“神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム” という展覧会。
(注:緊急事態宣言の発令を受け、4月29日から5月12日まで臨時休館しています。最新情報は美術館ウェブサイトをご確認ください。)
草間彌生さんの作品といえば、
ビビットでカラフルでポップという印象が強いかもしれませんが。
実は、アーティストデビューをした頃から、
現在に至るまで、モノクロームや単色の作品も数多く制作しています。
そんな草間さんのモノクロームの世界をフィーチャーしたのが、今回の展覧会。
普段のイメージとは違った、シックな草間ワールドが楽しめる展覧会です。
まず1階に展示されていたのは、銀一色の立体作品。
《去ってゆく冬》 です。
要所要所に穴が開けられており、そこから中を覗けば、
摩訶不思議な合わせ鏡の世界を体験することができます。
合わせ鏡を使った作品は、これまでにもありましたが。
穴が無数に開けられているのが、この作品の最大のポイント。
それらの穴から様々な景色が映り込むことで、複雑な光景を作り出していました。
《去ってゆく冬》 で頭が若干混乱した後は、2階の展示室へ。
こちらには、モノクロームの平面作品が壁一面に飾られています。
モノクロームだから、カラフルな作品と比べて、
パワーが抑えられているかといえば、そんなことは全くなく。
むしろカラフルな作品よりも、カラフルといいましょうか。
単色である分、自分の頭で色を補正してしまうため、
かえって、迫りくるような強烈な色彩感覚を味わうこととなりました。
なお、こちらの展示室には、
初期のソフト・スカルプチュア作品も展示されています。
動いてないはずなのに、
なぜかモゾモゾと動いているような感覚が。
その姿をしばらく観ていたら、
なんだか自分の心もモゾモゾとしてきました。
感覚が敏感な方は、長時間の鑑賞にご注意くださいませ。
続いては、3階の展示室へ。
こちらの展示屋では、開館以来、
基本的に、「わが永遠の魂」 シリーズが紹介されています。
今回展示されている 《わが永遠の魂》 は、全32点。
そのうち、昨年制作されたものは11点です (うち、10点が世界初公開)。
部屋全体はカラフルなのですが、1点1点よく見ると、
どの作品も2色しか使われていないことに気が付きます。
やはり、これらもモノクロームの世界ですね。
ところで、何よりも気になったのが、
床に無数に置かれた銀色のオブジェです。
『ターミネーター2』 のT-1000・・・かと思いきや (←んなこたない)。
雲をモチーフにしたインスタレーション作品とのこと。
日本で公開されるのは、今回が初めてとなるそうです。
ステンレス製の作品の表面に、
「わが永遠の魂」 シリーズが映り込む様子は、なんとも幻想的でした。
ちなみに。
草間彌生美術館を訪れるのは、約1年ぶり。
屋上にあった 《ナルシスの庭》 というインスタレーション作品は、
《天空にささげたわたしの心のすべてをかたる花たち》 に変わっていました。
また、4階のインスタレーション作品も、
いつの間にやら、新たな作品に変わっていた模様。
展示室の前には、シール付きの造花がたくさん置かれていました。
どうやら、この中から好きなものを1つ選び、
展示室内の好きな場所に貼るという参加型の作品であるようです。
アートテラーたるもの、面白いところに貼らねば!
そう決意して、展示室内に入ったところ、
衝撃的な光景が目に飛び込んできました。
ほぼほぼ貼るところ無いがな!!
壁やら家具やら照明やら、黄色い花でビッシリ。
ミスチルのアルバムみたいなことになっていました。
黄色い花のシールが貼られすぎて、もはや原形がわからず。
かつてビニール傘やジャケット、
スタンドミラーだったものが、そこらにありました。
ゴッホの黄色い部屋よりも黄色い部屋。
そんな黄色一色の部屋に、しばらくいたせいでしょう。
↑展示室を出た後の、
この白い階段が一瞬黄色に見えました。
黄色の残像よ。