(注:この記事はネタバレを含みます)
■風神雷神 Juppiter,Aeolus
作者:原田 マハ
出版社:PHP研究所
発売日:2019/10/29
ページ数:(上) 352ページ (下) 352ページ
20XX年秋、京都国立博物館研究員の望月彩のもとに、
マカオ博物館の学芸員、レイモンド・ウォンと名乗る男が現れた。
彼に導かれ、マカオを訪れた彩が目にしたものは、
「風神雷神」 が描かれた西洋絵画、天正遣欧使節団の一員・原マルティノの署名が残る古文書。
そしてその中に書かれた 「俵…屋…宗…達」 の四文字だった―。
織田信長への謁見、狩野永徳との出会い、宣教師ヴァリニャーノとの旅路…。
天才少年絵師・俵屋宗達が、イタリア・ルネサンスを体験する!?
アートに満ちた壮大な冒険物語。
(「BOOK」 データベースより)
「『楽園のカンヴァス』 を筆頭に、
このブログでも紹介した 『暗幕のゲルニカ』 や 『美しき愚かものたちのタブロー』 など、
原田マハさんの美術小説には、名作が多々ありますが。
この小説はどうなんだろう・・・・・・・。う~ん。
主人公は、《風神雷神図》 でお馴染みの俵屋宗達。
日本人なら誰もが知る名作を描いた人物ながら、
生没年やその生涯など、ほとんど何もわかっていません。
それゆえに、原田さんは創作意欲が掻き立てられたのでしょう。たぶん。
若き日の宗達の姿を活き活きと描き切っています。
小説なので。フィクションなので。
何を描いて自由であることは、重々承知しています。
むしろ、個人的には、史実にガチガチに沿ったものよりも、
「もしかしたら、こんなこともあったりして?」 と想像力を駆使したお話のほうが好きです。
だから、織田信長が 『宗達』 という名前を与えたとか、
信長の命により、狩野永徳と競作して 《洛中洛外図》 を描いたとか、
そこに関しては、フィクションとして大いに楽しませて頂きました。
ただ・・・・・・・。
俵屋宗達が天正遣欧使節団とともに、
ヨーロッパへと渡ったというのは、いくらなんでも。
上下巻に及ぶ物語の大半が、
宗達と天正遣欧使節団の旅路を描く冒険譚となっているのですが。
読んでいる間ずっと、頭の中で “いやいやいや・・・” を連発していました。
さらに、ローマ教皇に謁見した後、
一行は、イタリアの諸都市を巡るのですが。
その中で、宗達と原マルティノの2人は、
ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院を訪れます。