2020年12月12日。
今最も注目を集めるアートエリアの一つ、
『天王洲アイル』 に新たなミュージアムがオープンしました。
その名は、WHAT (ワット) 。
今年創立70周年を迎える寺田倉庫が手掛けるミュージアムです。
まず何といってもユニークなのが、この施設名。
こちらは、「何?」 という意味ではなく、
「WAREHOUSE OF ART TERADA」 というフレーズが由来となっているそうです。
さらに、ユニークなのが、ミュージアムのコンセプト。
それは、『倉庫を開放、普段見られないアートを覗き見する』 というもの。
美術品の保管に定評のある寺田倉庫には、
多くの美術コレクターが、そのコレクションを預けています。
普段は倉庫に眠っているそれらのコレクションを、
一般に開放し、広く多くの人に観てもらおうというのが、WHATのコンセプト。
自身のコレクションを観てもらえて、美術コレクターも嬉しい。
普段見られないアートが観られて、美術ファンも嬉しい。
何ともwin-winな関係です。
そんなWHATのオープニングを飾るのが、
“-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション展” という展覧会。
2人の美術コレクターの秘蔵の美術コレクションを紹介する展覧会です。
まず紹介されているのは、精神科医・高橋龍太郎氏の現代アートコレクション。
これまで何度か美術館で公開される機会があったため、
美術ファンには、すっかりお馴染みの高橋龍太郎コレクションですが。
今回は、これまで一般に公開していない初お披露目の作品を中心に展示しています。
まさに、蔵出し作品!
それらの中には、大山エンリコイサムさん、梅沢和木さん、
毛利悠子さんをはじめ、近年人気急上昇中のアーティストの作品も!
さらには、草間彌生さんや会田誠さんといった、
高橋龍太郎コレクションでお馴染みの作家の作品も含まれていました。
注目の若手から、ベテラン勢まで。
今押さえておくべき実力派アーティストが一堂に会す。
そんな 『紅白歌合戦』 のような展示空間となっていました。
精神にダイレクトに訴えかけてくるような。
インパクト強めの作品が多々ありましたが、
中でも特にインパクトが強かったのは、水戸部七絵さんの 《DEPTH》 です。
作品を横から見ると、こんな感じ。
普通に考えたら、彫刻作品、造形作品のように思えます。
が、しかし、こちらは油彩画。
水戸部七絵さんは立体作家ではなく、画家なのです。
匿名の顔をモチーフに、思うがままに描いていくという彼女。
その結果、絵の具が塗りに塗り重なって、このような作品が完成するそうです。
ちなみに、多い日では、1日で絵の具のチューブを100本以上使うこともあるのだとか。
彼女の作品を観てしまうと、ゴッホやルオーの厚塗りが大したことなく感じます。
なお、当然、布製のキャンバスでは、その重みに耐えることができません。
そのため、特注の鉄製のキャンバスの上に描かれています。
トータルで何㎏なのでしょう・・・??
自宅には飾れる気がしない作品です。
さてさて、続いて紹介されていたのは、
1969年千葉県生まれの実業家A氏のコレクション。
彼 (もしくは、彼女) が特に集めているのは、
横浜美術館での個展で偶然お会いした際に、
その人柄に惚れたという奈良美智さんの作品です。
A氏は、とりわけ初期の作品がお気に入りだそうで、
80年代90年代の奈良美智作品を中心に蒐集しているのだとか。
今展には、約40点を出展 (途中一部入れ替えあり)。
それらの中には、倉庫に預けているものだけでなく、
普段、自分の家に飾ってある愛着の強い作品も含まれています。
そのうちの一つが、こちらの 《Slash with a Knife》 という作品。
一番初めに購入した記念すべき奈良美智作品とのこと。
玄関に飾ってあるそうで、毎日家を出るときに、
そして、家に帰ってくるときに、向き合う作品なのだそうです。
可愛い女の子に見送りと出迎えを毎日してもらえるなんて、
羨ましいですね・・・・・・・って、よく見たら、女の子の手にはナイフが!
いや、どんな見送りと出迎えだよ!!
日々、緊張感が絶えなさそうです。
他にも、奈良美智さんの立体作品や、
浮世絵をモチーフにした版画作品なども展示されていましたが。
何よりも目を惹いたのは、やはりこちらの 《Rock and Roll(アートカー)》。
全面に奈良美智さんのイラストが施されていました。
A氏は、たまにこの車で実際にドライブをしているのだとか。
ロックンロール!