例えば、 『もしドラ』 。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら/ダイヤモンド社
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270万部突破という近年稀にみる大ベストセラー作品になりました。
すると、各社から、
もし、かけだしカウンセラーが経営コンサルタントになったら/出版文化社
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金欠の高校生がバフェットから「お金持ちになる方法」を学んだら/PHP研究所
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もし無機物が人間になって恋をしたら (シトロンアンソロジ-) (シトロンアンソロジー)/リブレ出版
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・・・と、このように、類似の本が、
雨後の筍のよう、次々と書店に姿を現れました。
「ヒット作が生まれる→それに便乗した作品が次々に現れる」
出版界における、そんな公式は、実は江戸時代からありました。
江戸時代、最大の浮世絵ヒット作と言えば、
ご存じ、歌川広重の 《東海道五拾三次之内》 のシリーズ。
保永堂 (=当時の大手出版社) から出版された、このシリーズの人気を受け、
当の本人である歌川広重は、その後、続編と東海道モノを刊行したのだそうです。
(こちらは、保永堂版ではない、東海道シリーズ)
ちなみに、広重が、その後手がけた東海道ものは、10シリーズにも及ぶのだとか。
2匹目どころか、10匹目まで、ドジョウを狙っていたのですね (笑)
まぁ、本人は、ともかくとして。
他の浮世絵師だって、負けてはいません (←?)
広重と同門の歌川国貞も、東海道シリーズを発表しているのです。
こちらは、その一枚目となる 《東海道五十三次之内 江戸日本橋之図》
役者絵の名手だけあって、手前に人物が大きく描かれているのが特徴です。
そして、その後ろに、風景画が・・・・・って、ん??
僕の気のせいでしょうか。
広重の描いた日本橋の絵に、よく似ているような。。。
凧こそ描かれていませんが、
橋を描くアングル、木戸の開き加減に、櫓の位置まで。
縦書き・横書きの違いはあれ、瓜二つです。
いや、でも、たまたま似ているだけかもしれませんよね。
「夢は時間を裏切らない」 的な。
他の歌川国貞ver.の東海道シリーズを見てみましょう。
《東海道五十三次之内 箱根之図》
なるほど。箱根の山を越える女性の姿が描かれているのですね。
で、肝心の背景の風景画は??
広重の描いた箱根の絵は、こちらです。
「一緒やん!パ○リですやん!!」
時代が時代なら、訴訟沙汰になりかねません。
・・・ところが。
当の広重が、これに対して怒ったという記録はないそうで。
意外と、国貞と広重は、上手くやっていったのではないかとは、学芸員さんの談。
というのも、この数年後に、
歌川広重が背景を描いて、歌川国貞が人物画を描くという、
《双筆五十三次》 というシリーズが発表されるのです。
この発表の時、広重も豊國という師匠の名を継いだ国貞も、浮世絵界の大御所。
二大スターが、夢の競演。
香港映画で言うならば (←?) 、
ジャッキー・チェンとサモ・ハン・キンポーが競演を果たすようなものなのです。
では、実際に、その 《双筆五十三次》 を見てみましょう。
日本橋は、このような仕上がりになっています。
手前の子供が手に持っているのは、槍持ちの人形。
広重がヒットさせた保永堂版の日本橋では、大名行列が描かれています。
もちろん、先頭にいるのは、槍持ち。
そこで、国貞は、槍持ちを描くことで、
保永堂版の日本橋の絵を暗示させたのではないかとのことです。
「~ないかとのことです。」 と語尾が、なんとも曖昧なのは、
このシリーズについては、まだ謎が多く、かつ浮世絵の中にヒントが少ないので、
描かれている宿場と国貞が描いた人物との関連性が不明なものが多いのだそうです。
そのあたりは、
三代豊国・初代広重 双筆五十三次 (謎解き浮世絵叢書)/二玄社
¥2,100
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この本に詳しく書いてあるので、
気になった方は、お読みになってみてくださいませ。
ちなみに、 《双筆五十三次》 シリーズの中で、一番謎の一枚は、桑名だとか。
桑名に、描かれているのは、浦島太郎。
しかし、桑名には、浦島伝説はないそうです。
とりあえず、現在紹介されている説は、
桑名は焼き蛤で有名
→焼き蛤と言えば、蛤って、蜃気楼を見せるらしいよ。蜃気楼の 「蜃」 って字は、蛤のことなんだって。
→つまり、蛤が海の中から楼閣を見せるんだよね。それって、竜宮城?
→あぁ、だから、浦島太郎か!
と、かなり意訳してまとめると、こんな感じです (笑)
「いや、我こそは、本当の説を思いついた!」 という方は、こちらまでお気軽にお寄せくださいませ。
と、ここまで、東海道に関する浮世絵の話をしてきましたが。
ここに紹介した作品はすべて、
現在、太田記念美術館で開催中の “東海道五十三次の世界―広重と国貞” で観られるものばかり。
「今年の夏は、忙しくて、旅行に行けなかった・・・」 という方は、
是非、太田記念美術館で、江戸の人々の旅の様子を眺めて、旅した気分に浸ってみてはいかがでしょう?
さてさて、美術展の会場では、他にも、珍しい東海道シリーズが展示されています。
例えば、こちらは・・・
葛飾北斎による 《東海道五十三次 二 品川》 。
実は、広重よりも前に、東海道シリーズを発表していた北斎。
しかし、北斎版の東海道モノは、あまり売れなかったのだとか。トホホ。
広重の大ヒットには、心中穏やかでなかったに違いありません。
そして、歌川国芳も、実は、東海道シリーズを発表しています。
しかし、あの歌川国芳。
普通に、東海道シリーズを描くわけがありません (笑)
彼が、東海道を描くと、こうなります↓
「カメラ、引き過ぎwww」
《東海道五拾三駅四宿名所》 という作品。
タイトル通り、日本橋から神奈川まで四宿まとめて、一枚の浮世絵の中に描いてしまっています。
何という力業。
ちなみに、このシリーズは、ちゃんと京都まで続いているのだそうです。
皆様もきっとシリーズの他の作品も見たいでしょうから、もう一点ご紹介いたしましょう。
こちらには、六宿も描かれているそうです。
・・・・・ここまで、引かれた画だと、
旅の風情も何もあったものではないですが (笑)
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東海道五十三次の世界―広重と国貞
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