Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

館蔵品展 井上長三郎・寺田政明・古沢岩美の時代

$
0
0

ピカソに、シャガールに、モディリアーニに、藤田嗣治に。

20世紀初頭に名だたる芸術家たちが集ったパリのモンパルナス
そんなモンパルナスを彷彿とさせる芸術の街が、かつて東京にもありました。
それは、池袋駅のちょっと西のエリア
1930年代から40年代にかけて、その一帯に、

当時としてはかなり画期的なアトリエ付き住宅がいくつも存在していました。
多くの画家や評論家、詩人、演劇関係者などが住み、
いつしか、その一帯は池袋モンパルナスと呼ばれるようになったのだとか。

 

そんな池袋モンパルナスをフィーチャーした展覧会を、

これまで毎年のように開催してきたのが、板橋区立美術館。

豊島区の美術館ではなく、なぜ板橋??

その疑問に答えを出すような展覧会が、

ついに現在、板橋区立で開催されています。

“館蔵品展 井上長三郎・寺田政明・古沢岩美の時代—池袋モンパルナスから板橋へです。

 

 

 

単純に言ってしまえば、池袋モンパルナスの主要作家のうち、

井上長三郎、寺田政明、古沢岩美の3人は、戦後、板橋区に移り住んでいたのだそう。

そして、1979年に開館した板橋区立美術館と、生前の3人は深い親交があったのだそう。

なお、展覧会の冒頭に飾られていたポスターは、

それぞれ3人がご存命時に開催された個展のものとのことです。

 

そんな縁から、板橋区立美術館には、

3人の作家の作品が多く所蔵・寄託されています。

今展では、それらの中から選りすぐりの名品を紹介。

 

 

 

さらに、3人の愛用品や関連資料も併せて紹介されています。

 

 

 

もし、3人の画家のことを良く知らずとも、ご安心を。

展覧会の冒頭に、作家でイラストレーターの杉全美帆子さんによるパネルが用意されています。

これを見れば、3人のキャラクターがスッと頭に入ること間違いなしです。

 

 

 

さて、展覧会でまず紹介されていたのは、

3人の中で年長の井上長三郎の作品群です。

セザンヌに大きな影響を受けていた初期の作品もあれば、

(おそらく)居眠りをする議員を描いた社会風刺的な作品も。

 

 

 

今回出展されていた井上長三郎の作品の中で、

個人的に一番印象に残っているのが、1973年作の《椅子》です。

 

 

 

完全に、ヨギボー。

完全に、人をダメにするクッション。

1973年の時点で、この椅子の存在を知っていただなんて。

井上長三郎はタイムリーパーなのかもしれません。

 

 

・・・・・と、それはさておきまして。

続いて紹介されていたのが、寺田政明。

『天空の城ラピュタ』のムスカの声でもお馴染みの俳優・寺田農さんのお父さんです。

 

 

 

日本を代表するシュルレアリストだけあって、

その作風は、まさにシュルレアリスムそのもの。

 

imageimage

 

 

全体的には不穏な気配を漂わせつつも、

どことなく可笑しみやペーソスがあるような。

本場フランスのシュルレアリストの作品とはまた違う、

ジャパニーズシュルレアリスムともいうべき、独特の世界観を確立しています。

数ある寺田作品のうち、もっとも惹かれたのが、《化石鳥魚》

 

 

 

化石鳥魚は、寺田が考えた架空の生き物とのこと。

鳥なのか。魚なのか。

そもそも化石なのか何なのか。

まったくもって謎の生命体ですが、

とにもかくにも眼力がスゴかったです。

周りにどう思われようと、自分を貫き通す。

そんな信念のようなものが感じられました。

 

ちなみに。

会場では、寺田が毎日のように描いていたという、

膨大な数のドローイングのうちの一部も紹介されていました。

 

 

 

実はこれらはすべて、チラシの裏に描かれたもの。

例えば、こちらのドローイングの透けて見える裏側には・・・・・

 

 

 

常盤台のクリーニング屋のセールの情報がありました。

寺田が板橋区に住んでいた何よりもの証拠ですね。

 

 

さてさて、最後に紹介されていたのは、

日本のダリとも称された古沢岩美の作品群です。

 

 

 

死とエロスをテーマとしたそのインパクト抜群の作風は、

アクが強いため、好き嫌いはハッキリわかれると思います。

そんな古沢について是非知って頂きたいのが、

まだ日本に西洋美術の情報があまり無かった時代、

1942年から翌年にかけて、ゴヤやベラスケスの評伝を自費出版したというエピソード。

 

 

 

みんなに海外の作家を知ってもらいたい。

そんな純粋な理由から、挿絵コンクールで得た賞金を充て、出版したのだそうです。

 

作品のことは嫌いでも、

古沢岩美のことは嫌いにならないでください!

 

 

ちなみに。

今展はコレクション展ということで、

入館料は、なんと無料となっています。

よっ、太っ腹!

星星

 

が、そんな板橋区立美術館の過去の闇を、

展覧会場で、暴露系アートテラーの僕が発見してしまいました。

こちらは開館当時1979年に開催された寺田政明展の案内ハガキ。

 

 

 

その交通案内のところにご注目。

都営地下鉄三田線西高島平駅より徒歩10分と、

東武東上線下赤塚駅より徒歩20分となっています。

が、しかし!

今現在の公式HPでの案内では、

 

 都営三田線「西高島平駅」下車 徒歩約14分
 東武東上線「下赤塚駅」、東京メトロ「地下鉄赤塚駅」下車徒歩約24分

 

となっています。

4分もサバを読んでいたのですね。





1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ  にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles