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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ピーター・ドイグ展

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注:新型コロナウイルス感染症予防対策により、3月15日まで臨時休館となっております。

この春、国立近代美術館で開催されているのは、“ピーター・ドイグ展”
世界で最も重要なアーティストのひとりとされるピーター・ドイグの大規模な個展です。




これまで、グループ展などで彼の作品が、
2、3点ほど日本で紹介される機会はありましたが。
まとめて紹介されるのは、今回が初めて。
日本だけでなく、世界的に見ても貴重な展覧会なのです。


ピーター・ドイグ(1959~)


出展されている油彩画の総数は、
初期作から最新作までを含む全32点。
そう聞いて、「少なっ!」 と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが。




そのほとんどが、ビッグサイズ!
3m超えの作品も少なくありません。
壁のほとんどが、彼の作品で埋め尽くされているかのような印象を受けます。
それゆえ、むしろ会場では、「多くね?」 となることでしょう。

ちなみに、印刷物やポスターでは、巨大な印象を受けないでしょうが、
実はポスターに使われている 《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 も・・・・・


《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館蔵
©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120



196cm×296cmという巨大な作品です。
色合いやイメージがロマンチックな雰囲気なので、
ポストカードサイズだと、なぜか思い込んでいました。
それだけに、実物が現れた瞬間、「でかっ!」 と二度見。
スタンダードプードルを初めて見た時くらい、ビックリしました。

また、出展作の中には、2015年のオークションで、
約2600万米ドル (日本円にして約30億円) で落札され話題となった 《のまれる》 もあります。


《のまれる》 1990年、油彩・キャンバス、197×241cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾蔵
©Peter Doig. Yageo Foundation Collection, Taiwan. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120



この 《のまれる》 を含め、他のいくつかの作品にも小舟が描かれていました。




実は、小舟のイメージソースとなったのは、
『13日の金曜日』 の中のワンシーンなのだとか。
子どもの頃、怖がりながらも、『金曜ロードショー』 で、
何度となく、『13日の金曜日』 を見たはずですが、あの映画に小舟のイメージは全くなく・・・。
やはり “世界で最も重要なアーティスト” は、
同じ映画を観ていても、僕らとは目の付け所が違うようです。

映画といえば、《ラペイルーズの壁》 という作品も。


《ラペイルーズの壁》 2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館蔵
©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120



こちらは、ドイグが2002年より活動の拠点を移したカリブ海の島国、
トリニダード・トバゴにある墓地の外壁沿いを歩く男性を描いた作品です。
ドイグ曰く、小津安二郎の映画 『東京物語』 のイメージを念頭に置いて描いた作品とのこと。
なるほど。確かに、小津安二郎的なローアングルから描かれていますね。


作品に描かれているモチーフ自体は、
どれもそこまで目新しいものではないのですが。
なぜか、ピーター・ドイグの手にかかると、
これまでに目にしたことがない新鮮さが感じられます。




しかも、新鮮でありながらも、
それと同時に、懐かしさを覚えます。
初めて目にするのに、初めてな気がしない。
まるで夢、ないしは白昼夢を見ているかのよう。
会場では終始ふわふわしっぱなしでした。
東京都美術館で開催中の “ハマスホイ展” も、じわじわとクセになるタイプの展覧会でしたが。
“ピーター・ドイグ展” もそれに通ずるものがあります。
星星
全体的に写真撮影OKなので、じわじわと話題になること間違いなしの展覧会です。


ちなみに。
いくつかの作品を観ていて、気が付いたのですが。




どうやら、ピーター・ドイグは、
いくつもの四角形が組み合わさっているのがお好きな様子。
ふと見上げれば、東京国立近代美術館の天井も、四角形が組み合わさっていました。
ピーター・ドイグの展覧会をするにもっとも適した美術館といえましょう。





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