本来であれば、この秋、SOMPO美術館では、
“ゴッホと静物画―伝統から革新へ” が開催される予定でしたが・・・。
新型コロナウイルスの影響により、残念ながら中止になってしまいました。
しかし、SOMPO美術館に東郷青児コレクションという保険 (?) があったおかげで、
急遽、“東郷青児 蔵出しコレクション ~異国の旅と記憶~” が開催される運びに!
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
SOMPO美術館のロゴマークにも採用されている 《超現実派の散歩》 や、
サロン・ドートンヌに出品され、フランス政府から文化勲章を授与された 《干拓地》、
さらには、東郷青児作品の中でも屈指の人気を誇る 《望郷》 といった代表作はもちろんのこと。
これまであまり出品される機会のなかった作品や、
東郷青児自身が蒐集したコレクションの数々も展示されています!
展覧会のキーワードは、『旅』。
24歳から7年間をフランスで暮らし、
63歳以降は毎年のように海外を旅したという東郷青児。
これらの旅が、いかに東郷青児の芸術に強い影響を与えたのかを実感させられる展覧会でした。
それと同時に、会場に展示された東郷青児の作品や、
彼が旅先で集めた品々を通じて、海外旅行に行った気分を味わえました。
海外旅行に気軽に行けない今にピッタリの展覧会といえましょう。
急遽開催されたものとは思えないくらいに、普通に充実している展覧会でした。
さてさて、見どころはいろいろとありましたが、
個人的に強く印象に残っているのが、《女体礼賛》 という作品。
その隣に、東郷青児の所蔵品の一つ、
明時代の六臂観音菩薩像が並べられていました。
直接影響を受けたというような解説は、特になかったですが。
2人の女性が重なっていると思われる不思議な構図は、
確かに、六臂観音菩薩像にインスパイアされたのかもしれません。
首が長い。腰が細い。腕が長い。
いろんな要素がありすぎて、一瞬気が付きませんでしたが。
よく見ると、手前の (?) 女性の左手が妙な形になっていました。
寄生獣??
それから、珍しいところでは、東郷青児による彫刻作品も紹介されていました。
あんなにも滑らかな肌の曲線的な女性像を得意とする東郷青児ですが。
彫刻作品になると、この通り。
真逆か!
質感といい、色合いといい、フォルムといい。
まるで干からびたミイラのようでした。
『バイオハザード』 にこんなんが出てきてた気がします。
また、もう一つ珍しいところでは、
東郷青児の晩年の作品も紹介されていました。
こちらも滑らかな絵肌とは、真逆の作風。
いわゆる “東郷美人” のスタイルを確立してからは、
生涯それ一本でいった保守的な画家のような印象を抱いていましたが。
実は、晩年まで新たな画風に挑んだチャレンジ精神豊かな画家だったのですね。
今回の展覧会を通じて、東郷青児を見る目が確実に変わりました。
そうそう、見る目が変わったといえば。
これまでは、「二科会のドン」 と呼ばれていた頃の、
貫禄たっぷり脂が乗り切った彼の姿しか見たことがありませんでしたが。
展覧会の冒頭に展示されていた若き日の東郷青児の写真を見て、イメージが一変しました。
めちゃめちゃイケメンじゃないか!
オールバックでもイケメンなのは、本物のイケメンの証です。