現在、練馬区立美術館にて、月岡芳年の大々的な回顧展が開催されていますが。
その兄弟子にに当たる落合芳幾にスポットを当てた展覧会が、現在、太田記念美術館で開催中です。
弟弟子の月岡芳年や、師匠の歌川国芳は、
ちょくちょくスポットを浴びているというのに。
これまでスポットを浴びる機会がほとんどなかった落合芳幾。
浴びたとしても、月岡芳年や歌川国芳のバーターで紹介される機会の多かった落合芳幾。
そんな落合芳幾の画業に迫る日本初の・・・いや、世界初の展覧会です。
落合芳幾といえば、やはり代表作は、月岡芳年と競作した 《英名二十八衆句》。
“血みどろ絵” “無惨絵” の代表作としても知られるシリーズです。
落合芳幾 《英名二十八衆句 佐野治郎左エ門》(個人蔵)
今回の展覧会では、シリーズ全28点のうち、
落合芳幾が手掛けた14点すべてがそろい踏み。
スプラッター映画ばりの血液ブシャーな作品が多いので、心臓の弱い方はどうぞご注意くださいませ。
かくいう僕も血が苦手なので、顔を両手で覆い隠しつつ、指と指の間からチラチラ鑑賞しました。
その中で特にまぶたの裏に焼き付いているのが、《英名二十八衆句 西門屋啓十郎》 です。
落合芳幾 《英名二十八衆句 西門屋啓十郎》(個人蔵)
西門屋啓十郎は、曲亭馬琴作の 『新編金瓶梅』 の主人公。
尼の陸水の所持金が欲しかった啓十郎は、マサカリで彼女の首をスパーン!
切断面から、血がピューピュードバドバ。
残酷この上ないシーンです。
しかし、実は、このシーンは、陸水が啓十郎に見せた幻術なのだとか。
なんだ!現実じゃないんだε-(´∀`*)ホッ
夢オチのようなもの。
さらに、今回の展覧会では、落合芳幾のライフワークとして知られる、
東京日日新聞 (現在の毎日新聞の前身) という錦絵新聞も数点まとめて紹介されています。
錦絵新聞とは、話題性の高い記事をビジュアル化 (=錦絵化) したもの。
当然、基本的には、世間を騒がすような事件や事故などが取り上げられていますが。
中には、「・・・それ、取り上げるほど??」 と思わず首を傾げたくなるような記事もありました。
例えば、《東京日日新聞 四百四十五号》 。
落合芳幾 《東京日日新聞 四百四十五号》(千葉市美術館蔵)
明治6年8月4日のこと。
梅村豊太郎なる男性が地震で目を覚ましたところ、そばで寝ていた子供が泣き始めたそうな。
枕元に目をやると、そこには、なんと三つ目の妖僧が!
しかも、その頭がみるみると伸び、天井を突き抜けました。
しかし、豊太郎は特に驚くことなく、冷静に妖僧を打ち倒します。
すると、歳を取った狸が現れたのだとか。
三つ目の妖僧の正体は、古狸だったのですね・・・・・・・って、どんなニュースだよ!
さらに、もう一発。
落合芳幾 《東京日日新聞 六百九十七号》(太田記念美術館蔵)
志摩国 (今の三重県) の甲賀の浦で起きた事件が紹介されています。
とある船が火事に見舞われてしまい、乗組員たちは海中に逃げ込んだそうです。
そこに現れたのが、大ザメ。
なんと乗組員全員を呑みこんでしまったのだとか。
まさか、日本にそんなUMAがいたとは。
新聞というよりも、ムーの記事。
また、今回の世界初の落合芳幾展では、
これまであまりフィーチャーされなかった落合芳幾の一面も紹介されています。
血みどろ絵のイメージが強いですが、実は、師匠の国芳譲りのユーモアセンスの持ち主。
思わずクスッとなるような作品も、意外と多く発表していました。
個人的にお気に入りなのは、《善悪思の案内》 という作品。
落合芳幾 《善悪思の案内》(太田記念美術館蔵)
遊郭の甘い誘惑に心を迷わせる男性。
“行っちゃおうかなぁ?いや、ダメだダメだ!今日は行かないゾ”
心の中の天使と悪魔ならぬ、善と悪が戦っています。
しかし、悲しいかな。
善に比べて、悪のほうが圧倒的に数が多い!
悪の数的優位。
善に勝ち目はありません。
誘惑に負けるのは確実でした。
それと、インパクトが強かったのは、《時世粧年中行事之内 競細腰雪柳風呂》 という作品です。
銭湯の様子を描いた作品。
裸の女性がいっぱい登場しているので、ムフフな絵なのかと思いきや、お色気要素はゼロでした。
何が理由なのかは不明なのですが、素っ裸で大暴れしている女性が描かれています。
それに驚く女性。必死になだめようとする女性。巻き込まれて転ぶ女性。
その様子を覗きに来た男性・・・・・って、えっ?男性?!
このあと、もっと大きな騒動となることでしょう。
最後に、個人的にもっとも気になった一枚をご紹介。
《今様疑源氏 二十一 乙女 浦島太郎》 です。
玉手箱を開いた浦島太郎。
すると、箱の中から煙が立ちあがり、その煙に触れた部分だけがお祖父さんに!
何そのシステム (笑)!
もうこうなったら、全身に煙を浴びるしかないです。
今のままだと、頭頂部だけお祖父さんという何とも気持ち悪い姿になってしまいます。
乙姫様も何でこんなものをお土産にくれたというのか。
罪な女です。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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その兄弟子にに当たる落合芳幾にスポットを当てた展覧会が、現在、太田記念美術館で開催中です。
弟弟子の月岡芳年や、師匠の歌川国芳は、
ちょくちょくスポットを浴びているというのに。
これまでスポットを浴びる機会がほとんどなかった落合芳幾。
浴びたとしても、月岡芳年や歌川国芳のバーターで紹介される機会の多かった落合芳幾。
そんな落合芳幾の画業に迫る日本初の・・・いや、世界初の展覧会です。
落合芳幾といえば、やはり代表作は、月岡芳年と競作した 《英名二十八衆句》。
“血みどろ絵” “無惨絵” の代表作としても知られるシリーズです。
落合芳幾 《英名二十八衆句 佐野治郎左エ門》(個人蔵)
今回の展覧会では、シリーズ全28点のうち、
落合芳幾が手掛けた14点すべてがそろい踏み。
スプラッター映画ばりの血液ブシャーな作品が多いので、心臓の弱い方はどうぞご注意くださいませ。
かくいう僕も血が苦手なので、顔を両手で覆い隠しつつ、指と指の間からチラチラ鑑賞しました。
その中で特にまぶたの裏に焼き付いているのが、《英名二十八衆句 西門屋啓十郎》 です。
落合芳幾 《英名二十八衆句 西門屋啓十郎》(個人蔵)
西門屋啓十郎は、曲亭馬琴作の 『新編金瓶梅』 の主人公。
尼の陸水の所持金が欲しかった啓十郎は、マサカリで彼女の首をスパーン!
切断面から、血がピューピュードバドバ。
残酷この上ないシーンです。
しかし、実は、このシーンは、陸水が啓十郎に見せた幻術なのだとか。
なんだ!現実じゃないんだε-(´∀`*)ホッ
夢オチのようなもの。
さらに、今回の展覧会では、落合芳幾のライフワークとして知られる、
東京日日新聞 (現在の毎日新聞の前身) という錦絵新聞も数点まとめて紹介されています。
錦絵新聞とは、話題性の高い記事をビジュアル化 (=錦絵化) したもの。
当然、基本的には、世間を騒がすような事件や事故などが取り上げられていますが。
中には、「・・・それ、取り上げるほど??」 と思わず首を傾げたくなるような記事もありました。
例えば、《東京日日新聞 四百四十五号》 。
落合芳幾 《東京日日新聞 四百四十五号》(千葉市美術館蔵)
明治6年8月4日のこと。
梅村豊太郎なる男性が地震で目を覚ましたところ、そばで寝ていた子供が泣き始めたそうな。
枕元に目をやると、そこには、なんと三つ目の妖僧が!
しかも、その頭がみるみると伸び、天井を突き抜けました。
しかし、豊太郎は特に驚くことなく、冷静に妖僧を打ち倒します。
すると、歳を取った狸が現れたのだとか。
三つ目の妖僧の正体は、古狸だったのですね・・・・・・・って、どんなニュースだよ!
さらに、もう一発。
落合芳幾 《東京日日新聞 六百九十七号》(太田記念美術館蔵)
志摩国 (今の三重県) の甲賀の浦で起きた事件が紹介されています。
とある船が火事に見舞われてしまい、乗組員たちは海中に逃げ込んだそうです。
そこに現れたのが、大ザメ。
なんと乗組員全員を呑みこんでしまったのだとか。
まさか、日本にそんなUMAがいたとは。
新聞というよりも、ムーの記事。
また、今回の世界初の落合芳幾展では、
これまであまりフィーチャーされなかった落合芳幾の一面も紹介されています。
血みどろ絵のイメージが強いですが、実は、師匠の国芳譲りのユーモアセンスの持ち主。
思わずクスッとなるような作品も、意外と多く発表していました。
個人的にお気に入りなのは、《善悪思の案内》 という作品。
落合芳幾 《善悪思の案内》(太田記念美術館蔵)
遊郭の甘い誘惑に心を迷わせる男性。
“行っちゃおうかなぁ?いや、ダメだダメだ!今日は行かないゾ”
心の中の天使と悪魔ならぬ、善と悪が戦っています。
しかし、悲しいかな。
善に比べて、悪のほうが圧倒的に数が多い!
悪の数的優位。
善に勝ち目はありません。
誘惑に負けるのは確実でした。
それと、インパクトが強かったのは、《時世粧年中行事之内 競細腰雪柳風呂》 という作品です。
銭湯の様子を描いた作品。
裸の女性がいっぱい登場しているので、ムフフな絵なのかと思いきや、お色気要素はゼロでした。
何が理由なのかは不明なのですが、素っ裸で大暴れしている女性が描かれています。
それに驚く女性。必死になだめようとする女性。巻き込まれて転ぶ女性。
その様子を覗きに来た男性・・・・・って、えっ?男性?!
このあと、もっと大きな騒動となることでしょう。
最後に、個人的にもっとも気になった一枚をご紹介。
《今様疑源氏 二十一 乙女 浦島太郎》 です。
玉手箱を開いた浦島太郎。
すると、箱の中から煙が立ちあがり、その煙に触れた部分だけがお祖父さんに!
何そのシステム (笑)!
もうこうなったら、全身に煙を浴びるしかないです。
今のままだと、頭頂部だけお祖父さんという何とも気持ち悪い姿になってしまいます。
乙姫様も何でこんなものをお土産にくれたというのか。
罪な女です。
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