山種美術館で開催中の “生誕120年 福田平八郎と日本画モダン” に行ってきました。
今年で、生誕120周年を迎える日本画家・福田平八郎 (1892~1974) は、僕の好きな日本画家の一人。
特に、今回のポスターにも使われている代表作 《雨》 を、
所蔵先である東京国立近代美術館で初めて観た時の衝撃は、今でも忘れられません!
(注:後期 [6/26~7/22]に展示されます)
《雨》 と言いつつ、瓦を描くという斬新性。
(よく見ると、瓦に、雨滴が落ちているのが、わかります)
それも、極端にズームして、瓦だけで画面を構成したという斬新性。
そして、その絶妙なトリミングを駆使している斬新性。
こんなに斬新な日本画が、50年以上も前に描かれていたということに、衝撃を受けたのです。
しかも、こんなにも、斬新な日本画を描きながらも、名前は、 『平八郎』 。
江戸時代かっ!
そのギャップも、衝撃でした (笑)
ちなみに、 『平八郎』 は、本名。
同時代の画家は、 『蓬春』 や、 『竹喬』 や、『青邨』 やら、
カッコイイ (?) 雅号を名乗っているのに、何ゆえ、平八郎??
その謎を解くカギが、今回の美術展にありました。
実は、福田平八郎も、若き頃は、雅号で活動していたそうで、
その時代の作品 (《桃と女》) が出展されていたのです。
大分県生まれの福田平八郎が名乗っていた、その雅号とは・・・
『九州』
福田九州。
それは、カッコ悪い (笑) !!
本人も、全然しっくり来なかったそうで、本名で活動することに決めたのだとか。
きっとお茶目な人だったのでしょう。
お茶目な人と云えば、今回の美術展で紹介されている福田平八郎ご本人の写真も必見。
これまで、数多くの美術展で、数多くの芸術家の肖像を目にしていますが、
犬とじゃれ合っている姿の肖像写真は、初めて目にしました。
山種美術館は、どうして、この写真を選んだし (笑)
また、その犬が、福田平八郎とほぼ同じサイズなのが、印象的な写真。
犬が大きかったのか。はたまた、福田平八郎が小さかったのか。
いろいろと想像力を掻き立てられる一枚ですw
福田平八郎のことが、
さらに好きになったところで、 《筍》 に、
《芥子花》 に、
《彩秋》 に、
そして、京都国立近代美術館所蔵の 《花菖蒲》 に、
(注:前期 [5/26~6/24]に展示されます)
と、その作品の数々をじっくりと堪能いたしました。
いやぁ、どれもこれもモダンですね♪
そして、それらの後に待っていたのが、
今回の美術展の前期の目玉作品 《漣》 です。
こちらは、さざ波立った湖の水面を描いた一枚。
画像で見た限りでは、浴衣の柄にしか見えないでしょうが。
実際に、絵を前にして、少し離れた位置に立つと、湖面にしか見えないから不思議です。
しかも、心なしか、サワサワ、ソヨソヨと、湖面が揺らめいているように見えるのです。
「あぁ、風が気持ち良いなぁ :*:・( ̄∀ ̄)・:*:」
終いには、実際には、吹いているはずのない風も感じられ、
この絵の前に立っているだけで、心がスーッと落ち着いてきました。
ヒーリング効果があるとされる “f分の1のゆらぎ” が現れているのでしょう (←よくわかってない)
実は、この 《漣》 には、とある秘密が。
《漣》 は、プラチナ箔の上に、群青の顔料で描かれた作品なのですが、
そのプラチナ箔の下には、さらに金箔が押されているのだそうです。
一体、なぜ??
元々、平八郎が、表具師に発注したのは、銀の屏風でした。
にも関わらず、何がどう間違ったのか、届いたのは、金の屏風。
しかし、出展の〆切は、もうそこまで迫っています。
平八郎、大ピンチ!!
そこで、金の屏風の上に、プラチナ箔を重ねると云う荒技に出たのです (笑)
ところが、蓋を開けてみれば、
プラチナ箔オンリーよりも、プラチナ箔on金箔の方が、
より太陽光を浴びた水面らしくなっているではないですか。
まさに、瓢箪から駒。
会場では、参考として、
プラチナ箔と、金箔にプラチナ箔を重ねたものが、並べて展示されていました。
微妙な違いですが、確かに、金箔にプラチナ箔を重ねたものの方が、太陽光を感じる気がします。
日本美術史に残る名画の裏には、こんなエピソードがあったのですね。
《漣》 に、ひとしきり感動した後、
「ここからさらに、どんな平八郎作品が待っているのか♪」
と、高まる期待を胸に会場を進むと、衝撃の事実が!!
そこに展示されていたのは、
小野竹喬の 《晨朝》 に、
徳岡神泉の 《芋図》 に、
(注:前期 [5/26~6/24]に展示されます)
加山又造に、川端龍子に、土田麦僊に、俵屋宗達に・・・。
「福田平八郎作品が無いじゃないか (泣)!」
小野竹喬も、徳岡神泉も、加山又造も好きですよ。
好きですが、今日は、福田平八郎気分なのです。
福田平八郎でお腹いっぱいにしたいのです。
しかし、無情にも、今回の美術展は、
“福田平八郎と日本画モダン” と云うよりは、
「福田平八郎」 と 「日本画モダン」 の2本立ての美術展と云った感じで。
しかも、 「福田平八郎」 特集は、美術展会場の4分の1、
あとの4分の3を使って、 「日本画モダン」 特集を行っていました。
ちなみに、この 「日本画モダン」 という言葉は、
美術評論家の山下裕二さんが、今回の美術展のために考えた造語だそうで。
日本画の世界におけるモダンな作品の数々を、
「日本画モダン」 として、今回の美術展で紹介していました。
こちらの特集に関しての率直な感想としては、 「なんだかなぁ (苦笑)」 の一言。
むしろ近代の日本画で、モダンでない日本画の方が珍しいわけで。
「日本画モダン」 って言葉は、ほとんど意味をなして無い気がしました。
実際、 「日本画モダン」 特集は、
単なるノンジャンルの近代日本画展と云った印象でしたし。。。
ポスターでは、
明らかに、福田平八郎を前面に押し出していながら。
(作品にしても、文字の大きさにしても)
実際は、 「日本画モダン」 なる言葉で、
山種美術館のコレクションあれこれを、ただ並べたような美術展でした。
福田平八郎が好きで、それ目当てに行く方は、少しご用心。
《漣》 が観られたので、2つ星。
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生誕120年 福田平八郎と日本画モダン
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