これまでにも、知られざる大正の家具デザイナーの展覧会や、
究極の名車模型作りに情熱を傾けるモデラーの展覧会などなど、
他の美術館ではやらないような独特の切り口の展覧会を開催しているINAX ギャラリー。
12月から始まった新たな展覧会は・・・
種子のデザイン 旅するかたち (INAX BOOKLET)/岡本 素治
¥1,575
Amazon.co.jp
国内外の植物約150種の種子のデザインに注目した展覧会。
その名も、 “種子のデザイン―旅するかたち―” です。
何とマニアックな展覧会!!
そう思って、正直、あまり…というか、全然期待していませんでした。
いや、普通に考えて、
植物の種にデザイン性も何もあったものではないです。
サカタのタネも、野菜の種をデザイン性で売っていないはずです。
しかし、展覧会を通じて、その考え方は、180度変わりました。
植物の種はデザイン的に優れています。
しかも、合理的で、美的で、種類も豊富で。
観ていて、普通に楽しいです。
むしろ、今まで、植物の種子をテーマにした展覧会が無かったのが不思議なくらい。
さてさて。
そもそも、どうして、植物の種子はデザイン的に優れているのか。
その理由は、簡単です。
自ら動くことができない植物が、いかにして、自分の子孫を残すか。
遠く様々な場所に散るように。
より快適な場所に辿り着くように。
はたまた、親元を離れず類似の環境で生きていけるように。
その役割を、種子のデザインに託したのです。
ある植物は、風を頼りにしたデザインを選択します。
例えば、たんぽぽの綿毛が、その一種です。
一方、アオギリという植物の種子は、こんなデザインを選択しました。
プロペラのような形になることで、飛びやすさは驚異的に。
ちょっとの風でも、飛距離を稼げるそうです。
さらに、飛び方を極めたのが、アルソトミラという植物の種子。
「何か飛行機みたい!」
そう思ったら、実際、この種子をモデルにした航空機が存在していたようです。
(第一次世界大戦初期の軍用機タウベ)
風以外にも、山火事のパワーを利用する種子、
海や川など水を頼りにするデザインの種子、自ら破裂する種子 (パラゴムノキ↓) など。
植物によって、戦略は、本当に多種多様。
植物は、意外と強かです。
動かないからと植物をなめていたら、痛い目に遭うかもしれません。
…と思っていたら、いやいやいや。
実際に、植物によって、痛い目に遭っちゃうではないですか。
今回の展覧会での一番の衝撃コーナーです。
皆様、一度は遊んだことがあるであろう、ひっつきむし。
これも、植物の種子デザインの一つ。
トゲやフックによって動物の皮膚や衣類に種子を引っかけることで、より遠くに運んでもらおうという戦略です。
正直、上のオナモミくらいで済んでいる日本は、安全大国です。
安全すぎて、ぬるいくらいです。
これは、危機管理のない国と、世界に避難されるわけです (←?)
世界のひっつきむしは、危険レベルが高すぎます。
まずは、北アメリカやメキシコのツノゴマ。
果実を食べると、その中から、こんなにグロテスクな種子が現れるのだとか。
この果実を食べたヤギが、内臓損傷を起こして死んだということも・・・。
うっかり踏むと、強烈な痛みが襲うです。
そのせいで、別名、タビビトナカセ (旅人泣かせ) とも。
さらに、凶暴な種子が、アフリカに生息する、こちら↓
その名も、ライオンゴロシ。
“熊殺し” や “虎殺し” よりもスゴそうです・・・。
ライオンゴロシは、どうやって、ライオンを殺すのでしょうか。
ある時、ふとしたはずみで、ライオンゴロシの種を踏んでしまうライオン。
ライオンゴロシの棘は硬く、歩くたびにライオンの足に深く刺さっていきます。
あまりの激痛に耐えかね、口でライオンゴロシを外そうとするライオン。
しかし、今度は、ライオンゴロシが口の中に刺さってしまいます。
棘による傷で、口の中は化膿し、
その痛みでライオンは食物を取ることが出来なくなります。
そして、飢えと渇きにより、ついにライオンは息絶え、
そのライオンの養分を元に、新しいライオンゴロシが生まれるのだとか。
怖い・・・怖すぎる・・・((((((ノ゚⊿゚)ノ
ともあれ、驚きの種満載の展覧会である。
皆の応援が、元気の種です
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種子のデザイン―旅するかたち―
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