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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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スイスの絵本画家 クライドルフの世界

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昨日紹介した “2012イタリア・ボローニャ国際絵本原画展” に引き続き、
本日も、絵本にまつわる美術展をご紹介いたします。
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の “スイスの絵本画家 クライドルフの世界” です。



・・・・・おそらく。
多くの方が、 「クライドルフって誰?」 と頭に疑問符が浮かんだことでしょう。

ご心配なく。
僕も、同じ疑問符が浮かびました (笑)


というわけで、まずは、クライドルフについてのご紹介を。
エルンスト・クライドルフ (1863~1956) は、
本国スイスでは、いまでも子どもたちに愛され読み継がれているスイスの国民的絵本画家。
主な代表作に、 『くさはらのこびと』 や、

くさはらのこびと (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)/福音館書店

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『バッタさんのきせつ』

バッタさんのきせつ/ほるぷ出版

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などがあります。
元々は、画家志望だったクライドルフですが、
美術学校の学費を稼ぐための無理な生活と、度重なる家族の死に打ちのめされ、
自然豊かなアルプスの街で、療養生活を送ることに。
そんな療養生活のある日、アルプスの谷間の斜面の陽だまりに、
季節外れのプリムラとリンドウが咲いているのを発見したクライドルフ。
その美しさに感動し、友人に見せてあげようと、花を摘んで帰りました。

・・・ところが。

「花は、あの場所で咲いていたからこそ、美しかったんだ・・・!
 何で、勢いで摘んできちゃったんだよ、もう。
 クライドルフのバカバカバカ (><)」


と、激しく後悔&猛省。
そこで、咲いていたプリムラとリンドウの美しさを、この世に残すべく、
せめてもの罪滅ぼしに、スケッチを開始します。
そうして描かれたのが、こちらの一枚↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-プリムラ、リンドウ、エーデルワイス


そして、この完成したスケッチを眺めていると、
クライドルフの頭の中には、とある光景が浮かんだのです。
それが、こちら↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-『花のメルヘン』より 《プリムラの花園》


プリムラとリンドウを擬人化したキャラクター達の物語です。
この構想をもとに、完成したのが、 『花のメルヘン』 という一冊の絵本。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-花のメルヘン

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このデビュー作を皮切りに、クライドルフは、次々と絵本を発表していきます。
その主人公は、バッタであったり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-バッタ


こびとであったり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-こびと


と、小さな生き物たち。
クライドルフは、類い稀なる空想力で、彼らの世界をファンタジーたっぷりに描きました。


今回の美術展では、そんなクライドルフの生み出した絵本の原画が、多数展示!
さらには、クライドルフ初期の油彩画や関連資料も展示。
約220点ものボリュームで、クライドルフの世界が紹介されていました。
日本初のクライドルフ展にして、日本最大のクライドルフ展です。
星
絵本好きは、必見の美術展と言えましょう♪


クライドルフに馴染みがない人が多いことを想定しているからでしょうか。
今回のBunkamura ザ・ミュージアムでの展示は、
いつも以上に、世界観の再現に力を入れていたような気がします。
章ごとのキャプションもメルヘンチックですし、
クライドルフの絵本を読めるコーナーも、とてもメルヘンチック。

さらに、美術展で感心させられたのが。
アルプスに住んでいたこともあり、
クライドルフが描く花のほとんどが、日本人に馴染みの無い高山植物。
そのため、 「エリンギウムが・・・」 とキャプションに書かれても、どんな花なのかピンと来ません。
でも、今回のキャプションは、花の写真を載せてくれているので、
その都度、作品に登場する花とその花を見比べることが出来ました。
こういう親切で、小さな気遣いは、とても有難いです。


と、そこまで美術展を褒めておきながら、なぜ、一つ星なのかと言いますと、

それは、クライドルフの世界が、僕にはちょっと怖かったから (笑)
(怖いと感じない人のが、多いと思います。そういう方には、2つ星の美術展ではないでしょうか)

メルヘンと言ってしまえば、メルヘンですが。
“花やバッタが擬人化して見える” や、
“こびと (=小さいおじさん) が見える” というのは、ちょっと不思議ちゃん系のような。

《自画像》 には、クライドルフには見えたとされる小さな生き物たちの姿も・・・。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-自画像


可愛い。
けど、考えようによっては怖い。


また、最高に衝撃だった作品が、
〈運命の夢と幻想〉シリーズと題された17点からなる水彩画の連作のうちの 《手の夢》
(画像は、ありません。ありからず)
草むらから伸びる無数の白い手。
ホラー以外の何物でもありません。

美術展会場には、何度も、 『メルヘン』 という言葉が登場していましたが。
一瞬、 『メンヘル』 と空目してしまったのは、ここだけの話です。


最後に、ポスターにも使われている 《『花を棲みかに』より 《まま母さん》》 をご紹介。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-『花を棲みかに』より 《まま母さん》


パンジーを眺めていたら、花弁の模様が人の顔のように見えてきたのだそうな。
これは、もはやパンジーの怪人です(((゜д゜;)))




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