現在、Bunkamura ザ・ミュージアムでは、
“ボテロ展 ふくよかな魔法”が開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
コロンビアを代表する国民的画家で、
今年めでたく90歳を迎えたフェルナンド・ボテロ。
その日本では26年ぶりとなる大規模展覧会です。
ボテロの作風の特徴は何といっても、
描かれている人物が皆一様に、ふくよかであること。
コロンビアの人全員が、
このような体型ではないとは思いますが。
『世界まる見え!テレビ特捜部』で、
こんなシーンを実際に観たことがあるような。
そんな謎の説得力があります。
また、市井の人々だけでなく、ボテロが描くと、
イエス・キリストやモナ・リザといった名画のモデルもぽっちゃり体型に。
マリー・アントワネットも、ごらんの有様です。
パンが無ければ、バターをたっぷり使ったケーキを食べればいいじゃない。
カロリーなんて気にせず、好きなだけ食べればいいじゃない。
疲れるから、運動もしなくていいじゃない。
そんなこんなで、こんな体型になったのでしょう。きっと。
さらには、ボテロは人間に限らず、
生き物や静物までもメタボ化させています。
彼の手にかかれば、あらゆるものが、ぽってりとしたフォルムに大変身。
ぽってり・・・ぼってり・・・ぼってろ・・・ぼてろ・・・ボテロ!バンザーイ!
名は体を表す、とは、まさにこのことです。
なお、今展に出展されているのは、約70点。
そのうちの大半が、日本初公開とのことです。
それらの中には、ボテロが今の作風に辿り着く前の初期の貴重な作品も。
17歳の時に描かれたという《泣く女》は・・・・・
あまりにも標準体型すぎて、
ボテロの個性がまったく感じられませんでした。
その10年後に描かれた作品では、
すでに人物がふくよかにはなっていましたが。
ぽっちゃり体型というよりも、
腹踊りをしている人のような感じでした。
ちなみに。
ボテロ自身は、生涯を通じて中肉中背。
そんな彼が、どうしてこのふくよかな画風に辿り着いたのでしょうか?
それは、1956年のある晩のこと。
ボテロはアトリエで、マンドリンを描いていました。
その際に、何気なくマンドリンの穴を小さく描いたところ、
マンドリンのフォルムと穴のコントラストにより、楽器がふくらんで見えたのだとか。
それ以来、ボテロは一貫して、
ボリュームを表現することに、心血を注ぐようになったそうです。
右を見ても、ふくよか。
左を見ても、ふくよか。
ふくよかに描かれた人々には、暖か味と安心感があり、
観ているだけで、心がほぐされるような効果がありました。
不思議と、会場にいたお客さん全員の表情がゆるんでいたような。
あと、不思議と、会場にいたお客さん全員がスリムに感じられました。
瘦せ見え効果もある展覧会です。