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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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開館10周年記念 画家が見たこども展

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注:新型コロナウイルス感染症予防対策により、
三菱一号館美術館は、3月16日まで臨時休館となっております。
その後の予定は、3月10日以降に改めて美術館のWEBサイトにてお知らせするそうです。
事態が収束するまで、しばし待ちましょう!



今年4月6日。
三菱一号館美術館が、開館10周年を迎えるそうです。
それを記念して、現在、開催されているのが、
“開館10周年記念 画家が見たこども展” という展覧会。
ナビ派の画家たちが描いた 「こども」 の絵画にスポットを当てた展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


ここ近年、ナビ派が日本でも浸透してきた感はありますが、
何を隠そう、2017年に日本で初めて本格的にナビ派を紹介したのが、三菱一号館美術館。
そういう意味でも、開館10周年に相応しい展覧会といえましょう。


とは言え、「ナビ派ってナニ?」 という方も少なくないはず。
そこでまずは、ナビ派について、ざっくりとナビいたしましょう。

時は1888年。
若き画家ポール・セリュジエは、
憧れのゴーガンに会うためにポン=タヴェンを訪れました。
そこで、セリュジエは、ゴーガンから衝撃的なアドバイスを受けるのです。

 「セリュジエ君。この木々は何色に見えるかね?」
 「まぁ、常識的に考えたら、緑ですよね」
 「緑に見える?本当に??」
 「えっ?え~っと・・・(どうしよう?何か違うこと言わなきゃアセアセ)あっ、じゃあ、黄色??」
 「黄色だと?」
 「あー、やっぱり黄色じゃないような・・・
 「ならば、黄色で描きたまえ」
 「絵って、そんな適当・・・いや、自由に描いてイイんすか?!

かくして、すっかりゴーガン教 (?) の信者となったセリュジエは、
ボナールやヴュイヤール、ドニといった仲間たちを次々と勧誘していきます。
そして、ゴーガンをリスペクトする彼らは、
自らを預言者 (=ナビ) になぞらえ、ナビ派を名乗るように。
日常と神秘の両方を併せ持つ独自の芸術表現を模索していくのでした。
ちなみに、「ナビ」 という言葉はヘブライ語。
英語の 「ナビゲーション」「ナビゲーター」 とは関係ありません。
ついでに、「ナビスコ」 も調べてみましたが、
そちらは、ナショナル・ビスケット・カンパニー (National Biscuit Company) の略とのこと。
もっと関係ありませんでした (笑)


さてさて、今回の展覧会では、国内の美術館はもとより、
オルセー美術館やワシントン・ナショナル・ギャラリーを筆頭に、
世界各国の名だたる美術館から、ナビ派の画家がこどもを描いた名品が集結しています。




もちろん、それらの中には、
ここでの回顧展をきっかけに大ブレイクしたヴァロットンの作品も。


フェリックス・ヴァロットン 《公園、夕暮れ》 1895年 油彩/厚紙 三菱一号館美術館蔵




国内でヴァロットン先生の作品がまとめて観れるのは、三菱一号館美術館だけですよ。
さらに、ナビ派の画家だけでなく、ゴッホやルノワールといった、


フィンセント・ファン・ゴッホ 《マルセル・ルーランの肖像》
1888年 油彩/カンヴァス ファン・ゴッホ美術館蔵 Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)



西洋美術の巨匠たちが描いたこどもの絵も特別出品されています。
タイトルに、“こども” とはありますが、
決して、春休みのこどもだけをターゲットにした展覧会にあらず。
こどもはもちろん、大人も楽しめる展覧会です。
星星
改めまして、開館10周年おめでとうございます!


ちなみに。
今回出展されていた作品の中で、
特に印象に残ったものを、いくつかご紹介したいと思います。
まずは、モーリス・ドニの 《赤いエプロンドレスを着た子ども》 から。


モーリス・ドニ 《赤いエプロンドレスを着た子ども》 1897年 油彩/厚紙 個人蔵


出展作品の中でも、とりわけ愛くるしい一枚。
少女の表情はもちろん、エプロンドレスの柄も可愛いです。
点描のように描かれた筆致のせいか、
エプロンドレスの柄と背後に咲く花々が、なんとなく同化しているように感じられました。
ステルスタイプのドレスなのかもしれません。
余談ですが、少女の顔をずっと見つめていたら、
だんだんとマルちゃん (東洋水産) のマークに見えてきました。


続いては、エドゥアール・ヴュイヤールの 《乗り合い馬車》


エドゥアール・ヴュイヤール 《乗り合い馬車》 1895年頃 油彩/厚紙 ハマー美術館蔵
© Hammer Museum.Photo: Robert Wedemeyer



一瞬、何が描かれているのか、よくわからなかったのですが。
目を凝らすと、二人の女の子 (姉妹?) が、
お揃いの帽子とドレスを身に着け、仲良く窓の外を眺めている姿が見て取れました。
いつの時代も、こどもは車内から見える景色が好きなのですね。
ほっこりとさせられる一枚でした。


・・・・・と、こどもがモチーフなだけに、
可愛らしい絵画ばかりなのかと思いきや、中には、そうでもないものも。
そのうち、もっともインパクトがあったのが、
フランスの挿絵画家モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルによる 《ブレのベルナールとロジェ》 です。



モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル 《ブレのベルナールとロジェ》 1883年 油彩/カンヴァス オルセー美術館蔵
Photo © Musée d'Orsay, Dist. RMNーGrand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF



描かれている2人は、モンヴェルの実のこどもたちなのだそう。
しかし、恐ろしいくらいに、心を開いていません。
完全なる無表情。
父親ではなく、血の繋がっていない全くの他人と向き合っているかのような印象を受けます。
しかも、なんだか背景が合成っぽいような。
どことなく、『紙兎ロペ』 感が漂っていました。





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