府中市美術館で開催中の・・・
“ガラス絵 幻惑の200年史” に行ってきました。
こちらは、ガラス絵にスポットを当てた、珍しい展覧会です。
《広東港内の景》 浜松市美術館蔵
ガラス絵とは、その名の通り、ガラスに描かれた絵のこと。
それ以下でもそれ以上でもありません。
ただし、普通の絵とは違って、裏側から描かれているのがポイント。
ガラス絵は、もれなく裏彩色なのです。
その歴史は意外と古く、16~17世紀にヨーロッパで隆盛を誇り、
18世紀にはドイツやルーマニアなど東欧諸国に伝播し、多くのガラス絵が制作されました。
一方、同じ18世紀に中国でも誕生し、そこからインドやインドネシアへ、
さらには、わが日本にも、江戸時代中期にガラス絵が伝播し、制作されるようになったそうです。
展覧会の第1章では、日本を中心に、
世界各地のレトロなガラス絵の数々が展示されていました。
《川岸洋傘をさす女》 浜松市美術館蔵
《聖母子像》 浜松市美術館蔵
何よりも印象的だったのは、ガラス絵そのものよりも、
出展作品のほとんどが、浜松市美術館所蔵であったこと。
浜松市美術館は、まだ訪れたことがないのですが、
こんなにもガラス絵をコレクションしている美術館だったとは!
壊れそうなものばかり集めてしまう美術館。それが、浜松市美術館。
さてさて、続く第2章でフィーチャーされていたのは、
大正・昭和初期に、ガラス絵に魅せられ、多くの作品を残した2人の洋画家。
一人は、「東の劉生、西の楢重」 と呼ばれた小出楢重。
小出楢重 《裸女(赤いバック)》 1930年 芦屋市立美術博物館蔵
そして、もう一人は、日本のゴッホと呼ばれた破天荒画家・長谷川利行です。
長谷川利行 《荒川風景》 1935年 個人蔵
2人のことは、よく存じているつもりでいましたが。
2人とも、これほどガラス絵にのめり込んでいたとは、知りませんでした。
意外な一面を知って、ビックリ。
そして、洋画よりガラス絵のほうが、しっくりきていたような気がして、またビックリ。
ちなみに、洋画の場合は、筆致が荒く殴り描きしたようなスタイルの長谷川利行。
ガラス絵の場合も、その荒々しさは健在でした。
出展されていたガラス絵の3分の1は、割れていました。
尾崎豊くらい荒れてます。
展覧会のラスト、第3章では、川上澄生をはじめ、
川上澄生 《洋燈を持つ洋装婦人之図》 1954年 福島県立美術館蔵
藤田嗣治、芹沢銈介、白髪一雄、桂ゆきなど、
戦後から現在まで、幅広いメンバーのガラス絵が一挙に紹介されていました。
「えっ、この人もガラス絵を描いてたの?」 と驚きの連発。
そして、画家の個性の数だけ、ガラス絵の個性もありました。
まさかガラス絵が、こんなにもバリエーションのあるジャンルの一つであったとは?!
会場に訪れる前の僕がイメージしていたガラス絵は、第1章に展示されていたような作品のみ。
それだけに、ガラス絵展って成立するのだろうか、と密かに心配していました。
いやはや、全くの杞憂に終わりました。
よくよく考えたら、企画力の高い府中市美術館が、
ただレトロなガラス絵だけを並べて終わり・・・なわけはないですね。
ちゃんと裏を見るべきでした。
ガラス絵の概念がガラリと変わる展覧会。
ガラス絵の展覧会。おそろしい展覧会!
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ガラス絵 幻惑の200年史
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