原美術館がキュレーターの育成や若手作家の支援を目的に開催する不定期のプロジェクト。
その名も、 “ハラ ドキュメンツ” 。
1992年に始まり2002年まで、
全8回の “ハラ ドキュメンツ” が開催されてきたそうですが。
今回、実に10年ぶりに、第9弾となる “ハラ ドキュメンツ” が開催されています。
それが・・・
“ハラ ドキュメンツ 9 安藤正子ーおへその庭”
会期は、8月19日までです。
さてさて、今回の “ハラ ドキュメンツ” で、
フィーチャーされている安藤正子さん (1976~) とは、一体どんなアーティストなのでしょうか。
僕もこの美術展を通じて、初めて知る方だったのですが。
何でも、これまでに開催した展覧会はグループ展を合わせても、わずか3回!
しかも、10年近い画業の中で発表した作品は 10点ほど!!
…と、驚くほどに、ゆったりとしたペースで活動されている作家さん。
そんなにも作品数が少ないのは、
安藤さんに、やる気がないから・・・ではなく (笑)
その独自の作品スタイルゆえ、一点を作り上げるのに、
大変な労力と時間が必要となってしまうからに他なりません。
では、実際に、彼女の作品をご覧頂きましょう。
2007年 パネル張りカンヴァスに油彩 ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery
こちらは、今回のポスターにも使われている 《竜の背中》 という作品。
実際は、竜ではなく、鹿の背中が描かれている、可愛らしい一枚です。
“・・・・・えっ、可愛いことは可愛いけれど、どこに、そんなテマヒマがかかっているのか、ですか?”
う~ん。確かに。
残念ながら、このブログの画像では、安藤作品の魅力が、全く持って伝わりません。
これほどまでに、実物の良さが、画像では伝わらない作家さんも珍しいのでは?
実際の安藤さんの作品は、
画面全体が磁器や蝋のように、滑らかな色合い・風合いをしています。
その独特の艶やかな絵肌は、まさに新感覚の魅力。
“思わず触ってみたくなる絵画” は、これまでにもありましたが、
“思わず頬ずりをしてみたくなる絵画” は、安藤さんの作品が初めて。
視覚だけではなく、五感すべてに訴えかけてくる、とても感覚的で瑞々しい絵画でした。
この作風なら、寡作なのも納得。
これからも、是非是非、自分のペースで、素敵な作品を世に送り出して頂きたいものです。
そんな安藤作品が、今回の美術展には、
美術展のタイトルにもなっている 《おへそへの道》 や、
2010 年 パネル張りカンヴァスに油彩 190×140cm ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery
鉛筆で描かれた 《雑種》 をはじめ、
2008 年 紙に鉛筆 84.5×84.5cm ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery
なんとなんと未発表作品12点を含む17点も展示されています!
制作が大変だから…なのでしょうか、
安藤作品で描かれている人物は、皆、目がうつろです (笑)
今回展示されていた作品の中で、
僕の一番お気に入り作品は、 《雲間にひそむ鬼のように》 という2点組の作品。
(画像はありません。あしからず)
画面いっぱいに大きく描かれた孔雀の姿が、
とても優雅で美しく、その色合いと風合いに、吸い込まれそうになりました。
その素敵な作品を、原美術館の居心地のいい空間の中で観られるというのは、まさに至福の体験。
ご馳走様でした。
ちなみに。
学芸員さんの意向なのでしょうか。
会場には、安藤さんの作品についての説明は、ほとんどなく、
帰宅後、インターネット上で見つけた・・・
・1_安藤正子メールインタビュー [原美術館]
・2_安藤正子メールインタビュー [原美術館]
・3_安藤正子メールインタビュー [原美術館]
というページを通じて、上で紹介したような安藤作品の秘密を知った次第です。
せっかくの安藤正子さんの初となる美術館の個展なのですから、
こうした説明も、美術館の中でした方が良かったのではないかという気がします。
美術展会場だけでは、安藤さんが、どんな風に制作しているのか、全くわかりませんでした。
(会場で感じた “押し花っぽいなぁ” という僕の直感は、あながち間違っていませんでしたが)
その辺は、不親切な感じがしたので、1ツ星。
ともあれ、今後の安藤正子さん、
そして、今後の “ハラ ドキュメンツ” にも期待です
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ハラ ドキュメンツ 9 安藤正子ーおへその庭
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