Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

もののけの夏―江戸文化の中の幽霊・妖怪―

$
0
0
この夏、国立歴史民俗博物館の企画展示室Bでは、特集展示として、
“もののけの夏―江戸文化の中の幽霊・妖怪―” が開催されています。




「夏」 を前面に押し出したそのメインビジュアルは、
なぜか、TUBEのアルバムジャケットみたいな仕上がりとなっていました。

と、それはさておきまして。
実は、国内有数の怪談・妖怪コレクションを所蔵している国立歴史民俗博物館。
今回の展示では、その珠玉のコレクションの中から厳選された100点が紹介されています。
それらの中には、美術史的にも民俗学的にも価値の高い狩野益信の 《百鬼夜行図》 や、


狩野洞雲益信 《百鬼夜行図》(部分) 紙本着色一巻 貞享元年(1684)以前 国立歴史民俗博物館蔵


歌川国芳や月岡芳年ら人気浮世絵師による妖怪をモチーフにした作品の数々も。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


特集展示という扱いではあるものの、
一般的な展覧会と同じくらいに見ごたえのある内容となっていました。
星


ところで、「もののけの夏」 とありますが、
どうして、夏といえば怪談なのでしょうか?
『チコちゃんに叱られる』 で出題されそうな素朴な疑問ですよね。
その答えは、この企画展示の会場にありました。
ちなみに、チコちゃん風に回答するなら、こうなります。

「夏が怪談の季節となったのは、人気の歌舞伎役者は夏休みを取っていたから」

クーラーなど冷房のない江戸時代。
夏の芝居小屋は、それはそれは暑かったそうです。
そのため夏の期間は、人気の歌舞伎者は夏休みを取ってバカンスに出かけていたのだとか。
当然、その期間中に舞台に上がるのは、人気がパッとしない歌舞伎役者たち。
そんな彼らが演じても盛り上がる演目とは何なのか。
試行錯誤の末に生まれたのが、怪談物でした。




背筋がヒンヤリする怪談物は、江戸の庶民に大ウケ!
こうして、毎年夏になると怪談物が上演されるようになり、
いつしか、「夏といえば怪談」 が定着していったのだそうです。
そんな怪談物の最大のヒット作が、『四谷怪談』。
それゆえ、『四谷怪談』 にちなんだ浮世絵は数多く紹介されていました。


三代歌川豊国 《東海道四谷怪談 蛇山庵室の場》 国立歴史民俗博物館蔵


また、それと同じくらいに紹介されていたのが、『東山桜荘子』 にちなんだ浮世絵。
『東山桜荘子』 は、歴博のある千葉県佐倉市に関わりの深い義民、
佐倉惣五郎を主人公とした講釈 『佐倉義民伝』 をもとにした演目です。
領主・織越政知の圧政に苦しんでいた農民のために将軍に直訴した結果、
織越政知により、妻子ともども拷問の末に惨殺されてしまった佐倉惣五郎 (演目では朝倉当吾)。
しかし、その死後、亡霊となった当吾は、政知を徹底的に苦しめるのです。
歌川国芳の 《東山桜荘子 織越館の場》 は、そのクライマックスシーンを描いたもの。


歌川国芳 《東山桜荘子 織越館の場》 大判錦絵2枚続 嘉永4(1851) 国立歴史民俗博物館蔵


画面左には茶坊主に変身する当吾。
画面右には腰元に変身する当吾。
よくみれば、襖にも当吾の姿が浮かび上がっています。
いくらなんでも、当吾、登場しすぎなような・・・。
なお、他の 『東山桜荘子』 を描いた浮世絵では、
当吾が天からビョーンと降りてきていたり、脇息 (肘掛) の影から当吾がヌ~ッと登場したり。
さまざまな登場パターンを見せています。
当吾がどう登場すると、怖いのか (面白いのか?) 。
ちょっとした大喜利状態となっていました。


ちなみに。
こちらの企画展示と連動して、総合展示第4展示室 「民俗」 内の、
宮城県気仙沼市にある築200年の古民家・尾形家を復元したコーナーでは・・・




“気仙沼のカミと妖怪” のパネル展示が行われています。
気仙沼市に妖怪というイメージは無かったのですが、
なんとあのケサランパサランは、気仙沼が発祥なのだとか!





市内の旧家に伝わるケサランパサランの写真もパネルで紹介されています。
どう見ても、ただの毛玉にしか思えませんでしたが・・・。

なお、第4展示室 「民俗」 では、妖怪に関する展示が常設されています。
その一角には、河童を特集したコーナーも。




河童のイメージ像や河童が描かれた絵画や、
水木しげるの 『河童の三平』 など、河童に関する資料がたくさん紹介されています。
それらの中に、なんとも気になる展示品がありました。




ミュウジカルコメディ 『河童』 って・・・。
駄作の匂いがプンプンしています。
こんな緑の全身タイツを着て、
笑顔で踊らされている女性たちには同情を禁じ得ません。




1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ  にほんブログ村 美術ブログへ

Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles