東京国立近代美術館で開催中の “トーマス・ルフ展” に行ってきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
こちらは、「ベッヒャー派」 の作家の一人であるトーマス・ルフの日本初となる本格的な回顧展です。
ちなみに、ベッヒャー派とは、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に学んだ一群の写真家たちのこと。
2013年に国立新美術館で個展が開催されたアンドレアス・グルスキーも、ベッヒャー派です。
ベッヒャー派。
思わず口にしたくなるフレーズですよね・・・とそれはさておき。
今回のトーマス・ルフ展では、初期から最新のものまで全18シリーズ122点の作品が紹介されています。
さて、トーマス・ルフの代表的なシリーズといえば、「Porträts(ポートレート)」 シリーズ。
トーマス・ルフ 《Porträt (P. Stadtbäumer)》 1988年 C-print 210×165cm ©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016
映っているモデルは、ルフの大学時代の友人たちだそうです。
一見すると、単なるポートレート、証明写真のようですが。
実物は・・・・・
デカいです。
そのサイズは、なんと210×165cm!
僕らの身長よりも大きな作品です。
もともとは、24×18㎝と普通のサイズでプリントされた作品だったとのこと。
その作品を見た友人たちは、「これは誰々だね」 とモデルを話題にしたそうです。
しかし、次に巨大プリントした作品を展示したところ、
「これは誰々の巨大な写真だね」 と感想を述べるようになったのだとか。
つまり、人は普通の写真を見る時よりも、
巨大な写真を目にした時のほうが、より写真であるということを意識するということ。
逆説的な気もしますが、確かに、考えてみればそうかもしれません。
この 「Porträts(ポートレート)」 シリーズをはじめ、
トーマス・ルフの作品には一貫して、“写真で何が表現できるか” という、
彼なりの考察が反映されています。
そういう意味では、写真家というよりも、
写真というツールを使ったアーティストといった印象を受けました。
今回紹介されていたシリーズの中で、
個人的に一番インパクトを受けたのは、「another Porträts(アザー・ポートレート)」 シリーズ。
こちらのシリーズは、1995年のヴェネツィア・ビエンナーレに出展されたもので、
実際にドイツの警察で使われていた旧式のモンタージュ写真合成機を使用して制作されています。
つまり、映っているのは、どこかにいそうな人物でありながらも、
実は、いろんな人の顔を合成しただけの架空の人物というわけです。
このポートレートは、結局のところ、何を映し出しているのだろう・・・?
考えれば考えるほど、謎が深まる作品です。
また、トーマス・ルフは、こんなシリーズも発表しています。
「jpeg」 シリーズです。
元となる画像は、主にwebサイトからダウンロード。
それらの画像の圧縮率を高め、画素密度を極端に下げます。
そこから、画像を一気に (?) 拡大。
すると、点描画のような写真作品が完成するというわけです。
トーマス・ルフ 《jpeg ny01》 2004年 C-print 256×188cm ©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016
他にも、webサイトから素材を拝借するシリーズはありました。
それが、こちらの 「Substrate(基層)」シリーズ。
プリズムのようで綺麗です。
でも、その正体は、日本の成人向けコミックや、
アニメから取り込んだ画像に幾重もの処理を施したものなのだとか。
トーマス・ルフ 《Substrat 31 III》 2007年 C-print 186×268cm ©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016
原型がわからなすぎて辛いです。
キューティーハニーの変身シーンとか?
さてさて。
他にも、いろいろと紹介したいシリーズはありますが、キリがないのでこの辺りで。
どの作品にも、トーマス・ルフの思考の経緯が見て取れて大変興味深かったです。
トーマス・ルフは、これからもまだまだ進化しそうな予感。
今流行のインスタグラムとか顔認証アプリとかが、
いつかトーマス・ルフの新たな作品の素材になる日を待ち望みます。
┃会期:2016年8月30日(火)~11月13日(日)
┃会場:東京国立近代美術館
┃http://thomasruff.jp/
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トーマス・ルフ展
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