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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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版画の景色 現代版画センターの軌跡

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埼玉県立近代美術館で開催中の展覧会、
“版画の景色 現代版画センターの軌跡” に行ってきました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、版画の普及とコレクターの育成を目指して、
1974年に誕生した現代版画センターにスポットを当てた展覧会です。
活動期間は、10年あまり。
世に送り出した版画作品の数は、実に700点を超えるのだとか。
今回の展覧会では、そのうちの約3分の1ほどの作品が展示されています。




現代版画センターとタッグを組んだアーティストは、およそ80人。
その中には、草間彌生さんや、




安藤忠雄さんといった今をときめく芸術家の方たちも。




さらには、彫刻のイメージが強い・・・というか、
彫刻作品しか見たことない関根伸夫さんの版画作品もありました。
しかも、彫刻作品のクールな印象とは打って変わって、版画作品はユーモラスな作風。
意外な一面を覗かせています。




個人的には、美術界きってのスピード狂・菅井汲の版画作品や、




エンボスの表現を巧く利かせた高柳裕さんの作品が、味わい深くてお気に入りでした。




さてさて、当たり前ですが、ここに展示されている作品はすべて販売されていたもの。
気になるのは、そのお値段。

おいくら万円なのでしょうか??

こちらは、現代版画センターが最初にエディション販売した靉嘔さんの 《I love you》 という作品。




限定11111部 (!) で、価格は1000円 だったとのこと。
えっ、そんなに安かったの?!
確かに、この金額ならば、版画が世に普及した野も納得。
コレクターが育成されたことも納得です。
今さらながら、現代版画センターの功績に拍手を送りたくなりました。


また、版画作品を制作するだけにとどまらず、
版画の普及のために、さまざまなイベントを開催していたという現代版画センター。
展覧会では、各種資料を交えて、そんな活動の数々も紹介していました。
その中でも、とりわけ注目すべきは・・・





宇都宮の巨大地下空間でのウォーホル展。
会場が会場だけに、当時かなり話題となったそうです。
もし、今開催されたら、インスタ映え効果で、さらに話題になりそうな企画です。


資料と言えば、数多くの美術家や批評家が寄稿した現代版画センターニュースも展示されています。
実際に、手に取って読むことも出来ました。





ページをめくるたびに、現代版画センターや、
関わった芸術家、コレクターたちの版画熱のようなものが伝わってきます。
この時代の熱気を知っている人も、知らない人も一見の価値ありです。
星


・・・・・と、それだけに。
なぜ10年あまりで、その活動にピリオドが打たれたのか、理由が気になります。
しばらくして、会場であっけなく、その答えが判明しました。
なんと倒産してしまったとのこと。
なるほど。
ピリオドを打ったのではなく、打たざるを得なかったのですね。

さて、現代版画センターが倒産したのは、1985年の2月。
閲覧可能なファイリングされた関連資料の中に、
その1月前に現代版画センターから会員向けに送られたDMもありました。
そこに書かれていたのは、「今年もよろしくお願いいたします」 的な一文。
なんなら、カレンダーがに当たるプレゼントキャンペーンもしていました。
もちろん販売の案内も。
倒産する気配は、これっぽちも醸し出されていませんでした。
「てる●くらぶ」 や 「はれ●ひ」 とはまた違うでしょうが。
倒産から30年以上経った今だからこそ、
ようやく開催出来た展覧会だったような気がしてきました。

ちなみに、現代版画センターの代表だった方は、
現在、『ときの忘れもの』 というギャラリーのオーナーをしているそうです。
今回の展覧会を通じて、その過去の事実を知った人も少なくないはず。
まさに 『ときの忘れもの』 を掘り起こすような展覧会。




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