前回の “光の造形~操作された写真~” に引き続き、
平成24年度東京都写真美術館コレクション展 “自然の鉛筆 技法と表現” に行ってきました。
一言で、 『写真』 と言っても、その技法は様々。
カロタイプに、タゲレオタイプに、ゼラチン・シルバー・プリントに、フォトグラビア印刷に。
他にも、ウッドバリータイプに、アンブロタイプに、拡散方式転写印画に・・・
と、キリがないので、このくらいにしておきます。
ともあれ、1839年に写真術が発表されて以来、
写真は、常に、 “化学” の進歩ととともに、表現の幅を広げてきました。
今回の美術展では、そんな写真における “化学” に焦点が当てられ、
写真技法の変遷に沿って、東京都写真美術館のコレクションが展示されていました。
会場を歩くだけで、写真技法の進化の歴史がわかる内容となっています。
何と言っても、今回の美術展の特徴は、
写真の知識がない人でも楽しく写真の基礎知識が身に付けることが出来る点。
写真観賞ビギナーにはもってこいの美術展です。
会場にあったキャプションに関しては、
“正直、もう少しわかりやすくして欲しいなァ…”
と、若干不満は残りましたが。
会場で配布されている観賞ワークシートは、かなりの出来です!
というのも、わかりやすい上に、 (いい意味で) ふざけてるのです (笑)!
何ですか、ネガ子とポジ子ってwww
しかも、写真技術の先駆者の一人W・H・F・タルボットの似顔絵に関しては・・・
頭頂部に悪意がアリアリです (笑) !!
(あくまで、いい意味で) ふざけてでも、
『写真』 というアートの分野に対する苦手意識を取り除こうとする東京都写真美術館のその姿勢。
とても立派だと思います。
あとは、それを、会場でも発揮して欲しいっ!
さてさて、今回の美術展は、ただ単に、ワークシートを頑張っただけの美術展ではありません。
出展されているのは、東京都写真美術館が誇る珠玉の名品180点ばかり。
貴重なコレクションの数々が、惜しげもなく (?) 展示されています。
今回の展示の白眉は、似顔絵ではハゲを強調されてしまったタルボットの 《植物の葉》
こちらは、美術展のタイトルにもなっている 「自然の鉛筆」 という写真集のうちの一枚。
会場には、 《植物の葉》 以外にも、
「自然の鉛筆」 に収録されている写真が展示されていますし、
何より、 「自然の鉛筆」 そのものもガラスケースに入れられて展示されているのですが。
実は、この 「自然の鉛筆」 は、世界初の写真集で、現存15部しか確認されていない超貴重なもの。
普通の写真集とは違う意味で (←?) 、興奮してしまうことでしょう。
そして、もう一点貴重な写真が展示されています。
それは、ルイ・デュコ・デュ・オーロンの 《アジャンの風景、木と水の流れ》
実は、こちらは、世界初のカラー写真。
今のカラー写真とは違って、カラーの層を3層重ねているのだとか。
当時の苦労が偲ばれます。
他にも、写真史における名作が、たくさん展示されていますので、
写真ビギナーの方だけでなく、写真大好きな方も必見のプログラムと言えましょう。
最後に。
僕的に、印象に残った作品を、2点ご紹介。
まずは、アービング・ペンの 《鼻マスクをしたソール・スタインバーグ》
何でしょう?このとぼけた感じの人物は (笑) ?!
見れば見るほど、このユーモラスな空気に、和んでしまいます。
東京都写真美術館で、彼をモチーフにしたミュージアムグッズを作って頂きたいものです。
そして、もう1点が、
ジャック=アンリ・ラルティーグの 《スザンヌ・ラングラン、ニース》
「なんでそーなるの?」 という跳びっぷり。
欽ちゃん以外で、こんな跳び方をする人を見たことがありません (笑)
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自然の鉛筆 技法と表現
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