まずは、こちらの映像をご覧くださいませ。
映画の予告映像のような壮大さ!
埼玉県立近代美術館、かなり気合が入っています。
それもそのはず。
重要文化財の 《騎竜観音》 で知られる原田直次郎の・・・
(注:こちらの写真は、東京国立近代美術館で以前に撮影したものです。今回の展覧会には出展されていません)
実に、100年ぶりとなる回顧展なのです!
いや、正確には、107年ぶりとなる回顧展です。
それも、107年前の回顧展というのも、原田直次郎の没後10年を記念し、
ドイツ留学時代から原田と親交のあった森鴎外によって開催された一日限りの回顧展でした。
つまり、今回、埼玉県立近代美術館で開催されている “原田直次郎展-西洋画は益々奨励すべし” は、
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
ほぼ初めての原田直次郎の回顧展と言っても過言ではありません!!
ちなみに、原田直次郎の名誉のために言っておきますが。
“回顧展が開催されたことが無い=人気が無い” 芸術家というわけではありません。
実は、これまでにも生誕○年、没後○年のタイミングで、
何度か原田直次郎展が企画された形跡はあるのだそうです。
しかし、作品数が少ないことなど様々な事情から、
ことごとく、原田直次郎の回顧展の計画は実現しなかったのだとか。
そういう意味では、生誕153年、没後127年という、
何の節目でもない2016年に、原田直次郎の回顧展が開催されたのは奇跡に近いことなのです。
(予告映像に、あれだけ気合が入るのも納得です)
さてさて、会場には、ドイツ留学時代の作品や、
帰国後の作品も合わせて、原田直次郎の作品がズラリ勢揃い。
どの作品も見応えがあります。
その中でも、やはり別格だったのが。
やはり、今回のメインビジュアルにも使われている重要文化財の 《靴屋の親爺》 です。
原田直次郎 《靴屋の親爺》 1886年 重要文化財 東京藝術大学所蔵
描かれているのは、ただの靴屋の親父 (←?) のはずなのに、
まるで明治時代の傑物かのような印象を受けました。
大河ドラマの登場人物なら、平幹次郎クラスが演じるはず。
それほどまでの大物感 (重厚感。威圧感?) でした。
実は靴屋の親父とは仮の姿なのかもしれません。
ちなみに、展覧会の図録をパラパラめくっていたら、
《靴屋の親爺》 の全体像が掲載された隣のページに、なぜか胸元だけフォーカスされたカットを発見!
胸毛に注目ということでしょうか。
男性フェロモン。
原田直次郎は肖像画を多く描いているイメージがあったので。
原田直次郎 《風景》 1886年 岡山県立美術館所蔵
個人的には、原田の風景画を観られたのが良かったです。
重厚な肖像画とは違って、穏やかな感じではありますが。
同時代のフランスの印象派の画家たちの作品と比べると、
コクがあると言いましょうか、こってりしていると言いましょうか。
そこに、原田直次郎らしさがあるのかもしれません。
また、今回の展覧会には、原田直次郎と関わりの深い画家たちの作品も多く展示されています。
原田直次郎の弟子たちの作品であったり、
ドイツ留学時代に交流があった現地の画家たちの作品であったり。
その中でも特にインパクトがあったのが、原田の師に当たるガブリエル・フォン・マックスの作品です。
超常現象や心霊現象に興味があり、
自宅には大量の頭蓋骨をコレクションしていたというガブリエル・フォン・マックス。
そのオカルトな嗜好が、十分すぎるほどに作品に滲み出ていました。
そんなガブリエル・フォン・マックスは、
大の猿好きでもあったそうで、自宅にもたくさんの猿を飼っていたようです。
なので、自画像にも、しっかり猿が描きこまれていました。
ガブリエル・フォン・マックス 《猿のいる自画像》 1910年
マンハイム ライス・エンゲルホルン博物館所蔵 Reiss-Engelhorn-Museen Mannheim, photo: Jean Christen
なかなかインパクトのある自画像です (笑)
最後に、個人的に印象深かった作品を。
絶筆の 《安藤信光像》 です。
作品に関しては、そこまで強い印象は無かったのですが。
キャプションに記載された原田直次郎の友人の言葉が印象的でした。
友人の画家としての腕を褒めた上で、
自分の父親は、こんなに顔が長くないよ、と主張する。
その気遣いが、深く心に刺さりました。
展覧会のラストには・・・
原田直次郎の生涯をすごろくにしたもの (実際に遊べます!) や、
《靴屋の親父》 に自由に吹き出しをつけてみるコーナーもあり、実に内容たっぷりの展覧会でした。
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原田直次郎展-西洋画は益々奨励すべし
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