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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ポスター貼りの流儀

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本家 (?) である “日曜” のほうでは、
まず取り上げられないであろう美術館のニッチなトピックを紹介するコラム。
それが、『月曜美術館』。
おかげさまで、いくつか連載を担当していますが、
一番長く続いているのが、この 『月曜美術館』 です。
2015年の8月にスタートしたので、今年でいよいよ6年目に突入します。




さて、この 『月曜美術館』 は、
アートファンのための会員制クラブ、アーチクラブの会報誌 「arch」 の連載であるため、
一般の方の目に触れる機会は、ほとんど無いのですが。
美術館に行きたいのに行けない。
そんなSTAY HOME週間に、皆さまに少しでも美術館情報を伝えたく、
「arch」 の編集長さんと、毎回素敵にレイアウトしてくださるデザイナーの新貝直人さんと、
過去の記事を特別に公開してよいか打診したところ、快諾してくださいました。

文章はさすがに字が小さくて読めないと思うので、
改めて、文字起こししたものを下に記載しておきます。
(注:読みやすいように多少リライトしています)

さて、どの記事も個人的には想い出深いのですが、
初回となる今回は、三井記念美術館を取り上げた回をご紹介。
あまりにニッチ過ぎて、学芸員さんや広報さんも、
この記事を通じて初めて、ポスター通りの秘密を知ったのだそうです。


(注:展覧会は終了しております)


日本橋の三井本館7階に位置する三井記念美術館。
レトロなエレベーターに乗って、7階へ。
かつて重役用の食堂だった部屋の雰囲気を活かした展示室で、美術展をたっぷりと堪能。
満たされた気分で、展示室の出口からエレベーターへと向かう、
その廊下部分で、あなたはちょっと不思議な光景に出くわすはずです。
数名のお客さんが足を止めて、廊下の両側の壁をじっと見つめています。
皆さまの視線の先にあるのは、ポスター。
他館で開催中の展覧会ポスターが、壁一面にズラリと貼られているのです。
数えてみたところ、ざっと80枚以上のポスターが貼られていました。
人気の展覧会のポスターもちらほらありますが、
日本各地のマイナーな展覧会のポスターも多く貼られています。
また、中には、動物園のポスターも (取材は2019年1月中旬)。
ここは、通称ポスター通り。
おそらく日本で一番展覧会のポスターが密集している場所です。
この通りでしか目にできないポスターも多く、
それを楽しみにしている熱心なお客さんも少なくないのだとか。

しかし、これほどの数のポスターを誰がどのように貼っているのでしょう?
その質問に答えてくれたのは、三井記念美術館運営部の大澤さん。
前任から引き継ぎ、3年前からたった一人でポスター通りを管理している人物です。

―ぶっちゃけ、これだけ数が多いと、把握しきれないんじゃないですか?

「いえいえ。ポスターを貼る位置には、
 端から順に、1、2、3・・・と、いわば住所のようものがありまして。
 その位置に何のポスターが貼られているかをデータ化し、パソコンで管理しています。
 会期終了日の情報もデータに入れてあるので、その日を迎えたら剥がし、
 たくさんある控えのポスターの中から適したものを選んで貼っています。」

―適したもの?ということは、何かポスターを貼るルールがあるんですか?

「はい。実はあります。
 ポスター通りの入り口には、開催中の展覧会に関連するものを貼るようにしています。
 例えば、今は “国宝 雪松図と動物アート” が開催中なので、
 まずは動物繋がりで、あえて動物園のポスターを貼りました。
 続くエリアでは、動物が登場する展覧会を選んで貼っています。」

―なるほど。あれっ?でも、これらの展覧会は動物関係ないですよ!

「あぁ、それは、(指さして) こっちにカエルが、こっちに鳥が描かれていたので」

―そういうパータンもあるのですか(笑)。遊び心満載ですね。

「女性用化粧室の近くには、次の展覧会の予告をかねて、連想できるものを選んでいます。
 4月20日から “円覚寺の至宝” が予定されているので、
 今回は、仏教美術関連の展覧会ポスターを並べてみました。
 ポスター通りのクライマックスには、
 やはり三井記念美術館は茶道具のコレクションに定評のある美術館なので、
 茶道具関連の展覧会のポスターを。
 ちなみに、大トリは毎回、樂美術館さんのポスターと決めています。」

―まさか、ポスターの並びに、そんなストーリーがあったなんて!
 今まで何度もこの場所を通っていますが、気づきませんでした。


「気にしないでください。たぶん、館の人も気づいてないですから(笑)」

かくしてポスター通りでは、
今日もプロフェッショナルの手によって、ひっそりと新たなドラマが生まれている。



【この記事を振り返って・・・】
後日、この記事を読んだ大澤さんより、
是非、この記事をポスターにしたいとの連絡がありました。
おそらく今でも、ポスター通りにこの記事のポスターが貼ってあるはずです(笑)




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