現在、千葉市美術館で開催されているのは、
“福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧” という展覧会。
現代アートの世界で独自の立ち位置にて、
第一線で活躍し続ける福田美蘭さんの首都圏では8年ぶりとなる大規模個展です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
これまで幅広いジャンルの美術品をモチーフに、
独自の解釈を加えた作品を次々に発表してきた福田さんですが。
今展では、日本美術をモチーフにした作品に絞って、展覧会が構成されています。
そんな展覧会の目玉は何といっても、
千葉市美術館コレクションを元ネタにした新作の数々。
その数、なんと16点にものぼります！
例えば、展覧会のメインビジュアルに使われているこちらの作品。
《風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗》 です。
元ネタは、月岡芳年の同タイトルの浮世絵作品。
展覧会では、2点が比較できるように並べられています。
元ネタに比べて、煙の量がパワーアップ！
けむさう （＝煙そう） なのは、明らかに福田美蘭さんのほうです。
さらに注目してみると、煙の形に見覚えが・・・。
桑田佳祐さんの 『SMILE～晴れ渡る空のように～』 が思わず脳内で再生されました。
そう。これは五輪のマーク。
コロナ禍での開催を日本が押し付けられた姿を暗示しているそうです。
コロナ禍ならではの新作は他にもありました。
こちらはその元ネタとなる鈴木春信の 《三十六歌仙 紀友則》。
表面をよーく見てみると、「きめだし」 と呼ばれる、
エンボス加工のような技法で、雪が積もったさまが表現されていますね。
こちらを元にした福田さんの新作の方にも、「きめだし」 が。
ただし、雪が積もったさまではなく、
飛沫のシミュレーションが表現されています (笑)
アフターコロナならではの作品ですね。
時事ネタばかりかといえば、さにあらず。
鈴木其一の 《芒野図屏風》 をモチーフに、こんな作品を制作していました。
元ネタの 《芒野図屏風》 では、
薄野にうっすらと靄がかかっていますが。
福田さんの作品のほうには、靄がかかっていません。
しかし、あることをすれば、この絵の上に靄が現れてくるのです。
ヒントは、画面の下にある2つの黒い点。
さらにヒントをいえば、《芒野図屏風・３Ｄ》 というタイトル。
見れば見るほど、視力が良くなる効果もある作品です。
また、日本美術の画題としてはベタな 「松竹梅」。
その画題を福田さんが描くと、こうなります。
そっちの松竹梅かーい！！
いきなりのベタなボケ （？） に、
思わず心の中でベタにツッコんでしまいました。
さてさて、新作以外にも、
ディズ〇ーキャラを連想させる 《誰が袖図》 や、
写楽の役者絵は舞台上ではこんな感じだったはずと想像して制作した作品、
枯山水の中に、さりげなく尖閣諸島を盛り込んだ作品など、
クスっと笑える作品がたくさんありました。
何よりも福田さんがスゴいのは、
これらの作品を、自分で描いているということ。
ディズ〇ータッチの絵も手描きなら、
役者の姿も枯山水も写真ではなく、描かれたものです。
これほどの写実の能力があれば、
それだけで十分成立しそうなものなのに。
あえて画力で勝負せず、アイディアで勝負するところに感銘を受けます。
さらにスゴいのが、それらのアイディアが全く被っていないということ。
普通だったら、一つのアイディアを思いついたら、
味がしなくなるまで、他にも同様の作品を制作しそうなものですが。
福田さんは、次から次へと異なる角度からアイディアを生み出しています。
お笑い芸人に例えるなら （←？）、バカリズムさんタイプです。
とにもかくにも、面白い展覧会でした！
お笑い芸人のライブに例えるなら （←？？）、
バカリズムさんの単独ライブを観たくらいの充実感がありました。
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