飛騨高山にある光ミュージアムに行ってきました。
『ひかり』 ではなく、『ひかる』 ミュージアム。
どことなく神殿を連想させる仰々しいこの建物を見て、
もしかしたら、ピンと来た方もいらっしゃるかもしれません。
そうです。こちらは、新宗教系のミュージアム。
高山市に本部を置く崇教真光 (すうきょうまひかり) と関わりの深いミュージアムです。
地上部分は1階建てですが、地下は3階分あります。
入口のエントランスを抜けたら、まずは地下3階へ。
そして、怪しげな・・・・・もとい、タイムロマン溢れる地下通路を抜けて、
美術館棟へと移動しました。
そちらで入館チケットを購入したら、受付を通り、
光ミュージアムのメインフロアとなる地下2階へと進みます。
すると、いきなり巨大な吹き抜け空間が目に飛び込んできました!
その名も、ピラミッドホール。
奥に見えるのは、能舞台。
そして、宙を舞うように展示されているのは、
アメリカの美術家ロバート・ラウシェンバーグの作品です。
マヤ文明×日本の伝統芸能×アメリカの現代美術
なんともカオスすぎる組み合わせに、頭の理解が追いつきません。
僕は今何を見させられているのだろう??
なお、こちらのフロアには、4つの展示室があり、
それぞれで日本美術や西洋美術コレクションが展示されていました。
さらに上のフロア (=地下1階) に進むと、
こちらには、2つの展示室が待ち構えています。
一つは、人類史展示室。
こちらでは、世界の古代文明の出土品や、
縄文土器や土偶といった日本の考古物が展示されています。
特に充実していたのは、マヤ文明やアンデス文明などの中南米文明コレクション。
日本のミュージアムの中では、間違いなく5本の指に入るコレクションでしょう。
そんな人類史展示室の向かいにあったのが、飛騨展示室。
こちらでは、主に飛騨地方で出土した化石や隕石などが展示されていました。
美術館・・・・・からの、考古系ミュージアム・・・・・からの、自然史系ミュージアム。
情報量が多くて、とても処理できませんでした (笑)
なお、地下1階のサンクンガーデンには、
スギヤマリュウとカガリュウの実物大模型があります。
世界観どないなっとんねん!
ちなみに。
もっとも衝撃だったのは、1階中庭の光景です。
中央にドーンと聳えるのは、
メソアメリカ文明の 「壁龕のピラミッド」 をモチーフにしたという巨大な建造物。
特に内部に入れるわけではなく、
ただただ見上げて、その大きさに圧倒されるだけ。
本物のピラミッド同様 (?)、なぜ建てられたのか謎すぎる建造物です。
また、その周囲を囲む外壁のレリーフは、
マヤ文明のウシュマル遺跡にある 「総督の館」 をモチーフにしているのだとか。
いや、なんかもう、参りました (←?)。
さてさて、そんな光ミュージアムで、現在開催されていたのが、
“広重 名所江戸百景 ~災害からの復興を伝えるメッセージを読み解く~” という展覧会。
実は浮世絵コレクションも有しているという光ミュージアム。
そのコレクションの中から、歌川広重が最晩年に描いた 《名所江戸百景》 を紹介するものです。
《名所江戸百景》 というと、その名の通り、江戸の名所、
つまり観光スポットを描いたガイドブックのようなものと考えられていますが、
近年の研究によると、安政の大地震からの復興を願って制作された可能性があるのだとか。
その証拠となるのが、シリーズの1枚目となる 《芝うら乃風景》。
刊行されたのは、安政3年2月。
安政2年10月に大地震が起きて、わずか4か月後のことでした。
安政の大地震により、将軍の別荘・浜御殿 (現浜離宮) の石垣が崩壊したとのこと。
この絵はその修復を祝って描かれたと考えられるそうです。
また、同じタイミングで刊行された絵のモチーフが、
両国橋でも永大橋でもなく、千住大橋であることや、
もはや江戸ですらない千葉県の堀江ねこざね (現・浦安市) であることも、
説を補強する根拠となっています。
確かに、他に描くべき、江戸の名所はあるでしょうに。
地震の影響が少なかった場所や、
復興した場所から描いていったという説は、かなり信憑性がありました。
展覧会では、《名所江戸百景》 シリーズの他の作品も、安政の大地震、
およびその翌年に起きた安政3年の大風災の復興という視点で読み解いています。
見慣れた 《名所江戸百景》 シリーズが、まったく新しい見え方に。
非常に興味深い展覧会でした!