日本人は、ラッセンより普通にゴッホが好き。
だからでしょうか。
毎年のように、日本のどこかしらで、
ゴッホを取り上げた展覧会が開催されています。
今年2019年もまた然り。
10月11日。上野の森美術館にて、“ゴッホ展” が開幕しました。
こちらは、“ゴッホがゴッホになるまで” に迫った展覧会。
27歳で画家を目指したゴッホが、37歳で亡くなるまでの約10年間で、
いかにして、ゴッホ風ともいうべき独自のスタイルに辿り着いたのかを紹介するものです。
展覧会は、2部構成。
ゴッホに大きな影響を与えたハーグ派と印象派、
それぞれを代表する巨匠たちの作品計約30点とともに、ゴッホの作品約40点が展示されています。
まず第1部で紹介されていたのが、ハーグ派。
ハーグ派とは、オランダのハーグで活動した画家たちの総称で、
17世紀のオランダ黄金時代の伝統的な絵画のエッセンスを受け継ぎつつ、
当時フランスで一時代を築いたバルビゾン派の影響を大きく受けているのが最大の特徴です。
伝統的なオランダの風景画っぽくもあり、バルビゾン派の絵画っぽくもあり。
まさに両者をイイとこどりしたハイブリッドな作風です。
そんなハーグ派の主要画家の一人で、
ゴッホの親戚であり最初の師匠でもあったのが、アントン・マウフェ。
アントン・マウフェ 《4頭の曳き馬》 制作年不詳 油彩、板 19.5×32cm ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag
マウフェは、ゴッホに画家としての基礎を叩き込みました。
彼がいなかったら、画家ゴッホは誕生していなかったかも。
そういう意味では、ゴッホにとって超重要な人物です。
もし、ゴッホが 『うちくる!?』 のゲストだったら、
確実に、どこかのお店でマウフェが登場することでしょう。
さてさて、そんなマウフェに限らず、
ハーグ派の画家の作品は、全体的にトーンが暗め。
それに合わせて、壁の色も蛭子能収が着る服くらいに地味な色調となっていました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
当然、この頃のゴッホの絵の色合いも、かなり暗めです。
のちに、《ひまわり》 や 《アルルの寝室》 のようなカラフルな絵画を描く人物とは、この段階では到底思えません。
ちなみに、ゴッホの初期の傑作 《ジャガイモを食べる人々》 が描かれたのも、この時代。
さすがにゴッホ美術館が所蔵する油彩画は来日していませんでしたが。
代わりに、ハーグ美術館所蔵のリトグラフ版の 《ジャガイモを食べる人々》 が来日していました。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《ジャガイモを食べる人々》 1885年4-5月 リトグラフ(インク・紙) 26.4×32.1cm ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag
こちらの 《ジャガイモを食べる人々》 リトグラフver.は、元となる油彩画と図柄が反転しています。
また、それにくわえて、コントラストや人物の描写が甘くなっているのだそうです。
そんな作品のクオリティの低さに対して、当時ゴッホの友人だった画家ファン・ラッパルトは、
「もっと熱くなれよ!もっと本気出せよ!」
と、松岡修造ばりに (←?) に大激怒したそうな。
それにカチンと来たゴッホは、手紙で反論したのだとか。
その応酬が原因で、5年に及ぶ2人の友情にピリオドが打たれることになったのです。
ハーグ派の画家にまつわるゴッホのエピソードもまた、絵のトーンと同様に暗めでした。
続く第2部では、印象派や新印象派の画家たちの作品が登場します。
それゆえ、第1部とは打って変わって、会場は明るく華やかな雰囲気に。
ピサロやシニャック、ゴーギャンらの作品とともに、
モネやルノワールといった画家たちの作品も紹介されていました。
まさか、“ゴッホ展” の会場で、
モネやルノワールの作品までもが観られるだなんて。
何だか得した気分です。
そんな華やかな印象派の作品と出合ったことで、
ゴッホの作品も明るく華やかな雰囲気に様変わりしていきます。
そのスタイルを経て、やがて色彩や筆致はより大胆に。
そして、いよいよ僕らがイメージするゴッホのスタイルに到達するのです。
展示室のラストで待ち構えていたのは、
メトロポリタン美術館が所蔵する傑作 《糸杉》。
2012年の “メトロポリタン美術館展” での日本初公開以来、7年ぶりの再来日です。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館
Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY
この絵に渦巻いているパワーは、それはそれは強烈でした。
空がうねる。雲がうねる。糸杉がうねる。山がうねる。
アニメーションのように、絶えず絵が動いている感じがするのです。
そのため、どう頑張っても、絵をじっと見続けることはできず。。。
あちらに目がいったり、こちらに目がいったり、とにかく目線が定まりませんでした。
ゴッホvs鑑賞者。
そんな真剣勝負を突きつけられているような印象を受けました。
この絵を観るためだけに展覧会を訪れる価値は大いにアリです。
正直なところ、展覧会を訪れるまでは、
“ゴッホ展” という展覧会タイトルが、あまりにシンプルすぎると感じていたのですが。
なるほど、シンプルなのも納得でした。
これぞゴッホ展。これがゴッホ展。
王道にして最強のゴッホ展です。
ちなみに、今回出展されていたゴッホの作品の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、《ぼさぼさ頭の娘》 という一枚。
モデルは、若き日のミック・ジャガー、
もしくは、若き日のかまやつひろしかと思いきや、ぼさぼさ頭の娘とのこと。
この展覧会では随所でゴッホの手紙も紹介されているのですが、
こちらの作品にまつわる手紙の一文も、作品横で紹介されていました。
手紙には、こう綴られています。
「さて、手紙を書き続けるかわりに小汚い娘の頭部を書き始めたよ。」
いやいや、お前が言うなよ!
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だからでしょうか。
毎年のように、日本のどこかしらで、
ゴッホを取り上げた展覧会が開催されています。
今年2019年もまた然り。
10月11日。上野の森美術館にて、“ゴッホ展” が開幕しました。
こちらは、“ゴッホがゴッホになるまで” に迫った展覧会。
27歳で画家を目指したゴッホが、37歳で亡くなるまでの約10年間で、
いかにして、ゴッホ風ともいうべき独自のスタイルに辿り着いたのかを紹介するものです。
展覧会は、2部構成。
ゴッホに大きな影響を与えたハーグ派と印象派、
それぞれを代表する巨匠たちの作品計約30点とともに、ゴッホの作品約40点が展示されています。
まず第1部で紹介されていたのが、ハーグ派。
ハーグ派とは、オランダのハーグで活動した画家たちの総称で、
17世紀のオランダ黄金時代の伝統的な絵画のエッセンスを受け継ぎつつ、
当時フランスで一時代を築いたバルビゾン派の影響を大きく受けているのが最大の特徴です。
伝統的なオランダの風景画っぽくもあり、バルビゾン派の絵画っぽくもあり。
まさに両者をイイとこどりしたハイブリッドな作風です。
そんなハーグ派の主要画家の一人で、
ゴッホの親戚であり最初の師匠でもあったのが、アントン・マウフェ。
アントン・マウフェ 《4頭の曳き馬》 制作年不詳 油彩、板 19.5×32cm ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag
マウフェは、ゴッホに画家としての基礎を叩き込みました。
彼がいなかったら、画家ゴッホは誕生していなかったかも。
そういう意味では、ゴッホにとって超重要な人物です。
もし、ゴッホが 『うちくる!?』 のゲストだったら、
確実に、どこかのお店でマウフェが登場することでしょう。
さてさて、そんなマウフェに限らず、
ハーグ派の画家の作品は、全体的にトーンが暗め。
それに合わせて、壁の色も蛭子能収が着る服くらいに地味な色調となっていました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
当然、この頃のゴッホの絵の色合いも、かなり暗めです。
のちに、《ひまわり》 や 《アルルの寝室》 のようなカラフルな絵画を描く人物とは、この段階では到底思えません。
ちなみに、ゴッホの初期の傑作 《ジャガイモを食べる人々》 が描かれたのも、この時代。
さすがにゴッホ美術館が所蔵する油彩画は来日していませんでしたが。
代わりに、ハーグ美術館所蔵のリトグラフ版の 《ジャガイモを食べる人々》 が来日していました。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《ジャガイモを食べる人々》 1885年4-5月 リトグラフ(インク・紙) 26.4×32.1cm ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag
こちらの 《ジャガイモを食べる人々》 リトグラフver.は、元となる油彩画と図柄が反転しています。
また、それにくわえて、コントラストや人物の描写が甘くなっているのだそうです。
そんな作品のクオリティの低さに対して、当時ゴッホの友人だった画家ファン・ラッパルトは、
「もっと熱くなれよ!もっと本気出せよ!」
と、松岡修造ばりに (←?) に大激怒したそうな。
それにカチンと来たゴッホは、手紙で反論したのだとか。
その応酬が原因で、5年に及ぶ2人の友情にピリオドが打たれることになったのです。
ハーグ派の画家にまつわるゴッホのエピソードもまた、絵のトーンと同様に暗めでした。
続く第2部では、印象派や新印象派の画家たちの作品が登場します。
それゆえ、第1部とは打って変わって、会場は明るく華やかな雰囲気に。
ピサロやシニャック、ゴーギャンらの作品とともに、
モネやルノワールといった画家たちの作品も紹介されていました。
まさか、“ゴッホ展” の会場で、
モネやルノワールの作品までもが観られるだなんて。
何だか得した気分です。
そんな華やかな印象派の作品と出合ったことで、
ゴッホの作品も明るく華やかな雰囲気に様変わりしていきます。
そのスタイルを経て、やがて色彩や筆致はより大胆に。
そして、いよいよ僕らがイメージするゴッホのスタイルに到達するのです。
展示室のラストで待ち構えていたのは、
メトロポリタン美術館が所蔵する傑作 《糸杉》。
2012年の “メトロポリタン美術館展” での日本初公開以来、7年ぶりの再来日です。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館
Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY
この絵に渦巻いているパワーは、それはそれは強烈でした。
空がうねる。雲がうねる。糸杉がうねる。山がうねる。
アニメーションのように、絶えず絵が動いている感じがするのです。
そのため、どう頑張っても、絵をじっと見続けることはできず。。。
あちらに目がいったり、こちらに目がいったり、とにかく目線が定まりませんでした。
ゴッホvs鑑賞者。
そんな真剣勝負を突きつけられているような印象を受けました。
この絵を観るためだけに展覧会を訪れる価値は大いにアリです。
正直なところ、展覧会を訪れるまでは、
“ゴッホ展” という展覧会タイトルが、あまりにシンプルすぎると感じていたのですが。
なるほど、シンプルなのも納得でした。
これぞゴッホ展。これがゴッホ展。
王道にして最強のゴッホ展です。
ちなみに、今回出展されていたゴッホの作品の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、《ぼさぼさ頭の娘》 という一枚。
モデルは、若き日のミック・ジャガー、
もしくは、若き日のかまやつひろしかと思いきや、ぼさぼさ頭の娘とのこと。
この展覧会では随所でゴッホの手紙も紹介されているのですが、
こちらの作品にまつわる手紙の一文も、作品横で紹介されていました。
手紙には、こう綴られています。
「さて、手紙を書き続けるかわりに小汚い娘の頭部を書き始めたよ。」
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