現在、静岡県立美術館で開催されているのは、
“めがねと旅する美術展 視覚文化の探究” という展覧会です。
展覧会のキーワードは、ズバリ 「めがね」。
東京メガネ4代目の白山晰也氏が蒐集した貴重なアンティーク眼鏡の数々や、
《鉄製 頭痛おさえ眼鏡》 1860-70年代 株式会社東京メガネ蔵
浮世絵の一種である眼鏡絵を見るための器具といった・・・
《反射式覗き眼鏡(英国製)》 18世紀 町田市立国際版画美術館蔵
「めがね」 そのものも紹介されていましたが、
米田知子さんの 「眼鏡シリーズ」 や現代美術家Mr.(ミスター) による眼鏡っ子の新作など、
「めがね」 をモチーフにした美術作品の数々も紹介されています。
さらに、「めがね」 とは、「見る」 ための道具。
ぼんやりとしか見えなかったものを、クリアに見せてくれるアイテムです。
また、視界をクリアにする眼鏡だけでなく、
コナン君の眼鏡のように犯人の位置を見せてくれるものや、
ノンタックの眼鏡のように社会の仕組みを見せてくれるものもあります。
美術作品も、またしかり。
僕らには見えていなかった世界や、
僕らがまだ見たことがない世界を、時に美術作品は見せてくれます。
そんな “この世界” を 「見る」 指針となるような美術作品も紹介されていました。
現代アートを中心に、江戸絵画、写真、VRなど幅広いジャンルの中から、
学芸員さんのお眼鏡にかなった約100作家約200点の作品が、日本中から大集結しています。
しかも、展覧会のためだけに、
オリジナルの短編アニメーションを制作してしまうほどの気合の入りようです。
(↑こちらの 『押絵ト旅スル男』 の全編は、展覧会場でのみ上映されています!)
それだけに、出展されていた作品は、どれもこれも魅力的かつ刺激的だったのですが、
その全部を紹介していたら、さすがにキリがないので、いくつか厳選してご紹介いたしましょう。
まず何と言っても印象的だったのは、岩崎貴宏さんの 《コンステレーション》 という作品。
岩崎貴宏 《コンステレーション》 2017(平成29)年 撮影:木奥恵三 (c)Takahiro Iwasaki, Courtesy of URANO
パッと見は、夜空に輝く星々のように見えますが、
近づいて、よーく見てみると、意外な正体が明らかになります。
描かれていたのは、お馴染みの企業ロゴの数々。
実はこちらの作品は、実際の都市の地図に、
その位置にあるお店や施設のロゴをマッピングした夜景図です。
宇宙を見上げた光景かと思いきや、宇宙から見下ろした光景だった。
何ともウィットの効いた作品です。
会場には、展覧会のための新作・静岡市ver.も展示されていました。
地元民に大ウケ必至の作品です。
地図をモチーフにした作品と言えば、
今和泉隆行(地理人)さんによる 《空想地図「中村市」》 も印象的でした。
今和泉隆行(地理人) 《空想地図「中村市」》 2017(平成29)年 地理人研究所蔵
一見すると、どこにでもあるような普通の地図。
しかし、実は、今和泉さんの頭の中にしか存在しない架空の都市 「中村市 (なごむるし)」 の地図。
彼は、なんとこの地図を、7歳 (!) の時から作り続けているのだとか。
「駅前には、こういう通りがありがち」 とか、
「郊外に大きな運動公園ありがち」 とか、地図あるあるが随所に散りばめられています (笑)
隅から隅まで、詳細に作り込まれているので、
見れば見るほど、本当に中村市が日本のどこかに実在しているような気がしてきました。
それから、個人的に強く印象に残っているのは、
2歳の時からロサンゼルス在住という入江一郎さんの作品です。
入江一郎 《Modernman》 2017(平成29)年 作家蔵 courtesy of eitoeiko
遠くからは、ただの黒い彫刻、ブロンズ像のようにしか見えませんが、
近づいて見てみると、無数の黒い破片で人物像が構成されているのがわかります。
その正体は、なんとサングラス。
たくさんのサングラスを粉々にし、
その破片を立体パズルのように、マネキン状に組み合わせた作品なのだとか。
本来は目を保護する役割のあるサングラスですが、
アメコミに登場する敵役や 『逃走中!』 のハンターように、時には、「悪」 のイメージも。
そんなサングラスのイメージを象徴化した作品なのだそうです。
次回は、サングラスを組み合わせて、
是非、タモさん (国民的司会者のイメージ) を作って欲しいところ。
最後に紹介したいのは、門眞妙 (もんまたえ) さんによる少女を描いたシリーズです。
門眞妙 《いっしょに見に行きたい》 2017(平成29)年 個人蔵
何の変哲もない日常的な光景の手前に、
画面いっぱいに後ろ向きの少女が描かれています。
少女がこちら側 (正面) を向いていたら、
『ときめきメモリアル』 みたいな印象を受けるのでしょうが。
後ろ向きになるだけで、印象がガラッと変わります。
彼女は一体何を見つめているのだろうか?
その視線の先が気になって気になって仕方がありません。
しかし、彼女は、決してその問いに答えてくれることはないでしょう。
彼女の後姿から、拒絶されているような疎外感を味わいます。
これまでにない鑑賞体験でした。
他にも、ファンが多いため、新作が発表されるやいなや、即個人蔵に、
必然的に、美術館で紹介される機会がほとんどない桑原弘明さんの極小のスコープ作品や、
桑原弘明 《Tableau》 2017(平成29)年 個人蔵
今週土曜 (1/19) の 『美の巨人たち』 で紹介される一枚で、
マクロとミクロ、俯瞰、真正面と、多数の視点が入り組んだ不染鉄 《山海図会(伊豆の追憶)》 など、
不染鉄 《山海図会(伊豆の追憶)》 1925(大正14)年 公益財団法人木下美術館蔵
見逃せない作品は、まだまだあります。
メガネ属性向けのイロモノ展覧会と、色眼鏡で見ることなかれ。
視覚文化について深掘りした真面目でユニークな展覧会でした。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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“めがねと旅する美術展 視覚文化の探究” という展覧会です。
展覧会のキーワードは、ズバリ 「めがね」。
東京メガネ4代目の白山晰也氏が蒐集した貴重なアンティーク眼鏡の数々や、
《鉄製 頭痛おさえ眼鏡》 1860-70年代 株式会社東京メガネ蔵
浮世絵の一種である眼鏡絵を見るための器具といった・・・
《反射式覗き眼鏡(英国製)》 18世紀 町田市立国際版画美術館蔵
「めがね」 そのものも紹介されていましたが、
米田知子さんの 「眼鏡シリーズ」 や現代美術家Mr.(ミスター) による眼鏡っ子の新作など、
「めがね」 をモチーフにした美術作品の数々も紹介されています。
さらに、「めがね」 とは、「見る」 ための道具。
ぼんやりとしか見えなかったものを、クリアに見せてくれるアイテムです。
また、視界をクリアにする眼鏡だけでなく、
コナン君の眼鏡のように犯人の位置を見せてくれるものや、
ノンタックの眼鏡のように社会の仕組みを見せてくれるものもあります。
美術作品も、またしかり。
僕らには見えていなかった世界や、
僕らがまだ見たことがない世界を、時に美術作品は見せてくれます。
そんな “この世界” を 「見る」 指針となるような美術作品も紹介されていました。
現代アートを中心に、江戸絵画、写真、VRなど幅広いジャンルの中から、
学芸員さんのお眼鏡にかなった約100作家約200点の作品が、日本中から大集結しています。
しかも、展覧会のためだけに、
オリジナルの短編アニメーションを制作してしまうほどの気合の入りようです。
(↑こちらの 『押絵ト旅スル男』 の全編は、展覧会場でのみ上映されています!)
それだけに、出展されていた作品は、どれもこれも魅力的かつ刺激的だったのですが、
その全部を紹介していたら、さすがにキリがないので、いくつか厳選してご紹介いたしましょう。
まず何と言っても印象的だったのは、岩崎貴宏さんの 《コンステレーション》 という作品。
岩崎貴宏 《コンステレーション》 2017(平成29)年 撮影:木奥恵三 (c)Takahiro Iwasaki, Courtesy of URANO
パッと見は、夜空に輝く星々のように見えますが、
近づいて、よーく見てみると、意外な正体が明らかになります。
描かれていたのは、お馴染みの企業ロゴの数々。
実はこちらの作品は、実際の都市の地図に、
その位置にあるお店や施設のロゴをマッピングした夜景図です。
宇宙を見上げた光景かと思いきや、宇宙から見下ろした光景だった。
何ともウィットの効いた作品です。
会場には、展覧会のための新作・静岡市ver.も展示されていました。
地元民に大ウケ必至の作品です。
地図をモチーフにした作品と言えば、
今和泉隆行(地理人)さんによる 《空想地図「中村市」》 も印象的でした。
今和泉隆行(地理人) 《空想地図「中村市」》 2017(平成29)年 地理人研究所蔵
一見すると、どこにでもあるような普通の地図。
しかし、実は、今和泉さんの頭の中にしか存在しない架空の都市 「中村市 (なごむるし)」 の地図。
彼は、なんとこの地図を、7歳 (!) の時から作り続けているのだとか。
「駅前には、こういう通りがありがち」 とか、
「郊外に大きな運動公園ありがち」 とか、地図あるあるが随所に散りばめられています (笑)
隅から隅まで、詳細に作り込まれているので、
見れば見るほど、本当に中村市が日本のどこかに実在しているような気がしてきました。
それから、個人的に強く印象に残っているのは、
2歳の時からロサンゼルス在住という入江一郎さんの作品です。
入江一郎 《Modernman》 2017(平成29)年 作家蔵 courtesy of eitoeiko
遠くからは、ただの黒い彫刻、ブロンズ像のようにしか見えませんが、
近づいて見てみると、無数の黒い破片で人物像が構成されているのがわかります。
その正体は、なんとサングラス。
たくさんのサングラスを粉々にし、
その破片を立体パズルのように、マネキン状に組み合わせた作品なのだとか。
本来は目を保護する役割のあるサングラスですが、
アメコミに登場する敵役や 『逃走中!』 のハンターように、時には、「悪」 のイメージも。
そんなサングラスのイメージを象徴化した作品なのだそうです。
次回は、サングラスを組み合わせて、
是非、タモさん (国民的司会者のイメージ) を作って欲しいところ。
最後に紹介したいのは、門眞妙 (もんまたえ) さんによる少女を描いたシリーズです。
門眞妙 《いっしょに見に行きたい》 2017(平成29)年 個人蔵
何の変哲もない日常的な光景の手前に、
画面いっぱいに後ろ向きの少女が描かれています。
少女がこちら側 (正面) を向いていたら、
『ときめきメモリアル』 みたいな印象を受けるのでしょうが。
後ろ向きになるだけで、印象がガラッと変わります。
彼女は一体何を見つめているのだろうか?
その視線の先が気になって気になって仕方がありません。
しかし、彼女は、決してその問いに答えてくれることはないでしょう。
彼女の後姿から、拒絶されているような疎外感を味わいます。
これまでにない鑑賞体験でした。
他にも、ファンが多いため、新作が発表されるやいなや、即個人蔵に、
必然的に、美術館で紹介される機会がほとんどない桑原弘明さんの極小のスコープ作品や、
桑原弘明 《Tableau》 2017(平成29)年 個人蔵
今週土曜 (1/19) の 『美の巨人たち』 で紹介される一枚で、
マクロとミクロ、俯瞰、真正面と、多数の視点が入り組んだ不染鉄 《山海図会(伊豆の追憶)》 など、
不染鉄 《山海図会(伊豆の追憶)》 1925(大正14)年 公益財団法人木下美術館蔵
見逃せない作品は、まだまだあります。
メガネ属性向けのイロモノ展覧会と、色眼鏡で見ることなかれ。
視覚文化について深掘りした真面目でユニークな展覧会でした。
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