現在、茅ヶ崎市美術館で開催されているのは、
“ヴィンテージアロハシャツの魅力” という展覧会。
国内の公立美術館としては史上初となるアロハシャツをテーマにした展覧会です。
何を隠そう、茅ヶ崎市役所の市職員は、
夏はクールビズで、アロハシャツを着用しているとのこと。
なるほど。茅ヶ崎市美術館でアロハシャツの展覧会が開催されるわけです。
さて、今回の展覧会では、東洋エンタープライズ株式会社代表取締役で、
世界的なアロハシャツコレクターでもある小林亨一さんのコレクションの中から選りすぐられた、
1930年代から50年代にかけて作られた貴重なヴィンテージアロハシャツの数々が紹介されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
展覧会の第1章では、ムサシヤやハレ・ハワイなど、
アロハシャツの黎明期を支えた主要ブランドを紹介しつつ、アロハシャツに関してのイロハを紹介。
アロハシャツは、ハワイの日本人移民が、
着物を解体して、シャツに仕立てのが起源ということを、何かで耳にした記憶がありましたが。
どうやら、その説の信憑性はそれほど高くないのだそうです。
ハワイを訪れた観光客が日本人移民が経営する個人商店に、
和柄の生地でシャツをオーダーしたのがきっかけだったとのこと。
そう、アロハシャツは移民のプライベート用ではなく、
観光客のお土産物として誕生したものだったのです。
ちなみに、『アロハシャツ』 という言葉は、
「キングスミス」 というブランドが、1936年に商標登録したものなのだとか。
なんと、アロハシャツは一般名ではなく、商品名だったのですね!
そんな知ってるようで知らないアロハシャツ。
今回の展覧会を通じて、その奥深い世界を知ることができます。
続く第2章では、アロハシャツの多様な柄を紹介。
まずは、さまざまな和柄のアロハシャツが紹介されていました。
どれもこれも貴重なヴィンテージアロハシャツなのですが、
中でもとりわけ貴重なのが、こちらの 《百虎》 と呼ばれる柄なのだとか。
全アロハシャツコレクター垂涎の柄で、
世界でも数点しか確認されていないそうです。
まさに幻のアロハシャツ。
今回の展覧会には、そんな激レアな 《百虎》 が・・・・・・・
なんと2着も出展されています!
例えるならば、フェルメール作品が2点来日しているくらいの奇跡。
いや、フェルメール作品よりも現存数が少ないので、奇跡度はさらに高め!
アロハシャツファンならずとも、観ておきたいところです。
ちなみに。
個人的に特に印象に残っているのは、
やはり、こちらの真鯛柄のアロハシャツでしょうか。
シンプルな色味に見えますが、実は15版刷りとのこと。
そこまでして鯛をリアルに表現したい。
そのモチベーションがどこから来るのか、謎が謎を呼ぶ柄でした。
このアロハシャツを着こなせるのは、さまぁ~ずの三村さんくらいである気がします。
さてさて、和柄のあとに紹介されているのは、
いわゆるハワイアン柄なアロハシャツの数々でした。
一口にハワイアン柄といっても、いくつかのタイプがあるのだそう。
例えば、シャツ全体に模様が配置されたオールオーバー (総柄) タイプのものもあれば、
スカジャンのように背中に大きな図面が描かれたバックパネルタイプもありました。
ちなみに、サザンの桑田さんが着てそうな垂直ラインが特徴的なこちらの柄は・・・・・
「ボーダー」 と呼ばれるタイプなのだそう。
“ボーダーなら横縞では?” と思ったら、
「ボーダー=横縞」 と認識しているのは、どうやら日本人だけとのこと。
また一つ勉強になりました。
最後の章では、伝説のアロハシャツデザイナー、ジョン・メイグスや、
アロハシャツの王道中の王道とされる図柄ランド・オブ・アロハなど、
アロハシャツを語る上では外せないトピックの数々が紹介されています。
個人的にとても興味深かったのは、『観光とアロハシャツ』 に関連するあれこれ。
今のようにインターネットがない時代、
人々は観光地で買ったアロハシャツの柄を通じて、
ハワイの文化や景色を知り、それがハワイのイメージとして定着していったのだそう。
アロハシャツはファッションであると同時に、メディアでもあったのですね。
ちなみに。
展覧会のラストでは、東洋エンタープライズが、
国内外のアーティストとコラボして制作したアロハシャツが紹介されていました。
それらの中には、THE ALFEEの坂崎幸之助さん、竹中直人さん、
つじあやのさん、山口智充さん、Bro.TOMさんなど、意外な人物とのコラボアロハシャツも。
夏が終わり、季節はすっかり秋ですが。
無性にアロハシャツが着たくなる展覧会でした。
(アロハシャツ割もあるそうです)