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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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アラブ・エクスプレス展

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今、世界が注目するアートエリア。
それは、意外にも、アラブ。

ここ数年、ヨーロッパの美術館で、アラブ現代アートを紹介する美術展が数多く開催されたり、
アラブ自体にも、続々と、新しい美術館がオープンしているのだとか。
さらに、アラブ首長国連邦の首都アブダビには、
ルーブル美術館とグッゲンハイム美術館が建設中とのこと。
今後、ますますアラブのアートに、熱い注目が寄せられることでしょう。


そんな急速に (=エクスプレス) 成長を遂げるアラブのアート事情を、
日本で初めて本格的に紹介しようというのが、森美術館で開催中の “アラブ・エクスプレス展” です。
会場には、アラビア半島を中心としたアラブ諸国のアーティスト34組の作品が大集結。
これまで目にしたことがないようなアート作品が、続々登場!

“欧米や日本の作家の現代アートには、そろそろ食指気味で・・・ (苦笑)”

という現代アート通には、うってつけの美術展です。
反対に、現代アートに、そこまで慣れ親しんでいない人にとっては、
メッセージ性や社会性の強い作品が多く、頭を空っぽにして楽しめる作品の割合が少ないので、
あまり気軽には楽しめないのではないかな、という印象を受けました。

これまでありそうでなかったアラブの現代アートを取り上げた展覧会ということで、

「これは、きっと新しい発見・体験が、たくさん待っているに違いない!」

と、個人的は、とっても期待していたのですが。
率直な意見としては、そこまで心に響く作品には出会えず、
ちょっと消化不良な感が否めませんでした。
歴史や今抱えている問題や情勢など、アラブに対する予備知識を持ち合わせていたら、
おそらくもっと他の作品にも関心を持てただろうなぁ、という気はしています。
アラブを知っていて、この美術展を観るのと、
アラブに対して無知で、この美術展を観るのでは、美術展の理解度は大きく違うはず。
こんなことなら、池上彰さんの番組なり本なりを、ちゃんと読んでおくべきでした (汗)
「自己責任」 という言葉の重みを、図らずも実感した美術展でした (笑)
星星

ただ、美術展としては、とても意義のある内容だったことは確かなので。
定期的に、 “アラブ・エキスプレス展” を開催して頂けることを熱望します。


さてさて、 「そこまで心に響く作品には出会えず」 とは、言いましたが。
ちゃんと心に響く作品にも、数点出うことが出来ました。
ここからは、それらの作品を紹介して参りたいと思います。
今回の美術展は、写真撮影が可能ですので、会場写真を交えて紹介いたします。

まずは、イスラムの文化圏に今なお残る結婚の風習をテーマにした 《結婚の思い出》 シリーズから。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-結婚の思い出  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ハサン・ミール
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



アラブの一部の地域では、近代化された現代でも、結婚相手を家族によって決められ、
式の当日になって初めて顔を合わせるという慣習が残されているのだとか。
上の二人のように、上手くいくパターンもありますが (たぶん上手くいってますよね?)

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-結婚の思い出  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ハサン・ミール
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



こんな風に、完全に、女性のテンションが下がってしまうパターンも!
さらに、この女性は・・・

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-結婚の思い出  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ハサン・ミール
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



テンションが下に振り切れてしまいました!
女性も可哀そうですが、男性も可哀そうです。
他の文化圏の風習をとやかく言うつもりはありませんが、
こと結婚相手を自由に選べることに関しては、日本人で良かったなぁ、と思いました (笑)
(結婚相手が見つかるかどうかは別として)


続いては、アラブ女性が身に着けるヴェールをテーマにした、
ミーラ・フレイズという23歳の若手アーティストの作品をご紹介。

《グラディエーター》 や、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-グラディエーター   アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ミーラ・フレイズ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



《ダンス・ウィズ・ウルブス》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ダンス・ウィズ・ウルブス   アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ミーラ・フレイズ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



といった具合に、かなり斬新なヴェールを生み出しています。
一番衝撃だったのヴェールが、 《マドンナ》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-マドンナ  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ミーラ・フレイズ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



もはやヴェールでもなんでもないです (笑)

《マドンナ》 も思わず、笑ってしまいましたが。
今回の美術展で一番ニヤリとさせられたのが、
シャリーフ・ワーキドによる 《次回へ続く》 という映像作品。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-次回へ続く  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:シャリーフ・ワーキド
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



画面の中で、物騒な恰好をした男性が、淡々と何かを読み上げています。

「もしや、テロの声明文?!」

と思いきや、実は、こちらの男性は、本国では有名な俳優さんだそうで、
読み上げているのは、子供から大人まで慣れ親しんでいる 『千夜一夜物語』 とのこと。
つまり、日本で言えば、テロの声明文を読み上げていると見せかけて、
抑揚をつけずに、 『桃太郎』 を読み上げているような感じでしょうか (笑)


この他にも、磁石に砂鉄が集まる様を、
メッカに集まるイスラム人に見立てた 《マグネティズムⅣ》 という作品や、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-マグネティズムⅣ   アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:アハマド・マーテル
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



自由に動かせる中東の地図の中で、パレスチナだけ動かせない 《(より)新しい中東》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-(より)新しい中東   アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:オライブ・トゥーカーン
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-(より)新しい中東 案内  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-(より)新しい中東


・・・など、笑いは笑いでも、クールな笑いが多かったのが、アラブの特徴である気がしました。
意外と、アラブの気候と違って、カラっとしていないと言いますか。
おバカなことをする文化圏ではないのでしょうね。


笑える作品とは別に、印象に残った作品としては、
ハリーム・アル・カリームの 《無題 1(「都会の目撃者」シリーズより)》 でしょうか。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-無題 1(「都会の目撃者」シリーズより)  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:ハリーム・アル・カリーム
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



輪郭がぼやけた女性像ながら、目だけは、こちらを射抜くようにクッキリとしています。
ガムテープで口が塞がれているものの、
それを超える言葉が、彼女の目から発せられている気がしました。
これまでに、アート作品の前で、思わず “立ち止まった” ことは数多くありますが、
“立ちすくんでしまった” のは、この作品が初めてです。


それと、もう一つ印象に残っているのが、
マハ・ムスタファによる 《ブラック・ファウンテン》 という作品。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ブラック・ファウンテン

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ブラック・ファウンテン ズーム  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:マハ・ムスタファ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



噴水から吹き上げられ続ける黒い液体を見て、石油を連想したのは、僕だけはないはず。
その石油のバックに、六本木ヒルズから見下ろす東京の街並みがあることに、
何だか罪悪感のようなものを覚えてしまいました。
石油を湯水のように使うことで、僕ら日本人の生活が成り立っているのではなかろうか。
「ダババババ!」 と音を立て続ける 《ブラック・ファウンテン》 に、そう責められている気がしてなりませんでした。


最後に紹介したいのが、アーデル・アービディーンの 《アイム・ソーリー》 という作品。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-アーデル・アービディーン  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】作家:アーデル・アービディーン
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。



何だか、歌舞伎町っぽいネオンですが、歌舞伎町は関係ありません (笑)
イラク出身の作者が、アメリカで、イラク出身であることを話すと、
決まって、 「アイム・ソーリー」 と言われ、複雑な心境になってしまった経験を、作品にしたものだとか。
ちなみに、この作品の横には、一人一個自由に貰えるアイム・ソーリー飴が。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-アイム・ソーリー


さて、気になる、そのお味は・・・

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-アイム・ソーリー


期待するほどは美味しくなかったです (笑)

正直に味を伝えてしまって、アイム・ソーリー。




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