ルノアールを筆頭に、モネ、ゴッホ、シャガール…と、
街を歩いていると、時に、美術界の巨匠たちと同じ名前のお店に出くわします。
果たして、それらのお店と巨匠との間に関係はあるのか??
気になるようで気にならない。
でも、気にしてしまったら、気になって仕方がない。
そんな疑問を解消すべく、アートテラーは今日も店へと赴く!!
「いつまでもあると思うな親と金と巨匠の名が付いたお店。」
このシリーズでそのうち取り上げようと先延ばしにいたところ、
いざお店に出向いてみたら、数か月前に閉店してしまっていた、、、
そんな悲しいパターンを、実は、これまで何度も経験しています。
ロートレックとか若冲とか三代豊国とか。
そして、つい先日のこと。
そのうち足を運ぼうと思っていたお店のHPを何気なく覗いてみると、
今年の12月31日で閉店が決まってしまったとのお知らせが目に飛び込んできました。
これは、すぐに行かねば!!
ということで、京王線明大前駅へ。
そこから歩いてほど近くのキッド・アイラック・アート・ホールにやってきました。
こちらは、著作家で美術評論家の窪島誠一郎さんが昭和39年に設立した小ホールで、
あの寺山修司をはじめ、若い劇作家や芸術家たちが集い、巣立っていた場所なのだそうな。
そんなキッド・アイラック・アート・ホールが、惜しまれつつも52年の歴史に幕を閉じることに。
それに伴って、地下1階にあるカフェも閉店することになったのだそうです。
その名は、ブックカフェ槐多。
22歳という短い人生で大正の世を駆け抜けた天才・村山槐多の名がつけられています。
《尿する裸僧》
村山槐多は、その短い生涯の中で、洋画だけでなく詩も小説も戯曲も書いた熱い人物。
ほとばしる熱いパトスが絶えなかった彼を、
高村光太郎は 『火だるま槐多』 と、草野心平は 『アンドロメダ的燃焼体』 と呼んだのだとか。
さてさて、そんな村山槐多の名がついているからには、
「何だか暑苦しいお店なのでは?」
と、やや危惧していたのですが、お店の雰囲気は真逆も真逆。
実に居心地のいいお店でした。
ブックカフェというだけあって店内には、大量のブックがありました。
これらは、すべて窪島誠一郎さんの蔵書とのこと。
もちろん読んでOKです。
また、壁には村山槐多のデッサンが!
「えっ、本物?!」
と、色めき立ったのですが。
お店の方に確認すると、レプリカです、との返答。
喫煙する人もいたので、さすがに本物は置けなかった、とのことでした。
・・・・・まぁ、そうですよね。
さて、気を取り直して。
いい感じに年季の入った美術書をパラパラと眺めながら、コーヒーを一杯。
そして、自家製のスコーンも。
まったりとした素敵な時間を過ごすことが出来ました。
何でしょう、この馴染み感は。
昔から通っていたお店のような感じです。
そして、今月末に閉店してしまう事実を思い返して、急に喪失感がわいてきました。
常連でも何でもなく、10分前に初めて訪れただけの客なのに。
その後、常連でも何でもないのに、お店の方やお客さんと談話を。
流れで、イラストレーターの話題になったので、
「イラストレーターといえば、今、芸術新潮で、
伊野孝行さんという方と 『ちくちく美術部』 という連載をしてるんですよ」
と、何気なく口にしたところ、
「えっ?!伊野さん、うちによく来てくれますよ。ていうか、昨日も来ましたよ」
と、お店の方が、前日に伊野さんとお店で撮った写真を見せてくれました。
なんという偶然!!
小さな奇跡が起こるカフェ、ブックカフェ槐多。
返す返すも閉店が惜しまれます。
<お店情報>
ブックカフェ槐多
住所:東京都世田谷区松原2-43-11
営業時間:14:00~21:00
美術ブログ界の巨匠になるべく、ランキングに挑戦しています
↧
第24回 世田谷区松原で槐多
↧