■HAZAN
監督:五十嵐匠
出演:榎木孝明、南果歩
2003年/日本/108分
岡倉天心に思想的影響を受け、
幼き頃に見た美しい陶磁器を自らの手で作ってみたいとの衝動に突き動かされ、
経験を持たぬまま日本の新しい陶芸を開拓すべくその道を歩み始めた男・板谷波山。
その名は故郷・下館から見える “筑波山” からとった。
波山の決意を聞いた妻まるは、
ただひとこと “子どもたちだけは泣かさないで下さい” と言い、
夫について行く覚悟を決めた。
教職を辞し、東京田端に小さな新居を構えた波山一家。
この時から、貧困に苦しみながらも、
自らの作品には一切妥協を許さない波山の、苦しく悲愴な試行錯誤の日々が始まった。
(「allcinema ONLINE」より)
「DVDのジャケットは、なぜかバンクシー感がありますが。
主人公は、Banksyではなく、HAZAN。
日本の近代陶芸の開拓者であり、
陶芸家としては初の文化勲章受章者となった板谷波山です。
ただ、真の主役は、その妻・板谷まると言っても過言ではありませんでした。
最終的に文化勲章を受章したから良いようなものの、
この映画で描かれているのは、板谷波山の下積み時代。
作品が売れないのに、ただただプライドだけは高く、
そのうえ、まったく家計を顧みないダメンズなHAZANを、妻まるが必死に支えています。
そんなまるを演じているのは、南果歩さん。
ワガママな夫に献身的に尽くす南果歩さん。
これはもちろん演技だとはわかっているのですが、
その演技力が高いので、本当に幸が薄い妻にしか見えません。
だんだん、これは映画のシーンなのか、
はたまたプライベートのシーンなのかわからなくなってきました。
それゆえ、いろいろあった、あの元夫がちらついてしまいました。
(ついでに、あまり関係ないですが、その元夫の娘婿もちらついてしまいました)
しかしまぁ、波山が葆光彩磁 (※) を生み出すまでに、
彼の家族が、こんなにも苦労を重ねていたとは、、、
(※波山の代名詞。葆光釉により、薄絹を透かしたような淡い光を放つ技法)
今後、波山の葆光彩磁の作品を鑑賞する際には、
光が滲み出るような独自の風合いとともに、家族の苦労も滲み出て見えることでしょう。
特に印象的だったのが、正月に関するエピソード。
「せめて正月のお餅は!」 と楽しみにしていた子供たち。
しかし、そのお餅代で、波山はしれっと薪を買ってきてしまうのです。
鬼か、お前は!
かといって、波山は決して家族に愛情がなかったわけでなく、
納得のいく陶芸作品は作り出せないというのに、子供は何人も作り出していました。
ちなみに、何より気になったのは、
波山と二人三脚で作品を作り続けた轆轤師・現田市松のキャラクター設定です。
なぜか常にトリップ状態。
『北斗の拳』 にでも出てきそうな 「ヒャッハー」 な人物として描かれていました。
ドラッグでもやっていたのでしょうか??
何はともあれ、いろんな意味で、
これから波山の作品を観る目が変わりそうです。
(星2.5つ)」
~映画に登場する名画~
板谷波山 《葆光彩磁草花文花瓶》