)」
と思っている方は、わりと多いはず。
しかーし!
声を大にして言いましょう。
陶磁器に興味の無い方にこそ、是非、この美術展を観て頂きたい!
というのも、大阪市立東洋陶磁美術館が誇る東洋陶磁コレクションは、
世界でもトップクラスの東洋陶磁コレクション。
中でも、そのコレクションの中核を担う 『安宅コレクション』 は、
総合商社安宅産業の安宅英一さんが、金に糸目を付けず蒐集したという伝説のコレクションだそうで。
この安宅コレクションへの出費が原因で、総合商社安宅産業が倒産してしまったという逸話も残っているほど。
一つの大企業を倒産にまで追い込んだ (?) コレクションです。
どんなに陶磁器に興味が無いという方でも、
そのコレクションを観て全く感動しないというわけがありますまい。
というか、この美術展を観て、それでも興味が沸かないというのなら、
自分と陶磁器の間には、全く縁が無いのだと諦め、今後スッパリ陶磁器展に行かなければよいのです (笑)
まずは、とにかく行くべし。
さてさて、くどいようですが、大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションは、本当にスゴい。
(注:大阪市立東洋陶磁美術館の回しものでも、サントリー美術館の回しものでもありません)
去年、千葉市美術館で開催された “浅川伯教・巧兄弟の心と眼―朝鮮時代の美” では、メインの扱いだった…
《青花辰砂蓮花文壺》 が、今回の美術展では、会場の片隅に展示されていたほど。
先日観た映画の主演俳優が、今回観た映画では、チョイ役で出演していたような感じです。
それもそのはず。
《青花辰砂蓮花文壺》 クラスの名品、
いや、それ以上のクラスの名品が、大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションに名を連ねているのです。
もちろん。
国宝である 《飛青磁花生》 と 《油滴天目茶碗》 が、素晴らしいのは、言うまでもなし。
そちらについての感想は、近々、 “国宝ハンター” シリーズで述べるとしまして、
こちらの記事では、それ以外の名品をご紹介いたしましょう。
まずは、加賀前田家に伝来したという重要文化財 《木葉天目 茶碗》
木の葉を貼り付けて焼いた茶碗だそうです。
葉脈まで焼きついていて、何ともモダンな印象。
とても12~13世紀の茶碗とは思えません。
続いて、こちらも重要文化財 《法花花鳥文壺》
これまでにも、景徳鎮や伊万里、デルフト焼などで、青い陶磁器は数々目にしてきましたが。
この 《法花花鳥文壺》 のようなコバルトブルーの陶磁器に出会ったのは、初めてでした。
目に飛び込んだ瞬間、その色鮮やかさに、思わず息が止まってしまいました。
またまた重要文化財 《白磁銹花 牡丹唐草文 瓶》
なんちゃって料理評論家風に表現するならば、
白磁と錆色のマリアージュと言ったところでしょうか。
それはともかくも、白磁の白色と錆色が、
こんなにも絶妙にマッチングしている陶磁器に初めて出会いました。
重要文化財ではないですが、個人的に気に入ったのが、こちら。
《月白釉 碗》 です。
この透き通るような青さと、なだらかなフォルム。
まるで逆さ富士のようです。
・・・と、ここまで、紹介してきたのは、中国陶磁の名品ばかり。
あまりに名品ばかりゆえに、ほとんど笑いのない文章で恐縮ですが (笑)
今回の美術展のもう一つの柱・韓国陶磁の名品には、愉快な作品もたくさん。
例えば、こちらの水注。
筍をかたどって制作されたもの。
注ぎ口は、竹のようになっています。
近づいて、よく見ると、ちゃんと全体に竹の脈も描かれているという凝りよう。
ユーモラスながら、芸は細かい。
中国陶磁とは、また違った魅力が、韓国陶磁にはありました。
そんな韓国陶磁のコレクション中には、格差社会を感じずにはいられない陶磁器が。
特に同じように見える童女と童子。
しかし、右の 《青磁彫刻 童子形水滴》 は、何の指定も無いのに対し、
左の 《青磁彫刻 童女形水滴》 は、重要文化財指定を受けています。
女性逆差別です (←?)
また、韓国陶磁は、時代を経るに連れて、
良くも悪くも、ゆるさが増していき、ユーモアが全面に押し出されてきます。
一例を挙げるならば。
《鉄砂虎鷺文壺》
虎・・・ですか?
虎に見えなくはないですが、それ以外の何かに見えます。
とりあえず、このまつ毛が、虎を変な印象にしているのでしょう。
つけまつける虎。
また、画像はありませんが、 《粉青線刻鳳凰文扁壷》 は必見。
これまでに、アートテラーとして、数々の描かれた鳳凰を観てきましたが。
「こんなにも、ミジンコみたいな鳳凰には出会ったことがないwww」
と、ある意味で絶賛の逸品です。
会期は、4月1日まで。
見逃すことなかれ。
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悠久の光彩 東洋陶磁の美
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