エモ・い
(形)〔感動を意味するエモーション(emotional)から〕
(主に若者言葉で)心に響く。感動的である。
皆さまは、『エモい』 という言葉を使っていますか?
「この歌詞エモい」 とか 「この文章エモくね?」 とか、
若者たちは会話やSNSの中で、自然に 『エモい』 を使っているようです。
「なんでもかんでも、『エモい』 や 『ヤバい』 で表現する若者はけしからん!」
そんな声もあるかもしれませんが、
やはり新しい概念は学んでおいて損はないでしょう。
ということで、『エモい』 について学んでみることにしました。
まずInstagram上では、「#エモい」 写真が多く投稿されているとのこと。
早速、そんなエモい写真の数々をチェックしたところ、
しばらく眺めるうちに、なんとなくある共通点が浮かび上がってきました。
なるほど!これが、エモいという感情なのか!!
さてさて、エモい写真があるならば、エモい名画もあるはず。
そこで本日は、エモいを覚え立ての僕が、
エモいと思われる名画の数々を紹介したいと思います。
エモくない場合は、遠慮なくご指摘くださいませ。
◉吉田博 《瀬戸内海集 光る海》
エモい写真にまず第一に共通していたのは、キラキラしていないこと。
少し前に流行った、いわゆる “映える” カラフルな写真と違って、色味は大人しめ。
写ルンですやポラロイドカメラで撮ったような、どこか懐かしさを覚えるものがありました。
それらの色味に一番近かったのが、吉田博です。
夕暮れ時のノスタルジックな空気も含めて、まさにエモい一枚です。
◉川瀬巴水 《目黒不動堂》
新版画と 「エモい」 は相性が良いのかも。
吉田博同様に川瀬巴水の作品世界も、やはりエモいです。
新海誠監督作品は、エモいのだそうですが、
川瀬巴水の新版画は、どこか色合いやトーンが新海誠作品に通ずるものがあります。
RADWIMPSの曲が流れてそう。
◉谷内六郎 《びんの中の夏》
Instagramに投稿された 「#エモい」 写真の中には、
レトロな喫茶店だとか町中華だとか寂れた看板だとか、昭和レトロなものも多くありました。
美術界で昭和レトロといえば、谷内六郎を置いて他にいないでしょう。
ということは、谷内六郎館のある横須賀美術館は、エモい美術館と言えるのかもしれません。
◉エドワール・ホッパー 《ガス》
日本に昭和レトロがあるように、
アメリカには、古き良きオールディーズの時代があります。
アメリカの若者は、きっとその光景にエモさを感じていることでしょう。
(↑アメリカに 「エモい」 概念があるかは定かではありませんが)
ホッパーの作品に共通するちょっとうら寂しい空気は、まさにエモい以外の何者でもありません。
◉サルバドール・ダリ 《窓辺の人物》
「#エモい」 とハッシュタグが付いた人物写真の大半が、後ろ姿でした。
「表情が見えない→思わず想像をかき立てられる→エモい」 ということなのでしょう。
あと、やたらと海が登場していました。
その方程式でいけば、ダリの初期の作品 《窓辺の人物》 は、エモい名画といえそうです。
◉ヴィルヘルム・ハマスホイ 《寝室》
後ろ姿と言えば、この人も。
そう、ヴィルヘルム・ハマスホイです。
全体的に落ち着いた色調も、エモさ全開。
そういえば、ハマスホイ展はSNSでも盛り上がっていましたっけ。
なるほど、エモさが若い人に受けていたのですね。
◉国吉康雄 《誰かが私のポスターを破った》
どうやら、「エモい表情」 というのもあるようです。
感情がわかりにくい。何を考えているのかハッキリと読み取れない。
そういうものが 「エモい表情」 なのだとか。
例えるなら、国吉康雄の代表作に描かれたこの女性の表情のような感じです。
誰かが私のポスターを破った。
その意味深なタイトルもエモいですね。
◉福田平八郎 《雨》
雨の景色もエモいのだそうです。
憂鬱な気分、アンニュイな気分が、エモいに繋がるのかもしれません。
雨の情景が描かれた名画といえば、
ギュスターヴ・カイユボットの 《パリの通り、雨》 や、
歌川広重の 《東海道五十三次ノ内 庄野 白雨》 などがありますが。
その中でも一番エモさを感じるのが、福田平八郎の 《雨》。
まず瓦そのものがエモいです。
雨がポツポツと降り始めた瞬間のこの叙情的な感じが、たまらなくエモいです。
福田平八郎の 「平八郎」 という名前もエモいですね!
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ほぼ半日近く、「エモい」 について学んでいたら、
なんだかもうあらゆるものにエモさを感じるようになってしまいました。
ヤバいですね。