先日、渋谷区立松濤美術館より、内覧会の案内状が届きました。
ふと宛名に目をやると、普段は 「アートテラー」 名義なのに。
今回は、「国宝ハンター」 名義になっていました。
・・・・・なぜ??
おそらく、展覧会が “最初の人間国宝 石黒宗麿のすべて” だからなのでしょう。
茶目っ気たっぷりの渋谷区立松濤美術館です (笑)
ちなみに、人間国宝は、あくまで通称。
正式には、重要無形文化財保持者です。
というわけで、国宝ハンター的には、人間国宝に何の興味もないのですが。
アートテラー的には、富本憲吉、濱田庄司、荒川豊藏と共に、
最初の人間国宝に認定された陶芸家・石黒宗麿に興味津々です。
内覧会には、アートテラーとしてお邪魔してきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
石黒宗麿 (1893~1968) は、鉄釉陶器の技法により人間国宝に認定されています。
それゆえ、会場には、鉄釉陶器が多数展示されているのかと思いきや。
約130点展示されている陶芸作品のうちのほんの一部に過ぎませんでした。
特定の師を持たず、独学で古陶磁を学んだという石黒宗麿は、
実は、人間国宝の中でも自他ともに認める、かなり異色の人物。
一つの世界を突き詰めるタイプの陶芸家ではなく、
鉄釉陶器以外にも、三彩や磁州窯といった中国陶磁スタイルの作品や、
唐津や楽焼といった日本の伝統的なスタイルの作品、
さらには、「チョーク描」 と命名されたオリジナルスタイルの作品なども手掛け、
いい意味で (?) 、とっかえひっかえなタイプの陶芸家だったのです。
カメレオン俳優ならぬ、カメレオン陶芸家。
あまりに作陶スタイルがバラバラなので、
とても一人の陶芸家の展覧会とは思えませんでした。
グループ展を観たくらいの満足感のある展覧会です。
ただ、スタイルはバラバラながらも、
古陶磁の完全再現であったり、絵付けのユニークさであったり、
一貫して、見た目の面白さを追及していたような印象を受けました。
あれだけ、いろんなことにチャレンジしながらも、造形に関しては、いたってオーソドックス。
造形は普通で、いかに面白い陶芸を作れるか。
それが、石黒宗麿のテーマだったような気がします。
さてさて、面白い作品は多々ありましたが。
すべてを紹介するとキリがないので、いくつか絞ってご紹介いたしましょう。
まずは、展覧会ポスターのメインビジュアルに使われていた 《彩瓷柿文壺》 。
何のモチーフか、よくわからないながらも、直感的に美味しそうな印象を受けました。
正解は、23個の吊るし柿と、それを吊るす縄。
斬新な柄です。
続いては、こちらの水指。
《彩瓷芋版水指》 という名称からも、おわかりのように。
表面の模様は、芋版で付けられているのだとか。
斬新な手法です。
ちなみに、こちらの 《楽加彩童女図茶碗》 も、胴着部分はスタンプが用いられているとのこと。
やはり斬新。
個人的に、一番印象的だったのは、《鉄絵魚紋平鉢》。
魚は魚でも、活き活きした魚ではなく。
煮干しみたいなのが、わらわらと描かれていました。
どんな料理を盛り付ければいいのか、謎 (笑)
↧
最初の人間国宝 石黒宗麿のすべて
↧