昨日ご紹介した天王洲の新たなアート施設WHAT。
実は、その前身となるのは、2016年にオープンした、
日本初となる建築模型のミュージアム・建築倉庫ミュージアムです。
母体となる寺田倉庫に美術品を保管している、
美術コレクターのコレクションを展示するミュージアムに生まれ変わったため、
建築の要素は、まったく無くなってしまったかのように思われました。
が、しかし!
建築倉庫ミュージアム時代に公開していた建築模型の数々は、
「模型保管庫見学+WHATチケット」 を購入すれば、現在も鑑賞することが可能だそうです。
なお、そのセットチケットの料金は、1700円。
1000円の入館料からスタートし、2000円、3000円と、
ハイスピードでインフレしていった建築倉庫ミュージアム。
今回のWHATへのリニューアルにより、
適正価格に落ち着いたのは嬉しい限りです。
また、建築倉庫ミュージアム自体も、「建築倉庫プロジェクト」 と改名し、
これからも引き続き、WHAT内で建築に関する展覧会を開催していくとのこと。
その新生一発目となるのが、“謳う建築” という展覧会です。
こちらは、詩人であり建築家でもあった立原道造、
その精神にインスピレーションを受けた展覧会とのこと。
庁舎、教育施設、ミュージアム…etc
幅広い建築のジャンルの中で、もっとも私的である住宅建築をフィーチャー。
住宅建築史に名を残すレジェンド建築家から、
今大注目のネクストブレイク候補の若手建築家まで。
14名の建築家による住宅建築をそれぞれ、
詩人や作家、シンガーら14名の文芸家が実際に訪問しました。
それにより生まれた詩と建築模型を併せて紹介するという画期的な試みの展覧会です。
「東孝光×暁方ミセイ」 「吉村順三×蜂飼耳」 など、
何が生まれるか予測不能の意外すぎるマッチングが、続々登場!
詩を通じて、建築を観る。
または、建築を通じて、誌を味わう。
新感覚の建築展です。
建築模型もさまざまなスタイルがありましたが、
それに輪をかけて、詩のフォーマットもさまざま。
バインダー式のものもあれば、
床に直書きしているものもありました。
複数のフレーズを構成する。
そういう面では、誌も建築も通ずるところがあるのかも。
そんなことを思わせる展覧会でした。
どのマッチングも刺激的でしたが。
中でも印象に残ったのは、能作文徳×常山未央による自邸兼事務所、
「西大井のあな」 と、長塚京三さんの息子で劇作家の長塚圭史さんとのコラボ。
長塚さんが 「西大井のあな」 を訪れ、
この建築を舞台にした戯曲を創作したそうです。
会場では、そのほんのごく一部が紹介されていました。
いずれ何かの機会で発表するとのこと。
実際に、「西大井のあな」 で上演される機会があれば、是非行きたいものです。
というのも、西大井は上京して8年間ほど住んでいた想い出深い街。
西大井は知り尽くしているので、なんなら戯曲に参加してもいいくらいです (←?)。
それから、こんな注目のマッチングも。
篠原一男が設計した 「谷川さんの住宅」 に関して、
その住人であった詩人の谷川俊太郎が描き下ろしの詩を制作。
住んでいた人間だからこその親密な内容の詩かと思いきや。
「いつかつつましく朽ちて墓となる定め」 であるとか、
「褪せた平面図は未来の古文書となるだろう」 であるとか。
スケール感が大きすぎるフレーズが続出していました。
そうそう、谷川俊太郎さんといえば。
僕の母校、高津中学校の校歌の作詞をしているのですが。
そのフレーズの中に、「サバンナの草をなびかせ」 とか、
「フィヨルドの水を渡り」 とか 「風よめぐれ 宇宙をめぐれ」 とか。
スケール感が大きすぎるフレーズが続出していましたっけ。
きっと、そういう芸風 (?) なのでしょう。
最後に、個人的にやや気になったのが、
中村好文さんの 《Cliff House/Cliff Hut》 をもとに・・・
詩人の小池昌代さんが制作した詩です。
その中にこんな一文がありました。
「その先に
ベランダという 半外部があって
突端へ 出た
連続だ どこもかしこも
肛門から
喉元へと続く」
表現は自由だと思います。
それを重々承知した上で何なのですが、
建物の一部を肛門に例えるのは、どうなんでしょう・・・・・??
住んでる人がいるわけで・・・・・。