先日7月3日より、約4ヶ月ぶりに東京富士美術館が再開いたしました。
現段階では、本館は休室のまま、新館常設展示室のみの開館となっています。
ちなみに、5月2日より開幕予定だった館蔵品展、
“Flower×Flower展” は会期をズラして開催されることとなりました。
(注:会場内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
こちらは、東京富士美術館のコレクションの中から、
花が登場する画や工芸品、写真などを紹介する展覧会。
かれこれ、東京富士美術館はもう何十回となく訪れているので、
花が登場する作品と聞いて、パッと思い浮かぶ作品はあれやこれやとありますが・・・・・・・
それらの作品は、会場には一つも出展されていませんでした!!
ウィリアム・モリスの 『チョーカー作品集』 や、
ガレやドーム兄弟のガラス作品、
黒田清輝の初期の作品などなど、
出展されていたのは、“はじめまして” な作品ばかり。
これまであまり展示される機会がなかった、
日陰に咲く花、野に咲く花のような作品がフィーチャーされています。
東京富士美術館を初めて訪れる方が楽しめるのはもちろん、
何度も訪れている方も、「えっ、こんな作品もあったの?!」 と新鮮な気持ちで楽しめる展覧会。
いつもとは違うメンバーが、会場で一花も二花も咲かせていますよ。
さてさて、出展作品の中で気になったものをいくつか絞ってご紹介いたしましょう。
まずは、メアリー・カサットの 《団扇を持つバラ色の服の女》 から。
こちらは、印象派を代表する女性画家メアリー・カサットによるパステル画。
ジャポニスムの影響を受けているのでしょう。
モデルの女性は、団扇を持っています。
・・・・・・が、そんなことよりも。
冷静に見てみると、女性の顔と比べると、かなり大きめな団扇です。
というか、腕も妙に長いです。
ゴムゴムの実でも食べたのでしょうか??
女性画家と言えば、こちらの 《隅田川桜》 という作品も。
作者の名前は、織田瑟瑟 (しつしつ)。
父方の先祖はなんとあの織田信長なのだそう。
彼女が描くのがほぼほぼ桜の絵だったことから、「織田桜」 と称されているそうです。
ちなみに、瑟瑟が桜の絵を描いていた際に、
鳥が実物の桜と見間違え、止まりにきたという逸話も残されているのだとか。
その鳥は、もしかしたらホトトギスだったかもしれませんね。
鳴かぬなら 騙してしまえ ホトトギス。
日本の工芸品もいろいろと紹介されていましたが、
その中で印象的だったのが、古伊万里の 《色絵沢瀉文徳利》 です。
沢瀉 (おもだか)とは、オモダカ科の水生植物なのだそう。
赤い葉っぱに、緑の花。
そんなトリッキーな植物があるものかとググってみたら、
オーソドックスに、緑の葉っぱに、白い小さな花を咲かせる植物でした。
実物通りの色で表現するのではなく、感性による色遣いです。
野獣派のような古伊万里といえましょう。
また、その超絶技巧に驚かされたのが、
薩摩焼の 《錦手風俗猿図四角花瓶》 という作品。
とにかく絵付けが細かい!
花びら1枚1枚だとか、猿の毛並みだとか、ゴザの編み目だとか。
密も密。
どうやって筆で描いているのか、想像を絶するものがありました。
日本の職人技のスゴさを思い知らされる逸品でした。
そうそう、職人技と言えば。
日本の柿右衛門を写したフランスのシャンティ窯の陶器も紹介されていました。
左が、江戸時代前期に作られた柿右衛門。そして、右がシャンティ窯による陶器です。
フォルムこそ、フランスっぽさが感じられますが、
絵付けは、かなり日本の柿右衛門に寄せており、パッと見ただけではフランス製とはわかりません。
が、しかし、よくよく近づいて見てみると・・・・・・・・
鳥がゆるキャラのようでした。
しかも、太湖石は、どうにも石には見えません 。発泡スチロール製??
やっぱりフランスの人が日本を見よう見まねすると、
リュック・ベッソンの映画のように、どこかおかしな感じになってしまうのですね。
そう思いつつ、隣の柿右衛門の磁器に目をやると・・・・・・・
こっちもこっちで、鳥がゆるキャラのようでした。
前言撤回。
決して、フランスの職人さんの腕が悪いわけでなかったようです。
むしろ、ちゃんと完コピしていたのですね。
疑ったりして、ごめんなさい。
ちなみに。
常設展示室のほうでは、見逃せない作品がサラッと出展されています。
2019年に新収蔵されたばかりの作品で、
ロシアを代表する巨匠イリヤ・レーピンによる 《ウクライナの女》 です。
お披露目されるのは、今回が初めて。
なお、日本国内の美術館が所蔵するレーピン作品としては、
横浜美術館が所蔵する 《
日本でレーピンが見られるのは、超レアな機会なのです。
よく見れば、女性の頭上にオレンジの花が描かれていました。
小さな作品ですが、こちらのFlowerも見逃しませんように。