板橋区立美術館で開催中の “江戸に長崎がやってきた!長崎版画と異国の面影” に行ってきました。
こちらは、史上最大規模にして、
おそらく関東圏では初となる 「長崎版画」 をテーマにした展覧会です。
長崎版画とは、江戸中期から幕末にかけて、長崎で版行されていた版画のこと。
主に旅人へのお土産用として販売されていたため、
異国情緒を感じられるモチーフが好んで描かれているのが特徴です。
そんな長崎版画で人気のモチーフの一つが、船。
縄屋版 《阿蘭陀船図》 長崎歴史文化博物館蔵
ただ、船の姿を描くだけでなく、
船の大きさや旗や乗組員の数といった基礎データも記載されているのは、お土産品ならでは。
ステンシルのような合羽摺という技法を用い、あえて素朴な感じで仕上げられています。
それも、お土産品ならでは。
ちなみに、《阿蘭陀船図》 の作者は、不明です。
ただし、縄屋という版元から版行されたことは判明しています。
長崎市内の小さな版元が、それぞれ制作から販売まで一貫して手掛けていた長崎版画。
実は、ほとんどの作者がわかっていないようです。
作者ではなく、版元の個性が立っている。
それが、長崎版画です。
ちなみにちなみに。
20近くあったという長崎版画の版元のうち、特に個性が光っているのが大和屋。
幕末に美人画で活躍した渓斎英泉の弟子・磯野文斎が婿入りしたことで、
大和屋には、江戸の本場仕込みの多色摺のノウハウが導入されたのです。
その結果、江戸にも負けない美しい多色摺の作品を多く制作しています。
大和屋版 《阿蘭陀舩入津之図》 長崎歴史文化博物館蔵
さてさて、船と並んで長崎版画で人気だったモチーフが、外国人。
大和屋版 《オランダ人遠眼鏡》 長崎歴史文化博物館蔵
シルクハットに洋装に椅子に望遠鏡に、そして、国旗に。
これでもかというくらいに異国情緒モリモリ。
購買意欲を大いに刺激する一枚です。
しかし、さらに購買意欲を刺激するべく、
版元の大和屋は同じような構図の大清人 (中国人) ver.も販売しています。
大和屋、お主も悪よのう。
大和屋版 《大清人》 神戸市立博物館蔵
・・・・・でも、もっと売りたかったら、
「男性でなく女性を描いたものを制作したらいいのに」 と、一瞬頭をよぎったのですが。
当時、外国人の女性は入国禁止だったとのこと。
なるほど。それは外国人男性を描いた絵が多かったわけです。
さて、今回の展覧会には、実に約100点の長崎版画が展示されていますが。
それと同時に、長崎で描かれた肉筆画約30点も展示されています。
こちらも異国情緒たっぷりです。
その中で個人的に印象に残ったのは、川原慶賀の 《長崎蘭館饗宴図》。
川原慶賀 《長崎蘭館饗宴図》 個人蔵
クリスマスの食卓を描いた一枚です。
オランダ人だけでなく、日本の侍 (おそらく偉い人) もテーブルを囲んでいます。
しかし、当時は、クリスマスを祝うのは、幕府的にはご法度。
なので、クリスマスではなく、「阿蘭陀冬至」 というていでお祝いをしていたのだとか。
特に目を奪われたのは、テーブルの中央に置かれた謎のクリスマスメニュー。
皿の上に、牛の頭がまるまる乗っています。
調べてみたところ、こちらは北欧のクリスマスメニューだそうで、
本来は、豚の頭を焼き上げて、その口にリンゴを咥えさせるのだとか。
何、その悪魔のような料理?!
また、若冲でお馴染みのプライスコレクションにも所蔵されているという、
谷鵬紫溟 (こくほうしめい) による 《虎図》 の別バージョンも印象的な一枚でした。
谷鵬紫溟 《虎図》 福岡市博物館蔵
虎の縞が、妙なことになっています。
縞というよりは、血管のよう。
刃牙にしか見えない。
範馬刃牙(37) (少年チャンピオン・コミックス)/秋田書店
ちなみに、作者の谷鵬紫溟は、長崎版画の版元でもあったそうです。
オーナー兼絵師。
《虎図》 も描きこみが、執拗な感じがしましたが。
さらに、合わせて展示されていた 《唐蘭風俗図屏風》 は、もっと執拗な感じ。
谷鵬紫溟 《唐蘭風俗図屏風》 福岡市博物館蔵
しかも、絵の中だけでなく、屏風をグルリと囲んでいる縁も、実は谷鵬紫溟の手描き。
さらに、上の画像ではわかりませんが、連結部の奥まった部分も谷鵬紫溟が手描きしています。
執拗すぎて、クドイ (笑)
ある意味、必見の一枚です。
知られざる長崎版画の世界をたっぷりと堪能できる展覧会。
この春、板橋区立美術館で異国情緒を味わってみては?
会期は1か月しかないので、お早めに!
1位を目指して、ランキングに挑戦中!(現在7位です)
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
こちらは、史上最大規模にして、
おそらく関東圏では初となる 「長崎版画」 をテーマにした展覧会です。
長崎版画とは、江戸中期から幕末にかけて、長崎で版行されていた版画のこと。
主に旅人へのお土産用として販売されていたため、
異国情緒を感じられるモチーフが好んで描かれているのが特徴です。
そんな長崎版画で人気のモチーフの一つが、船。
縄屋版 《阿蘭陀船図》 長崎歴史文化博物館蔵
ただ、船の姿を描くだけでなく、
船の大きさや旗や乗組員の数といった基礎データも記載されているのは、お土産品ならでは。
ステンシルのような合羽摺という技法を用い、あえて素朴な感じで仕上げられています。
それも、お土産品ならでは。
ちなみに、《阿蘭陀船図》 の作者は、不明です。
ただし、縄屋という版元から版行されたことは判明しています。
長崎市内の小さな版元が、それぞれ制作から販売まで一貫して手掛けていた長崎版画。
実は、ほとんどの作者がわかっていないようです。
作者ではなく、版元の個性が立っている。
それが、長崎版画です。
ちなみにちなみに。
20近くあったという長崎版画の版元のうち、特に個性が光っているのが大和屋。
幕末に美人画で活躍した渓斎英泉の弟子・磯野文斎が婿入りしたことで、
大和屋には、江戸の本場仕込みの多色摺のノウハウが導入されたのです。
その結果、江戸にも負けない美しい多色摺の作品を多く制作しています。
大和屋版 《阿蘭陀舩入津之図》 長崎歴史文化博物館蔵
さてさて、船と並んで長崎版画で人気だったモチーフが、外国人。
大和屋版 《オランダ人遠眼鏡》 長崎歴史文化博物館蔵
シルクハットに洋装に椅子に望遠鏡に、そして、国旗に。
これでもかというくらいに異国情緒モリモリ。
購買意欲を大いに刺激する一枚です。
しかし、さらに購買意欲を刺激するべく、
版元の大和屋は同じような構図の大清人 (中国人) ver.も販売しています。
大和屋、お主も悪よのう。
大和屋版 《大清人》 神戸市立博物館蔵
・・・・・でも、もっと売りたかったら、
「男性でなく女性を描いたものを制作したらいいのに」 と、一瞬頭をよぎったのですが。
当時、外国人の女性は入国禁止だったとのこと。
なるほど。それは外国人男性を描いた絵が多かったわけです。
さて、今回の展覧会には、実に約100点の長崎版画が展示されていますが。
それと同時に、長崎で描かれた肉筆画約30点も展示されています。
こちらも異国情緒たっぷりです。
その中で個人的に印象に残ったのは、川原慶賀の 《長崎蘭館饗宴図》。
川原慶賀 《長崎蘭館饗宴図》 個人蔵
クリスマスの食卓を描いた一枚です。
オランダ人だけでなく、日本の侍 (おそらく偉い人) もテーブルを囲んでいます。
しかし、当時は、クリスマスを祝うのは、幕府的にはご法度。
なので、クリスマスではなく、「阿蘭陀冬至」 というていでお祝いをしていたのだとか。
特に目を奪われたのは、テーブルの中央に置かれた謎のクリスマスメニュー。
皿の上に、牛の頭がまるまる乗っています。
調べてみたところ、こちらは北欧のクリスマスメニューだそうで、
本来は、豚の頭を焼き上げて、その口にリンゴを咥えさせるのだとか。
何、その悪魔のような料理?!
また、若冲でお馴染みのプライスコレクションにも所蔵されているという、
谷鵬紫溟 (こくほうしめい) による 《虎図》 の別バージョンも印象的な一枚でした。
谷鵬紫溟 《虎図》 福岡市博物館蔵
虎の縞が、妙なことになっています。
縞というよりは、血管のよう。
刃牙にしか見えない。
範馬刃牙(37) (少年チャンピオン・コミックス)/秋田書店
ちなみに、作者の谷鵬紫溟は、長崎版画の版元でもあったそうです。
オーナー兼絵師。
《虎図》 も描きこみが、執拗な感じがしましたが。
さらに、合わせて展示されていた 《唐蘭風俗図屏風》 は、もっと執拗な感じ。
谷鵬紫溟 《唐蘭風俗図屏風》 福岡市博物館蔵
しかも、絵の中だけでなく、屏風をグルリと囲んでいる縁も、実は谷鵬紫溟の手描き。
さらに、上の画像ではわかりませんが、連結部の奥まった部分も谷鵬紫溟が手描きしています。
執拗すぎて、クドイ (笑)
ある意味、必見の一枚です。
知られざる長崎版画の世界をたっぷりと堪能できる展覧会。
この春、板橋区立美術館で異国情緒を味わってみては?
会期は1か月しかないので、お早めに!
1位を目指して、ランキングに挑戦中!(現在7位です)
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!