~前回までのあらすじ~
Trick or National treasure.
国宝を見せてくれなきゃ、イタズラするぞ!
ハロウィンも盛り上がっていますが、
今年は国宝イヤーということもあり、国宝もそれなりに盛り上がっています。
そんな国宝ブームに先駆けて、2011年から国宝を追い求めている国宝ハンター。
これまでにハンティングした数は、921件。
その数をさらに伸ばすため、今日も国宝のもとへ―
おはようございます。
時刻は、朝6時53分です。
連日行列が発生しているという大人気の “国宝展” 。
その第Ⅱ期を観るために、京都国立博物館にやってきましたが・・・
さすがに、この時間には誰も並んでいませんね。
なぜなら、開館は9時30分。
開門の9時15分までだって、まだ2時間以上もあります。
今回のミッションは何と言っても、
大徳寺龍光院が所蔵する 《曜変天目茶碗》(ジャンル:工芸品) を目にすること。
3点ある国宝の 《曜変天目茶碗》 のうち、もっとも目にするのが困難な激レアの 《曜変天目茶碗》 です。
「対面できる日が来ようとは!しかも、1番乗り!!」
と、誰もいない門の前でニヤニヤしていると、背後から年配の女性に声を掛けられました。
「あのー、並んでいるんですか?」
「・・・あ、はい。」
「じゃあ、ここが先頭ですよ」
そう言って、僕の後ろに並ぶ女性。
“えー、まだ7時だよ。もう並ぶ人、いるの?!”
ここに到着するのがあと5分遅れていたら、とゾッとしました。
しかも、その女性。
折り畳みの椅子を取り出し、座り始めたのです。
“えー、本格的!iPhone発売日に並ぶ人みたいじゃん!”
そう言えば、正しい並ぶ位置を指摘されましたっけ。
ということは、国宝展の並びの常連さん?
いろいろパニックです。
なるべく後ろの人を意識しないように、
持参した本を読んで時間を潰していましたが。
やはり、気になります。
これから2時間以上も何をして待つつもりなのでしょう??
で、チラ見。
“うわー、展示リストを片手に、シミュレーションしてる!”
後ろの人が気になりすぎて、本の内容が全然入ってきません。
あぁ、あと2時間どうしよう。
“誰か来ないかなぁ”
そんな僕の願いが通じたのでしょうか。
7時10分には、早くも3人目が。
そして、その後も、続々と人がやってきます。
いやはや、国宝展の人気を甘く見ていました。
時計の針が8時を差した時には、30人近くが並んでいました。
さらに、30分後。
8時半には、行列はすでに100人ほどに達しています。
そこで・・・
予定が前倒しされ、8時40分には開門。
そのまま館内へと誘導され、8時45分の時点で展示室近くで待機することとなりました。
なお、その後も列は伸び続け、9時25分の段階では、300人を超える人が並んでいました。
国宝展、恐るべし。
ただ、そんな大行列の先頭にいるのは、この僕です。
7時前から待った甲斐がありました!
そして、9時30分。
「先頭の方から、展示室にお進みください」 のアナウンスが。
他の国宝には目もくれず、《曜変天目茶碗》 へと足早に向かいます。
(脳内を流れる『炎のランナー』 の主題歌)
“待ってろー、《曜変天目茶碗》!ついに対面の時だー!!”
・・・・・と、次の瞬間。
そんな僕の脇を、一組の中年の男女が駆け抜けていきました。
“えっ?!”
明らかに、《曜変天目茶碗》 のほうを目指し走っています。
“何その福男みたいなパターン!”
あの2人、行列では後ろのほうにいたはず。
“こっちは1番乗りを目指して、7時前から並んでるんだ!負けてたまるか!!”
・・・・・と、一瞬、ダッシュしかけたのですが。
国宝ハンターである前に、アートテラー。
“博物館内で走るって、アートテラーとして、どうなのよ?”
と冷静な自分が出てきてくれたおかげで、非常識な行動をとるには至りませんでした。
展示ケースに到着すると、先ほどの2人が張り付くように鑑賞しています。
そこまで人を惹き付ける大徳寺龍光院の 《曜変天目茶碗》。
確かに美しかったですが、照明のせいか、内側の傷が結構目立っていました。
あと、他の2点の曜変天目の光が幽玄的な印象であるのに対して、龍光院のは光がシャープで強め。
レーザービームのようでした。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
別に2時間半も並ぶ必要はなかったかも。うん。
第Ⅲ期は、ムリせず開館してから来ることにしよう。
ちなみに、第Ⅱ期では他にも、
・《紙本著色絵因果経》(ジャンル:絵画)
・《紙本墨画禅機図断簡〈因陀羅筆/(丹霞焼仏図)〉》(ジャンル:絵画)
・《伝教大師將来目録〈貞元二十一年五月十三日/明州剌史鄭審則跋〉》(ジャンル:古文書)
・《竺仙梵僊墨蹟〈明叟斉哲開堂諸山疏/(絹本)〉》(ジャンル:書跡・典籍)
4件の国宝をゲット。
また、京博のライバル (?) トーハクでも、
《古文尚書〈巻第六/〉》(ジャンル:書跡・典籍) をゲットしています。
今現在の国宝ハンティング数 927/1108
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第百五十話 国宝ハンター、歯噛みする!
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