現在、菊池寛実記念 智美術館では、
“三輪龍氣生の陶 命蠢く” が開催されています。
(注:緊急事態宣言の発令を受け、4月25日から5月11日までの予定で臨時休室しています)
江戸時代から代々続く萩焼の名家に生まれ、
2003年に、十二代三輪休雪を襲名したものの。
2019年、79歳の時に、平成から令和に変わるタイミングで、
実の弟に十三代を譲った三輪龍氣生さんの大々的な展覧会です。
ちなみに、「龍氣生」 と書いて、「りゅうきしょう」 と読むのだそう。
北斎晩年の 「画狂老人卍」 と並ぶくらいに、アバンギャルドな改名です。
しかし、アバンギャルドなのは名前だけにあらず。
その作品は名前以上に、アバンギャルドです!
今展は展示室へと向かう螺旋階段から始まっており、
不意打ちを喰らうように、衝撃的な光景が目に飛び込んできて、
思わず、「ひっ・・・」 と引きつったような声をあげてしまいました。
こちらに向かって、手を差し出す異形の人々。
芥川龍之介の 『蜘蛛の糸』 を想起させるものがありました。
地下に降りて、作品をマジマジと観てみると、
どこかユーモラスで、ハロウィン感 (?) も醸し出されています。
これらの作品は 「人間」 シリーズと名付けられているのだそう。
発表されたのは、1976年。
三輪さんが30代の時に、自身の心の奥に溜まった、
悲しみや苦しみといったヘドロのようなものを表現した作品シリーズだそうです。
今から約50年前の作品とは思えないキャッチーさ、ポップさがあります。
続いて、目に飛び込んできたのは、
2020年に制作された新作の一つ、《崩壊と生成》 です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
三輪さん曰く、宇宙も地球上も崩壊と生成で成り立っているとのこと。
崩壊した古代王宮の遺跡や摩天楼。
それを上から見守る白鷲が散華している様を表しているのだとか。
なお、黄金の中には・・・・・
生成を象徴する女神の姿が。
いろいろとよくわからなかったですが、
彫刻でなく、陶でこの作品が制作されていることに純粋に驚かされました。
しかも、80歳の方の作品であることに、二重に驚かされました。
もうこの時点ですでに何度も驚かされていますが。
メインとなる展示室での驚きは、この比ではありませんでした。
一体、どれくらい驚かされたことでしょうか。
会場を埋め尽くしていたのは、
大学院修了制作の作品から、昨年制作されたばかりの新作まで。
約80点。
“展示されている” というよりも、
まさに “蠢いている” というような印象でした。
どの作品も不思議な生命力に溢れています。
時代が移り変わるとともに、幅広いテーマで、
常に新たな作品を生み出し続けてきた三輪さんですが。
とりわけ特徴的なのが、デビュー時から、
現在に至るまで一貫している 「エロス」 というテーマです。
「なぜ焼き物にエロスを感じてはいけないのか。
なぜ茶室は官能的であってはいけないのか。」
そんな言葉を残しているだけあって。
三輪さんの作品からは、壇蜜くらいエロスが溢れ出ていました。
これらの作品が目に飛び込んでくるたびに、
脳内では、「ワーオ‼」 という効果音が再生されます (笑)
エロス風ではなく、“ザ・エロス” 。
周囲に女性のお客さんがいないかと、
思わずキョロキョロしてしまうレベルです。
レンタルビデオ屋でそういうコーナーに入る時くらいのドキドキ感を覚えました。
まさか美術館で、こんな気持ちになるだなんて。。。 (焦)
出展されていた作品は、どれもインパクトがありましたが。
いや、むしろインパクトしかなかったですが。
個人的に一番印象に残っているのは、こちらの 《R氏の肖像》 です。
色彩感覚といい、モチーフといい、
バスキアを連想させるものがありますが。
制作されたのは、バスキアが活躍する80年代よりも前、70年代とのこと。
もしかしたら、来日したバスキアが、
この作品に影響を受けたのかもしれません。
それから、智美術館の前館長、菊池智さんを、
イメージして制作したと思われる 《女帝》 シリーズも印象的でした。
三輪さんの目には、智さんがどう映っていたのか??
シューティングゲームのラスボス感が、ハンパなかったです。
ちなみに。
伝統的な萩焼の家系に生まれているにも関わらず、
三輪さんは、お皿や壺といった用途のある焼き物はほとんど制作していないとのこと。
しかし、近年ようやくお茶碗を作るようになったそうです。
それが、こちらの 《生盌(せいわん)》 シリーズ。
ハーレーダビッドソンに乗って、
クロムハーツのシルバーアクセをしている人が好きそうなデザインでした。
矢沢永吉に似合いそう。
ちなみに。
ラストに展示されていたのは、
鳩をモチーフにした香合でした。
いや、こういうカワイイのも作れるんかい!
これまでの長いフリがあっただけに、
最後の最後で、自然とツッコみたくなりました。