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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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上方界隈、絵師済々 Ⅰ

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大阪の “都心のオアシス” 中之島に、
2018年にオープンした中之島香雪美術館。
朝日新聞社の創業者である村山龍平 (号・香雪) が、
文化財保護のために収集した日本と東アジアの古美術コレクションを所蔵する美術館です。

そんな中之島香雪美術館で、現在開催されているのが、“上方界隈、絵師済々 Ⅰ” という展覧会。
18世紀から幕末までの上方画壇にスポットを当てた展覧会です。




展覧会は、前期と後期に分かれており、作品はすべて入れ替えとなります。
2月2日までの前期では、「京都:京都画壇の立役者たち」 と題し、
写生画を大流行させた円山応挙と、その弟子たちによる円山・四条派を中心に、
京都画壇で活躍した様々な絵師たちの作品を展示していたそうです。
2月4日からは、「大坂:独自の展開 大坂画壇」 がテーマの後期が開幕!
京都の絵師たちの影響を受けつつも、
独自の展開を見せた大阪画壇の絵師たちの作品が紹介されています。



・・・・・・・とは言ったものの。
大阪画壇の絵師と聞いて、パッとその名が思い浮かぶ人がほとんどいません。
というのも、これまで関東圏の美術館で、
大阪画壇を取り上げた展覧会は数えるほどしか開催されていないのです。
しかし実は、本場である大阪の美術館でも、
大阪画壇の展覧会は、これまであまり開催されていないのだとか。
そう、今展は、本場大阪の人にとっても貴重な展覧会なのだそうです。


大阪画壇で活躍した絵師の中で、
比較的その名が知られているのは、森狙仙でしょう。
もふもふとした毛並みを描かせたら、右に出るものは無し。
特に猿の絵を多く描いたことから、「猿描き狙仙」 とも呼ばれる絵師です。
今展では、猿の絵はもちろん、イノシシを描いた絵や、


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


子犬を描いた絵も紹介されていました。




毛並みの柔らかさだけでなく、
その温もりまでも伝わってくるようです。
気が付けば、無意識のうちに、その毛並みに手を伸ばしている自分がいました。
展示ケースがあって良かったです。

また、会場では、森狙仙の養子の養子、森一鳳の作品も紹介されていました。




こちらは、月に照らされる綿の花を描いた一枚。
動物の毛並みとはまた違うもふもふ感がありました。
ちなみに、キャプションの解説によれば、
森一鳳の 《藻刈図》(沼湖の藻を刈る舟を描いたもの) が大阪の人に人気だった、とのこと。
その理由は・・・・・・

 『「藻」 を 「刈る」 「一鳳」』 → 『もをかるいっぽう』 → 『儲かる一方』

ダジャレのクオリティは、ぼちぼちでんな。


森一族以外で目立っていたのは、林閬苑 (ろうえん)
応挙や若冲にも影響を与えたという中国の画家、
沈南蘋の影響をもろに受け、中国風絵画を多く描いた絵師です。




これほどの画才を持ちながら、40歳近くの若さで夭折しています。
一説には、当時の中国の文物を現地で学ぼうと、
渡航を願い出たものの許されず、それがもとで憤死したとも。
なかなかエキセントリックな人物です。
特に目を奪われたのは、《青緑山水図》 という一枚。




もはや肉眼で判別するのは不可能なほどに、
隅から隅まで、葉や岩肌などが、びっしりと細かく描き込まれています。
完全に超絶技巧の世界です。
なお、よく見ると、画面の中には数軒ほど家が描き込まれていました。
・・・・・・・・何でまた、こんな過酷なところに住んでいるのでしょう??
『ポツンと一軒家』 に登場する住人に通ずるものを感じました。


さて、林閬苑のようなコテコテの味わいの絵画が、
大阪人のハートをガッチリ掴んでいるのかと思いきや。




四条派の流れを汲む西山芳園の絵画のように、
あっさりとした上品な作風のものも人気があったそうです。
なるほど。この頃から、薄味文化があったのですね。

今回紹介されていた大阪画壇の絵師の中で、
個人的にもっとも印象に残ったのは、同じくあっさり系の上田耕冲です。




↑の 《四季花鳥図》 も実に素晴らしかったですが、
月明かりに照らされた蜘蛛の巣を描いた 《月に蜘蛛の巣図》 は、絶品!




蜘蛛の巣は原形をとどめておらず、
糸がぷらんと頼りなく垂れさがっているだけ。
なんとも言えない寂寥感が漂っていました。




『悲しい色やね』 がよく似合う一枚。




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